「3年で卒業できなかったらどうしよう」——通信制高校を検討している方から、この不安をよく聞きます。
先に結論を書きます。通信制高校は、4年かけて卒業してもかまいません。 そして私自身、あえて4年制を選んで卒業しました。
20年経ったいま振り返っても、あの判断が一番効いたと思っています。
ただ、いいことばかりではありませんでした。20年経って「これは確かにデメリットだった」と言えることが、ひとつだけあります。それも含めて書きます。
なぜ「3年で卒業」が当たり前だと思ってしまうのか
まず、思い込みの正体から整理します。
全日制高校は、学年制です。 1年生の課程を修了したら2年生に上がる。決められた年数で、決められた課程を進む。だから「3年で卒業」が当たり前になります。修得できなければ留年、という発想もここから来ます。
通信制高校の単位制とは、学年ごとに進級するのではなく、必要な単位を積み上げて卒業する仕組みです。 何年生かではなく、何単位取れたかで進み具合が決まります。
高校卒業に必要なのは、在籍3年以上、必履修科目の履修、74単位以上の修得、特別活動の必要時間数——といった要件を満たすことです。「3年以上」であって、「3年ちょうど」ではありません。
つまり3年は最短であって、標準でも上限でもないということです。ここを知らないまま「3年で出られなかったら失敗」と思い込んでいる方が、本当に多いと感じます。
通信制の仕組みそのものは通信制高校とは?で解説しています。
私が4年制を選んだ理由
ここからは私の話です。
つまり、入学の時点で決めていたわけではありません。在学の途中で、自分に無理のないほうへ組み直したという話です。「頑張れなかったから延びてしまった」のとも、少し違います。
4年にして良かったこと
1年の余白があることで、「落としても取り返せる」「休んでも間に合う」「学校の外のことができる」の3つが手に入りました。 順に書きます。
1. 単位を落としても、取り返せた
いちばん実際的な効果はこれでした。
取りこぼしが「積み残し」で済んで、「振り出し」にならない。 この差は、経験してみるとかなり大きいものでした。
単位を落としたときに実際どうなるかは通信制高校に留年はある?に詳しく書きました。
2. サボっても、どうにかなった
ここは誤解されたくないので補足します。サボることを推奨しているのではありません。 そうではなく、サボってしまう自分を前提に設計しておくという話です。
意志の力で何とかしようとして折れるより、折れない設計にしておくほうが結果的に続きます。 私はそう思っています。
3. 生活に、他のことを入れられた
なお、在籍が4年になると在学中に19歳を迎えることがあり、扶養や税の区分もそこで変わります。働くときのきまりとお金の境目は通信制高校でバイトはできる?にまとめました。
学業を3年に圧縮していたら、この時間はありませんでした。1年の余白が、学校の外の経験に変わったという感覚です。
正直に書きます。デメリットもありました
ここからが、この記事でいちばん書きたかった部分です。
メリットだけ並べる記事は信用できないので、私が実際に受けた不都合を書きます。
これは実害でした。ごまかす話でもないので、そのまま書いておきます。
ただ——正直に言うと、20年かけて出てくる不都合がこれだけ、というのも事実です。
年齢を聞かれることを「聞かれたくない」と感じるかどうかは、人によります。私はそこまで気にならないタイプでしたが、気になる方にとっては小さくない話かもしれません。判断材料として書いておきます。
4年目の教室は、気まずくないのか
ここは、あまり誰も書いていないけれど多くの人が本当に気にしているところだと思うので、独立させて書きます。
「1年遅れて残っていると、浮くのではないか」「年下ばかりの中で気まずいのではないか」——この不安です。
結論から言うと、私はほとんど気になりませんでした。 理由は、通信制の生徒層そのものにあります。
つまり、そもそも「同学年で揃っている集団」ではないんです。
全日制なら、1年ずれることは目立ちます。周りが全員同い年だからです。でも通信制では、年齢がバラバラであることが前提になっています。だから「1歳上」くらいでは、誰も気に留めません。
もうひとつ、教室の構造も効いていました。
「4年目だけ浮いてしまうのでは」という心配は、全日制の教室をイメージしているから生まれるものだと思います。通信制の教室は、その前提から違います。
気まずさを理由に4年制を避けるのは、もったいないというのが私の実感です。
費用の面では、注意点があります
もうひとつ、実務的な注意点を書いておきます。ここはお金の資格を持つ側として、はっきり伝えたい部分です。
4年制は最初から選べるのか、途中からでも変えられるのか
実務的な質問として、これもよく出てきます。「4年で卒業したいと最初から言えるのか」「途中で延ばすことはできるのか」という点です。
ここは学校によって扱いが違うので、一般論として断定はできません。 ただ、考え方の型は共通しています。
私の場合は、2番のほうでした。 入学のときに4年と決めていたのではなく、2年生になってから4年へ切り替えています。 1年目に単位を何個か落としたあとの判断です。
ここは、はっきり書いておきます。途中から決めても間に合う形がある、ということです。「1年目でつまずいたから、もう手遅れかもしれない」と感じている方に、そうとは限らないと伝えたくて書いています。
この2つの不安は、的外れではありませんでした。前に書いたとおり、卒業の年がずれている理由を聞かれる場面は、その後よくあったからです。それでも、切り替えたこと自体を後悔したことは一度もありません。
そのうえで、ひとつだけ言い方を変えておきたいことがあります。私は「入学前に4年と決めてしまったほうがいい」とは言いません。自分がそうしていないからです。1年やってみないと、自分のペースは分かりませんでした。
代わりにおすすめしたいのは、決めるのは後でいいので、「途中から在籍年数を延ばせるか」だけを入学前に確認しておくことです。上の4つでいえば、2番(途中でペースを落とせるか)と3番(在籍年数の上限)がそこにあたります。確認だけ先に済ませておけば、あとから選べます。
「3年で卒業できそうにない」と気づいたとき
いま在学中で、間に合わなそうだと感じている方へ。
慌てて退学を判断する必要はありません。
通信制は単位制なので、取れた単位は消えません。積み上げてきたものはそのまま残ります。全日制のように「留年か退学か」の二択にはならないのです。
いま在籍しているのが全日制で、そこから通信制へ移ることを考えている場合は、また別の論点が出てきます。それまでの単位がどこまで認められるか、在籍期間がどう通算されるか、といった部分です。決める前に確認しておきたいことは通信制高校への転入で後悔しないためにに書きました。
大事なのは、「辞めるかどうか」を決める前に、「続け方を変えられないか」を確認することです。
3つめの「コースを変更する」については、登校の回数をどこまで減らせるのかに法令の決まりが関わってきます。その仕組みと、登校を最小にする現実的な方法は通信制高校に「スクーリングなし」はある?に整理しました。
具体的にどんな選択肢があるかは学校によって違うので、まずは学校の窓口に相談してみてください。
4年制が向いている人・3年で問題ない人
判断できる形に整理します。
| 4年を視野に入れたほうがいい | 3年で問題なさそう | |
|---|---|---|
| 学習の進め方 | 一人だと溜めてしまう自覚がある | 自分で計画を立てて進められる |
| 体調・生活 | 波がある。崩れる時期がありそう | 安定している |
| 学校の外 | バイト・創作など入れたいものがある | 学業に集中したい |
| 気持ちの面 | 「間に合わない」という圧力に弱い | 締め切りがあったほうが進む |
| 年齢のズレ | 気にならない | 同学年と揃えたい |
最後の行が、実質的な分かれ目だと思っています。年齢がずれることを気にしないなら、4年制のデメリットはほぼ消えます。
まとめ
通信制高校を4年かけて卒業することは、失敗ではありません。 私にとっては、卒業までたどり着くための設計そのものでした。
- 通信制は単位制なので、3年で卒業しなければならない決まりはありません。3年は最短であって標準ではありません
- 卒業資格は全日制とまったく同じです。何年かけても変わりません
- 私は4年かけて卒業しました。単位を落としても取り返せたことが、続けられた最大の理由です
- 4年にすると決めたのは2年生のときです。入学時に決めていなくても、途中から切り替えられる場合があります(ただし単位制の学校の話です)
- 1年の余白は、アルバイトなど学校の外の経験に変わりました
- 唯一の実害は、同学年と卒業する年がずれること。 これは正直にデメリットです
- ただし20年かけて出てくる不都合がそれだけ、というのも事実です
- 費用面では在籍が長期化すると支援の扱いが変わる場合があるので、事前に確認してください
「3年で出られなければ失敗」という前提を外すだけで、選べる道はかなり広がります。その前提は、通信制には最初から存在しません。
在籍年数の扱いや費用は学校によって違うので、気になる学校があれば資料を取り寄せて確認してみてください。実際に資料を請求すると何が届くのかはN高に資料請求してみたにまとめました。
学校選びのチェックポイントは通信制高校の選び方に、単位を落としたときの扱いは通信制高校に留年はある?に書いています。
