「通信制高校に通いながらアルバイトはできるのか」。この検索をしているのは、働きたい生徒本人と、「うちの子が働きすぎないか」を心配している親御さんの、だいたい両方です。

通信制高校のバイトは、私にとって両側から見えるテーマです。在学中はバイトに明け暮れていた側で、いまは高校生を採用する側にいます。そのうえで、お金の境目についてはファイナンシャル・プランニング技能士2級として数字を確かめました。

ただ、この記事で書くのは体験談ではなく制度の話です。何歳から働けるのか、1日何時間まで働けるのか、何時までなら働いていいのか、そしていくら稼ぐと税金や扶養にどう響くのか。ここは調べれば答えが出るのに、意外なほどまとまっていません。法令と国税庁・文部科学省の情報で確認して整理しました。労働に関する法令は2026年9月3日、税制は令和8年度税制改正の内容を2026年9月7日に確認しています。

通信制高校の生徒はアルバイトをしてもいいのですか?

法令に、高校生のアルバイトを禁じる規定はありません。できるかどうかは、労働基準法の年齢のルールと、その学校の校則の2つで決まります。

まず言葉を整理します。年少者とは、労働基準法で満18歳に満たない人を指す呼び方です。 高校生の多くはここに入ります。そして年少者向けの規定は、罰を与えるための決まりではなく、まだ成長の途中にある人を守るために置かれているものです。この記事もその前提で読んでください。

労働基準法は、年齢で3つの層に分けています。

呼び方年齢の範囲主なルール
児童満15歳に達した日以後の最初の3月31日まで原則として働かせてはいけない(第56条第1項)
年少者満18歳未満深夜業の禁止・残業の原則禁止・危険有害業務の制限など
未成年者満18歳未満(民法第4条)親が代わりに労働契約を結べない、賃金は本人が受け取る

(e-Gov法令検索「労働基準法」および厚生労働省 兵庫労働局「年少者・女性の労働条件」。2026年9月3日確認)

面白いのは、親が子の代わりにバイトの契約を結ぶことはできないという点です。労働基準法第58条第1項は「親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない」と定めています。さらに第59条は「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない」としています。

つまり法律は、契約するのも給料を受け取るのも本人だと決めています。そのうえで、契約が本人に不利だと認めるときは、親権者は将来に向かってそれを解除できる(第58条第2項)。子の自立を認めつつ、危なくなったら親が止められる、という設計になっています。

何歳から働けますか?──「満15歳に達した日以後の最初の3月31日」が境目です

中学を卒業する年度の3月31日が終わるまでは、原則として働けません。逆に言えば、4月1日からは働けます。

労働基準法第56条第1項の条文はこうです。

使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。

(e-Gov法令検索「労働基準法」2026年9月3日確認)

「満15歳になったら働ける」ではなく、「満15歳になった後、最初にやってくる3月31日が終わったら」です。この差は、中学3年生とその親にとって実務的な意味を持ちます。

たとえば4月生まれの子は中学3年生の4月に15歳になりますが、それでもその年度中は働けません。働けるようになるのは、卒業した年の4月1日からです。3月生まれの子も同じで、15歳になった直後の3月31日が終われば働けます。誕生日ではなく年度末が基準、と覚えるのが早いです。

通信制高校に入学する子でよくあるのが、「入学前の春休みからバイトを始めたい」というケースです。中学卒業後の4月1日以降であれば、法律上は問題ありません。ただし入学式やオリエンテーションの日程と重なることがあるので、シフトを入れる前に学校の日程を確認しておくと安全です。

なお、行政官庁の許可を受けて、13歳以上の児童に軽易な仕事を修学時間外にさせられる例外もあります(第56条第2項)。ただしこれは新聞配達などを想定した仕組みで、一般的なアルバイトの話ではありません。

1日に何時間まで働けますか?

1日8時間・週40時間が上限です。そして18歳未満は、この上限を超えるための仕組みそのものが使えません

労働基準法第32条は、休憩時間を除いて1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないと定めています。ここまでは大人も同じです。違うのはこの先です。

同法第60条第1項は、変形労働時間制(第32条の2から第32条の5まで)と、36協定による時間外・休日労働(第36条)などを、満18歳未満には適用しないと定めています(このほか第40条・第41条の2も適用除外です)。

大人のアルバイトなら、職場が36協定を結んでいれば「今日は忙しいから10時間」ができます。18歳未満にはそれができません。残業を可能にする条文が、はじめから届かないところにあるからです。これは親御さんにとって、かなり実務的な安心材料だと思います。

18歳未満18歳以上
1日の上限8時間8時間(36協定があれば延長可)
1週間の上限40時間40時間(同上)
36協定による残業できないできる
変形労働時間制原則できない(下記の例外あり)できる
深夜(22時〜5時)の勤務原則できないできる

(労働基準法第32条・第36条・第60条・第61条より作成。2026年9月3日確認)

例外として、第60条第3項には満15歳以上18歳未満向けの緩和(1週40時間を超えない範囲で、ある1日を4時間以内に短縮する代わりに別の日を10時間まで延ばす形など)が置かれています。とはいえ、高校生のアルバイトでこの仕組みが使われることはあまり多くありません。基本は「1日8時間まで」と理解しておけば足ります。

休憩と休日も確認しておきます。労働基準法第34条第1項は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならないと定めています。第35条第1項は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとしています。8時間ぴったりなら45分、8時間を1分でも超えたら1時間、という区切りです。

夜は何時まで働けますか?──18歳未満は原則22時までです

午後10時から午前5時までは働けません。これは学校の種類ではなく年齢で決まります。

労働基準法第61条第1項の条文はこうです。

使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。

(e-Gov法令検索「労働基準法」2026年9月3日確認)

親御さんが「うちの子が夜遅くまで働かされていないか」を心配したとき、その心配に根拠を与えてくれるのがこの条文です。18歳未満である限り、22時以降のシフトを組むこと自体が認められていません。もし22時を過ぎるシフトを提示されたら、それは制度の側がおかしいと言える状況です。

条文には例外も書かれているので、正確に押さえておきます。

  • 交替制で使用する満16歳以上の男性は、第1項ただし書きにより深夜業の禁止から除かれます
  • 交替制で労働させる事業は、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで働かせる、または午前5時30分から働かせることができます(第61条第3項)
  • 第56条第2項で働く児童(中学生など)については、時刻が午後8時から午前5時までとさらに厳しくなります(同条第5項)

つまり交替制のある職場では扱いが変わる場合がありますが、一般的な飲食店や小売店のアルバイトでは、18歳未満は22時までと考えておけば大きく外れません。

そして18歳の誕生日を迎えると、この規定の対象から外れます。高校3年生の途中で「深夜も入れるようになる」子が出てくるのはそのためです。同じ学年でも、生まれ月によって働ける時間帯が違うという状態が生まれます。

通信制高校と全日制で、働き方のルールは違いますか?

違うのは働ける「時間帯」だけで、働ける「量」も「夜のルール」も同じです。 ここは最も誤解されている部分です。

私は労働基準法・労働基準法施行規則・年少者労働基準規則の全文をe-Gov法令検索で取得して確認しました(いずれも現行有効版、2026年9月3日確認)。「定時制」「通信制」という語は、3つの法令のどこにも出てきませんでした。 課程の種類によって年少者の扱いを変える規定は、置かれていないということです。

全日制通信制
平日の昼間授業があるため働きにくい働ける(登校日以外)
1日の上限8時間8時間(同じ)
週の上限40時間40時間(同じ)
深夜業(22時〜5時)18歳未満は原則禁止18歳未満は原則禁止(同じ)
学校にいた時間の通算なしなし(同じ)

通信制の子が労働市場で持っている強みは、平日の昼間に働けること、この1点に尽きます。飲食や小売の現場がいちばん人手を欲しがるのは平日の日中で、その時間帯は全日制の生徒も学生も入れません。ここに入れることは、それだけで戦力になります。

一方で、「通信制だから夜遅くまで働ける」は誤りです。 深夜業の禁止は年齢のルールなので、学校に通っているかどうか、その学校が何課程かは関係ありません。

登校日が月に3回であれば、残りの平日はまるごと空きます。その時間をどう使うかを決めるのは、学校ではなく本人と家庭です。

通信制高校そのものの仕組み(登校日数がなぜ少ないのか、単位はどう取るのか)については通信制高校とは?仕組みと全日制との違いにまとめています。

そして雇う側から見た通信制の子の実際──採用の場面で何を見ているか、面接でどう伝えればいいか、うちの店で働くN高生4人がどんなシフトの入り方をしているかは、N高生4人と働いてわかったことのほうに書きました。この記事は制度、あちらは現場、と役割を分けています。

学校の許可や届出は必要ですか?

法令にアルバイトの許可を義務づける規定はありません。 許可制や届出制は、それぞれの学校が校則として定めているものです。

N高グループは、公式サイトのよくある質問で次のように回答しています。

法で定められた範囲内において、アルバイトや各種免許証の取得が可能です。また、頭髪や装飾など身なりに関する校則もありません。ただし、周囲の方に迷惑がかかるなどと判断すれば、指導する場合があります。

(N高等学校・S高等学校・R高等学校「よくある質問」2026年9月3日確認)

つまり事前の許可制ではなく、法律の範囲であれば自由という立て付けです(学校が必要と判断したときの指導は残ります)。一方で、全日制の高校では担任との面談・アルバイト許可願の提出・雇い主からの承諾書といった手続きを求める学校が今もあります。通信制でも学校によって考え方は違うので、志望校の生徒心得や募集要項を確かめておくのが確実です。

雇われる側の手続きとしては、ひとつ法律上の義務があります。労働基準法第57条第1項は、使用者は満18歳未満の人について年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならないと定めています。バイト先から年齢のわかる書類を求められるのは、店側が疑っているからではなく、この規定があるためです。

そしてもうひとつ、通信制ならではの現実的な確認点があります。働きながら通えるかどうかは、その学校のスクーリングの頻度と時間帯でほぼ決まります。

  • 年間の登校日数は何日か
  • 平日開催か、土日開催か
  • 宿泊を伴う集中スクーリングはあるか。あるなら何泊か
  • 単位認定試験はいつ、どこで行われるか

この4つがわかれば、シフトをどう組めばいいかは自分で計算できます。スクーリングの制度上の決まりはスクーリングなしの通信制高校はある?に、N高グループの実際の日数はN高のスクーリングは年何日?にまとめました。

登校日数や試験の日程は学校ごとに違い、公式サイトだけでは細部までわからないことも多いです。私も資料を取り寄せて中身を確かめましたが、日程や会場の情報は紙の資料のほうが具体的でした。請求から到着までの流れと同梱物の記録を残してあるので、比較の材料にしてください。

いくら稼ぐと税金がかかりますか?(令和8年分以後の取扱い)

ここから先の3つの章は、お金の話です。 長く言われてきた「103万円の壁」は、令和7年度の税制改正で「160万円・123万円」に動き、令和8年度の税制改正でさらに「178万円・136万円」に動きました。2年続けて変わっているので、少し前に書かれた解説はもう当てになりません。働く本人は、「本人の所得税は178万円から、親の扶養は136万円から」の2つの数字(令和8年分・令和9年分)を持ち帰ってもらえれば十分です。その根拠と、家計に実際いくら響くのかは、主に保護者の方に向けて書いていきます。

先に全体像を表にします。給与収入だけがある高校生を前提にしています。

年間の給与収入起きること
およそ119万円を超える18歳以上なら本人に住民税の所得割がかかり始める
136万円を超える親の扶養控除がなくなる(所得税38万円・住民税33万円)
178万円を超える本人に所得税がかかる
およそ209万円を超える18歳未満でも本人に住民税がかかる

(令和8年分の所得=令和9年度分の住民税を前提に、国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」および地方税法をもとに作成。2026年9月7日確認)

順番に根拠を見ていきます。

本人に所得税がかかるのは178万円から(令和8年分・令和9年分)

令和8年度税制改正で、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。令和8年と令和9年は、給与収入220万円以下なら一律74万円が控除されます(租税特別措置法第29条の4第1項、e-Gov法令検索で2026年9月7日確認)。

そして基礎控除は、所得税法本体の額が58万円から62万円になり(所得税法第86条第1項第1号)、そこに合計所得金額に応じた上乗せがつきます。上乗せを定めているのは租税特別措置法第41条の16の2第1項で、令和8年分と令和9年分は、合計所得金額489万円以下なら42万円の上乗せ。つまり基礎控除は104万円になります(改正前は95万円)。

上乗せの額は年分で変わります。令和8年分・令和9年分は、合計所得金額489万円以下が42万円(基礎控除104万円)、489万円超655万円以下が5万円(同67万円)。令和10年分以後は対象が合計所得金額132万円以下にしぼられ、上乗せは37万円(基礎控除99万円)になります。高校生本人の収入はどちらの年分でもいちばん下の区分に入るので、令和10年分以後も上乗せ自体は残ります。

計算するとこうなります。

  1. 給与収入178万円

    ここがスタート地点

  2. 給与所得控除 74万円を引く

    残り104万円(これが合計所得金額)

  3. 基礎控除 104万円を引く

    残り0円

  4. 課税所得0円

    所得税はかからない

つまり令和8年分と令和9年分は、年178万円までなら本人に所得税はかかりません(給与以外の所得がない場合)。かつて言われた103万円は、給与所得控除55万円+基礎控除48万円の合計でした。どちらも2度にわたって引き上げられた結果、この数字は現在の制度をまったく表していません。

令和10年分以後は、この境目が下がります。 給与所得控除の最低保障額が「収入金額×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円)」(所得税法第28条第3項第1号)、基礎控除が99万円になるため、同じ計算をすると69万円+99万円=168万円です。ただし令和10年分以後の基礎控除額と給与所得控除の最低保障額は、2年ごとに全国消費者物価指数の変化率をもとに見直すことが基本とされているので、そのときに改めて確認してください。

ひとつ知っておくと混乱しにくいことがあります。この改正の施行日は令和8年12月1日で、適用されるのは令和8年分以後の所得税です。毎月の給与から天引きされる源泉徴収の金額は令和8年11月分まで変わらず、令和8年12月の年末調整で1年分をまとめて新しい基準で計算し直します。年の途中で「引かれる額が変わらない」と感じても、年間で見れば新しい数字で精算されます。

なお勤労学生控除(27万円・所得税法第82条)は、令和8年分から合計所得金額89万円以下(給与収入163万円以下)が要件になりました。しかし給与収入163万円なら基礎控除104万円のほうが先に効いて課税所得が0になるため、所得税の計算では出番がなくなりました。一方、住民税には別枠で勤労学生控除26万円があり(地方税法第314条の2第1項第9号)、こちらは意味を持つ場面が残ります。

親の扶養から外れるのは136万円から

扶養親族の要件である合計所得金額は、令和8年分から62万円以下に引き上げられました(改正前は58万円以下。所得税法第2条第1項第34号)。給与所得控除74万円と足すと、給与収入136万円が境目です。この136万円という金額は、国税庁の「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」にも数字として明記されています(2026年9月7日確認)。

月にならすと約11.3万円(113,333円)です。判定はその年の1月から12月の給与収入の合計で行われ、学校の年度の区切りとは関係ありません。毎月のバイト代が11万円を超えるペースが続いているなら、年の途中で一度合計を確かめておくと安全です。

高校生の年齢だと、控除額はこうなります。

区分年齢所得税の控除額住民税の控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上19歳未満38万円33万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円45万円

(所得税法第84条、地方税法第314条の2第1項第11号。いずれもe-Gov法令検索で2026年9月7日確認。控除額そのものは令和8年度税制改正で変わっていません。動いたのは「いくらまでなら扶養に入れるか」の側です)

住民税は「18歳未満かどうか」で大きく変わります

住民税には、所得税にはない独特の規定があります。地方税法第295条第1項第2号(市町村民税)と第24条の5第1項第2号(道府県民税)は、未成年者で前年の合計所得金額が135万円以下の人には住民税を課することができないと定めています。この135万円は、令和8年度税制改正でも変わっていません(e-Gov法令検索の現行有効版で2026年9月7日確認)。

住民税は前年の所得に対してかかるので、令和8年(2026年)に稼いだ分は、令和9年度分の住民税になります。この章で挙げる給与収入の金額は、その令和9年度分を前提にしたものです。

現在の成年年齢は18歳です(民法第4条)。判定は賦課期日、つまりその年度の1月1日時点で行われます(地方税法第318条)。

合計所得135万円を給与収入に直すと、給与所得控除74万円を使っておよそ209万円になります(改正前は約204万円でした)。18歳未満のうちは、この水準までは住民税がかかりません。

18歳になるとこの規定から外れ、一般の基準で判定されます。所得割については、地方税法附則第3条の3が非課税の範囲を定めており、扶養親族のいない単身者の場合は合計所得金額45万円以下です。条文は「35万円×(同一生計配偶者と扶養親族の数+1)+10万円」という書き方をしているので、扶養親族のいない人は35万円+10万円=45万円になります。

この45万円は、令和8年度税制改正でも変わっていません。 e-Gov法令検索で現行有効版と令和9年1月1日施行版の両方を確認しましたが、同じ金額のままでした(2026年9月7日確認)。変わるのは給与収入に直したときの金額のほうです。給与所得控除が74万円になるため、45万円+74万円=119万円が境目になります(改正前は110万円でした)。

なお住民税の側でも、扶養親族の所得要件は58万円以下から62万円以下に引き上げられます(地方税法第292条第1項第9号。令和9年1月1日施行で、令和9年度分以後の個人住民税に適用)。所得税と住民税で扶養の境目がずれる心配はありません。

均等割(定額の部分)の基準は市区町村の条例で決まるため(地方税法第295条第3項)、金額はお住まいの自治体の案内でご確認ください。

親の扶養から外れると、家計はどう変わりますか?

子が136万円を少し超えると、家庭全体では手取りが減ることがあります。 ここは金額で見たほうが早いので、具体的に計算します。

親が16歳以上19歳未満の子を扶養から外した場合、失う控除は所得税38万円・住民税33万円です。住民税の所得割の税率は10%なので、住民税の増加は33万円×10%=33,000円で固定です。所得税は親の税率によって変わります。

親の課税所得所得税率所得税の増加(概算)住民税の増加合計(概算)
195万円超330万円以下10%38,000円33,000円約71,000円
330万円超695万円以下20%76,000円33,000円約109,000円
695万円超900万円以下23%87,400円33,000円約120,400円

(所得税の税率は国税庁タックスアンサーNo.2260による。復興特別所得税などは含めない概算です。2026年9月7日確認)

つまり子が136万円を1万円超えて137万円稼いだ場合、子の手取りは1万円増えますが、親の税負担が7万円から12万円ほど増えることになります。家庭全体で見れば、明らかにマイナスです。

そして高校生の年齢で厳しいのは、この落ち方が段階的ではないことです。19歳以上23歳未満には特定親族特別控除という制度があり、令和8年分からは合計所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)の範囲で控除が段階的に減っていく作りになっています。ところが16歳から18歳には、これに相当する緩和がありません。 136万円を1円超えた時点で、38万円の控除がまるごと消えます。

制度の話に引きつけると、こういうケースでは在学中に19歳を迎えることになります。同じ「高校生」でも、19歳になれば税制上は特定扶養親族の区分に移り、控除額も使える制度も変わる、ということです。

在籍年数の選び方そのものについては通信制高校は4年で卒業してもいいに書きました。

なお、健康保険の被扶養者に入れるかどうかは、税とはまったく別の基準で判断されます。加入している健康保険によって扱いが違うので、税の話と混ぜないで、勤務先とご家庭の健康保険にそれぞれ確認するのが安全です。

バイト代は就学支援金や奨学給付金に影響しますか?

就学支援金には影響しません。奨学給付金には、間接的に影響する場合があります。

高等学校等就学支援金は、2026年度(令和8年度)から所得制限が撤廃されました(文部科学省「高等学校等就学支援金制度」2026年9月3日確認)。世帯の所得を問わず授業料への支援を受けられる仕組みになったため、生徒本人のアルバイト代によって支給が減ったり止まったりすることはありません。制度の中身はN高の学費は無償化でどうなる?に整理しています。

注意が必要なのは、高校生等奨学給付金のほうです。こちらは授業料以外の教育費に充てる返済不要の給付で、生活保護世帯と住民税所得割が非課税の世帯が対象でした。令和8年度からは対象が中所得世帯まで広がり、保護者等の所得割額の合算額に応じて次の4区分になっています(文部科学省「高校生等奨学給付金リーフレット」令和8年度、2026年9月3日確認)。

世帯の区分通信制・国公立通信制・私立
生活保護世帯年額3万2,300円年額5万2,600円
住民税非課税世帯(年収270万円未満の目安)年額5万500円年額5万2,100円
所得割額の合算額100円〜105,500円(年収270〜380万円の目安)年額1万6,830円年額1万7,370円
所得割額の合算額105,500円〜182,500円(年収380〜490万円の目安)年額1万2,630円年額1万3,030円

ここで前の章の話がつながります。子が扶養から外れると、親の住民税の課税所得が33万円増えます。 それまで所得割が非課税だった世帯が、これによって課税世帯に変わる可能性があるということです。

奨学給付金の金額や申請の流れは母子家庭でN高等学校の学費はいくら?で扱っています。

よくある誤解を3つ整理します

検索していると繰り返し見かける勘違いを、根拠つきで正しておきます。

誤解1:通信制だから深夜も働ける

働けません。深夜業の禁止は労働基準法第61条第1項に基づく年齢のルールで、通っている学校の課程とは無関係です。18歳未満である限り、通信制でも全日制でも22時以降のシフトは組めません。

誤解2:学校がない日なら8時間を超えて働ける

超えられません。1日8時間は「授業がある日の上限」ではなく、毎日の上限です。しかも18歳未満は36協定の対象外なので、職場が協定を結んでいても延長できません。

誤解3:103万円を超えなければ大丈夫

その数字はもう現行の制度を表していません。しかも2年続けて動いています。令和7年度の改正で「160万円・123万円」になり、令和8年度の改正でさらに「178万円・136万円」になりました。給与所得控除の最低保障額が74万円に、合計所得金額489万円以下の基礎控除が104万円になった結果です(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用。国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」、2026年9月7日確認)。

同じ理由で、「160万円の壁」と書かれた情報も、いまは1年前の数字です。金額が書いてある解説を見かけたら、それがどの年分の制度を説明しているかを先に見てください。この分野は数字だけが独り歩きしやすいところです。

卒業生として、制度の外側で思うこと

制度の説明はここまでです。最後に、書き手としての立場をひとつだけ。

私は通信制高校に通いながら働いていた側で、いまは通信制の子を雇う側です。だから「バイトはするな」とは言えません。そのかわり、働き始める前に「月にいくらまで」「週に何日まで」を親子で決めておくことをおすすめします。目安が欲しければ、扶養の境目の年136万円を12で割った月11.3万円(113,333円)がひとつの線です。シフトを増やすのは簡単で、減らすのは気まずい。これは雇う側からも言えることです。

学校の予定をバイト先に先に伝えておくことも効きます。スクーリングと単位認定試験の日程を早めに共有してくれる子は、店の側からすると自己管理ができる人に見えます。学業を守るための行動が、そのまま職場での評価につながる、という珍しく得な場面です。

まとめ

通信制高校のバイトについて、法令と公的機関の情報で確認したことを整理します。

  • 法令に高校生のアルバイトを禁じる規定はありません。決まるのは年齢のルールと学校の校則です
  • 働けるのは満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終わってから。誕生日ではなく年度末が基準です
  • 上限は1日8時間・週40時間。18歳未満は36協定が使えないため、原則として残業ができません
  • 午後10時から午前5時までは働けません(18歳未満)。これは年齢のルールで、通信制でも全日制でも同じです
  • 労働基準法に定時制・通信制の課程を特別扱いする規定はありません。全文を確認した結果です
  • 税と扶養の境目は、令和8年分以後の所得税で178万円(本人の所得税)・136万円(親の扶養控除)。103万円も、1年前の160万円・123万円も、現在の制度を表していません
  • 学業の時間は労働時間に通算されないため、歯止めは家庭と本人が作ることになります

そして、この記事はあくまで制度の話です。実際に働き始めてからどうなるのか、面接で「通信制です」とどう伝えればいいのか、雇う側は何を見ているのかは、N高生4人と働いてわかったことのほうに書きました。制度を知ってから現場の話を読むと、判断の材料としてつながると思います。