N高生のバイトについて検索すると、校則や労働時間のルールを説明する記事はたくさん出てきます。でも、実際に雇っている側が書いた記事は、ほとんど見つかりません。

私は店を経営していて、いま現役のN高生4人がアルバイトとして働いてくれています。そして私自身も通信制高校の出身で、在学中はバイトに明け暮れていました。

働く側と雇う側、両方をやった人間として、通信制とアルバイトの実際を書きます。

なぜ通信制の子を雇うのか

きれいごと抜きの、経営側の事情から書きます。

飲食や小売の現場がいちばん人を欲しいのは、平日の日中です。学生は授業中、主婦の方は家事で忙しく、フリーターは他の仕事と取り合いになる。この時間帯を埋められる人材は、それだけで貴重です。

通信制の生徒は、まさにこの時間帯に働けます。

つまり雇用主の目線では、通信制の生徒を採る理由は同情でも社会貢献でもなく、普通に合理的な採用判断です。ここは誤解されている部分だと思います。

シフトを組む側の実務としても、通信制の子はありがたい存在です。全日制の高校生は「平日は17時以降、テスト期間は全滅」とパターンが固定されがちですが、通信制の子は課題の進み具合に合わせて自分で波を作ってくれる。忙しい月は控えめに、余裕のある月は厚めに。この柔軟さは、シフト表とにらめっこする側からすると本当に助かります。

面接で話せなかった子が、管理職になるまで

うちの店には、N高生4人のほかに、もう一人の「元・通信制の高校生」がいます。いまは店舗の管理職を務めている子です。

この子の話が、この記事でいちばん伝えたいことです。

面接:正直、普通なら不採用でした

最初の1年:フォローの連続でした

美談にするつもりはないので、大変だった時期のことも書きます。

1年後:エース格になりました

面接で受け答えができなかった高校生が、数年で店を任せる側になった。 私はこの成長を、特別な例だとは思っていません。合う環境に置かれれば花開く子は、いくらでもいます。合う環境が、たまたま見つかりにくいだけです。

この経験は、私の採用の考え方そのものを変えました。面接の受け答えは、その日のコンディションと場慣れを測っているだけで、その子の伸びしろを測ってはいない。 いまのうちの採用基準が「話し上手かどうか」をほとんど見ないのは、この子のおかげです。もしあの日、面接の印象だけで判断していたら、いちばんの右腕を採り逃していたわけですから。

「家みたいにしてくれてた」

この子について、もうひとつだけ。

その後、親御さんから「妹も働かせてほしい」と言われて、妹さんにも働いてもらっていた時期があります。兄妹そろって預けてもらえたのは、うちの店の環境を家庭ぐるみで信頼してもらえた証だと受け取っています。親御さんから直接感謝の言葉をいただいたときは、経営者としてではなく、一人の大人としてこの仕事をしていてよかったと思いました。

そして、いちばんのやりがいは——巣立った子が、就職後にふらっと顔を出してくれたり、連絡をくれたりするときです。これは雇用主というより、ほとんど親の気持ちに近いかもしれません。

私自身も、バイトに育てられました

雇う側の話ばかりしましたが、私自身が通信制の学生だったころの話もしておきます。私はバイトに育てられた側です。

だからうちで働くN高生たちを見ていると、当時の自分を思い出します。彼らにとってもこの店が、給料をもらう場所である以上の何かになっていたら嬉しいと思っています。

いまの4人の働きぶり

管理職の子の話が過去の成功例なら、いまの4人は現在進行形です。個人が特定されない範囲で、様子を書きます。

面接で「通信制です」とどう伝えるか

これから応募する子(と親御さん)向けに、面接する側の本音を書いておきます。

結論:隠す必要はまったくありません。堂々と言ってください。

面接官が全員、通信制に理解があるとは限りません。それでも少なくとも、平日昼間に働ける事実はどの店にとっても魅力です。弱みだと思っているものが、労働市場では強みになる。ここは自信を持っていいところです。

親御さんへ:バイトに反対すべきか迷ったら

お子さんが「バイトをしたい」と言い出したとき、学業がおろそかにならないか心配になる親御さんは多いと思います。

私の答えは、時期さえ間違えなければ、むしろ勧めたいです。

ただし順番だけは大事です。前述のとおり、私は1年生の間はバイトをせず、学校に慣れることを優先しました。両方いっぺんに始めない——これだけ守れば、バイトは通信制の生活を壊すものではなく、支えるものになり得ます。

始める時期と両立のコツ

自分の経験と、雇ってきた子たちを見てきた経験から、実用的な話をまとめます。

いつから始めるか

私が1年生でバイトを我慢したのは、正解だったと思っています。学校とバイトを同時に始めると、どちらかが崩れたときに両方崩れやすい。土台をひとつずつ作るほうが安全です。

とくに不登校からの入学など、生活リズムの立て直しから始める場合はなおさらです。まず「学校のある生活」を数か月続けて、それが当たり前になってから次を足す。急がば回れ、が私の実感です。

お金の話も、少しだけ(FPとして)

私はファイナンシャルプランナー(FP2級)の資格も持っているので、働く高校生のお金についてもひとつだけ。

バイト代がある水準を超えると、税金や親御さんの扶養に影響が出ることがあります。 いわゆる「年収の壁」です。この基準額は近年の税制改正で変わっており、金額をここに書くとかえって古い情報になりかねないので、働き始める前に国税庁のサイトなどで最新の数字を確認してください

雇う側が見ているところ

面接を受ける立場の子(と親御さん)向けに、採用側の本音も書いておきます。

上手に話せるかどうかは、それほど見ていません。 前述のとおり、うちの管理職は面接で話せなかった子です。それより見ているのは、時間を守れそうか、続けられそうか、素直に聞けそうか。この3つは、話し上手かどうかとは関係ありません。

雇う側として、最後にひとつ

この記事を書きながら気づいたことがあります。

私は高校時代、バイト先の大人たちに社会との接点をもらいました。そしていま、自分の店が通信制の子たちの接点になっている。あのとき受け取ったものを、立場を変えて返しているだけなのかもしれません。

だからもし、この記事を読んでいる方が人を雇う立場なら——通信制の子の応募を、書類の学校欄だけで判断しないでほしいと思います。面接でうまく話せないかもしれません。輪に入るのに時間がかかるかもしれません。それでも、1年後にいちばん頼りになるのはその子かもしれない。少なくとも私の店では、そうでした。

まとめ

N高生4人と働き、通信制出身のスタッフを管理職まで見送った雇用主として、まとめます。

  • 通信制の子の採用は合理的な経営判断です。平日日中に働ける人材は貴重で、同情枠ではありません
  • 面接で話せなかった子が、1年でエース格になり、いまは管理職。人は合う環境で伸びます
  • 接し方の順番は「まず自信、厳しさはその後」。理由は聞かず、気は配る
  • 私自身、バイトが社会に出る練習の場でした。学校で学べないことがそこにありました
  • 始めるのは学校に慣れてから。土台はひとつずつ

通信制での学校生活そのものについては在校生4人に聞いた評判に、卒業後の就職については通信制高校から就職はできる?に書いています。私自身の通信制時代の話はこちらの体験記にまとめています。