お子さんが学校に行けなくなったとき、不登校の子の高校進学で親ができることは何なのか。答えのない問いだと思います。
私は中学1年の途中から学校に行けなくなり、2年生で登校できたのは最初の1日だけでした。そして親のすすめで通信制高校に進み、卒業して社会に出て、いまは二児の親です。
この記事は、「すすめられた側」の視点から書いています。親御さん向けの記事の多くは専門家や学校が書いたものですが、当時子どもだった側が何をどう感じていたかを書いたものは、あまり見かけません。
私の一例にすぎませんが、判断の材料になればと思います。
結論:私の親がしてくれたのは「選択肢を並べる」ことでした
先に結論を書きます。
私の親がしてくれたことで、いちばん助かったのは通信制高校という選択肢の存在を教えてくれたことです。それも、説得ではなく、資料という形で。
当時の私の中には、相反する2つの気持ちがありました
親御さんに知っておいていただきたいことがあります。
学校に行けていない子が、「学校に行きたくない」とだけ思っているとは限らない、ということです。
「行くか、行かないか」の二択で考えているうちは、私はどちらも選べませんでした。行くのは怖い。でもまったく行かないのも不安。
もしお子さんが進路の話に反応しないとしても、内心では「行きたい気持ち」も持っている可能性があります。二択ではない道があると知ることが、動き出すきっかけになることがあります。
私が全日制を選べなかった、本当の理由
学力の問題もありました。授業を休み続けていたので、基礎が追いついていなかったのは事実です。
ただ、それ以上に大きかったのは別のことでした。
もしお子さんが進学に消極的なとき、理由は学力ではなく人間関係のリセットができないことかもしれません。学校選びの話をするとき、この視点を持っておくと、話がかみ合いやすくなることがあります。
親御さんにできること、5つ
私の経験と、いま親になって思うことを合わせて整理します。
1. 情報を「置いておく」
説得ではなく、情報を届けるだけ、という形です。
資料やパンフレットを本人が見られる場所に置いておく。一緒に検討することを求めない。本人が自分のタイミングで見られる状態を作る。
私の場合、これがちょうどよい距離感でした。
2. 選択肢を「並べる」(絞らない)
ひとつの学校をすすめるのではなく、複数を並べる形です。
「もう全日制は無理だから通信制にしなさい」という消去法の伝え方だと、見捨てられたと受け取られる可能性があります。一方で「全日制も定時制も通信制もある。それぞれこういう仕組み」と並べる形なら、受け取り方が変わります。
私の家では3つの選択肢が話に出て、そのなかから自分で選びました。自分で選んだという実感は、入学後につまずいたときの支えになりました。
3. 「3年で卒業」を前提にしない
これは、あまり知られていないことだと思います。
「同級生と同じタイミングで卒業しなければ」という前提を外せると、選べる道が広がります。
4. サポート体制を、親の視点で確認する
これは、私が失敗した部分から言えることです。
だからもしお子さんが「一人で計画的に進めるのが苦手」なタイプなら、メンターや担任がどのくらい関わってくれるのかを、学校選びの段階で確認しておくことをおすすめします。ここは本人より、親のほうが冷静に見られる部分だと思います。
5. 学費と支援制度を、先に把握しておく
進路の話が具体化してから慌てないよう、お金の見通しは早めに立てておくと安心です。
高等学校等就学支援金は、通信制高校でも要件を満たせば利用できます(文部科学省の案内)。ここは本人には見えにくい部分なので、親が把握しておく意味があります。
私はファイナンシャル・プランニング技能士2級を持っているので、お金の相談を受けることもあるのですが、通信制高校の費用でつまずきやすいのは次のような点です。
とくに見落としやすいのがスクーリングにかかる交通費です。授業料の比較だけで判断すると、あとから想定外の出費になることがあります。
学校ごとの費用の考え方は通信制高校とは?でも触れています。
逆に、しないほうがよかったと思うこと
私の場合の話として、書いておきます。
結論を急がせること
進路の話は、本人にとっては「将来どうなるか」という怖い話でもあります。当時いちばん怖かったのは、勉強の遅れよりも「このまま自分はどうなるんだろう」という先の見えなさでした。
考えると苦しくなるから、考えないようにしていた——そんな状態のときに結論を求められていたら、たぶん心を閉じていたと思います。
他の子と比べること
これは私の親はしませんでしたが、されていたらきつかっただろうと思います。
不登校の期間中、私がいちばん気にしていたのは人の目でした。同級生がどうしているかは、言われなくても意識していました。自分がいま普通の道から外れているということは、誰よりも本人がわかっています。そこを指摘されると、逃げ場がなくなります。
生活リズムを正面から責めること
当時の私は、完全に昼夜が逆転していました。起きている時間はほとんどゲームをしていて、部屋にこもりがちで、ご飯も一人で食べることが多かったです。
いま親の立場で見れば、心配になる生活だと思います。実際、私も自分の子が同じ状態になったら不安になるはずです。
ただ当時の感覚で言うと、昼夜逆転は原因ではなく結果でした。日中に動く理由がなくなったから、夜型になった。だから生活リズムだけを正そうとしても、根っこは変わりません。
順番としては、先に「日中に行く場所・やること」の見通しが立って、そのあとに生活が戻っていったというのが、私の実感です。
通信制を選んだあと、親に知っておいてほしいこと
進学先が決まれば終わり、ではありませんでした。入学したあとにも、親が把握しておくとよいことがあります。
入学直後がいちばん不安定でした
私の場合、入学してすぐに前向きになれたわけではありません。最初のころは不安のほうが大きく、自分のことでいっぱいいっぱいでした。
変化が見えたのは、もっとあとです。
変化は、入学してすぐには見えません。少なくとも私の場合、自信のようなものが戻ってきたと実感できたのは、かなりあとになってからでした。
すぐに結果が見えなくても、それが失敗のサインとは限らない——これは、当時の親に伝えられるならいちばん伝えたいことかもしれません。
学校の雰囲気は、思っているより穏やかでした
通信制と聞いて、どんな生徒がいるのか不安に思われる方もいると思います。私も入学前はそうでした。
実際に通った体感では、こんな割合でした。
| 生徒のタイプ | 体感の割合 |
|---|---|
| おとなしい、不登校を経験してきたタイプ | 6割 |
| 見た目が少しやんちゃなタイプ | 2割 |
| いわゆる普通の子 | 1割 |
| 年配の方(学び直しの方) | 1割 |
いちばん多いのは、私と同じように学校に行けなかった経験のある、おとなしいタイプでした。そして見た目がやんちゃな子と話してみて思ったのは、「みんな何かしら悩みを抱えて、それぞれ頑張っているんだな」ということでした。
なお、いまお店で働いてくれているN高生の話を聞くかぎり、現在の通信制はさらにインドア寄りの生徒が多いそうです。ゲームやクリエイティブ系の目標があって選んでいる子も多く、私の時代とはかなり雰囲気が違うようです。
私の親は「何も言わなかった」——ただし、それが正解とは限りません
ここは慎重に書きます。
親になったいま、正直に思うこと
最後に、二児の親としての本音を書きます。
きれいな結論は出せません。ただ、「行かせるべきか、休ませるべきか」の二択の間にも道はあるということだけは、経験としてお伝えできます。
私にとっては、それが通信制でした。そして、その入口は親が取り寄せてくれた一冊の資料でした。
資料請求は「親ができる、いちばん小さな一歩」だと思います
進路のことで何かしなければと思っても、いきなり学校見学に連れて行くのはハードルが高いはずです。本人が動ける状態でないことも多いと思います。
その点、資料を取り寄せるだけなら、本人を巻き込まずに親だけで完結します。届いたものを置いておくかどうかも、そのあと決められます。
私の親がしてくれたのも、まさにそれでした。説得されたわけでも、見学に連れて行かれたわけでもなく、ただ資料が家にあった。それが結果的に、進路が変わるきっかけになりました。
もし通信制を選択肢のひとつとして考えてみようと思われたら、まずは資料を見てみるところからでも十分だと思います。資料は各学校の公式サイトから無料で請求できます。
私自身がどう進んだかは、中学で不登校だった私が、通信制高校を選んで社会に出るまでに詳しく書いています。
まとめ
不登校の子の進路で親にできるのは、決めることでも待つことでもなく、選択肢を見える形にしておくこと——これが、すすめられた側だった私の実感です。
- 私の親がしてくれてよかったのは、選択肢を並べてくれたことでした
- 具体的な行動としては、通信制高校の資料を取り寄せてくれたこと。自分から動けない時期には、これが大きな意味を持ちました
- 学校に行けていない子の中にも、「行きたい気持ち」が同時にあることがあります
- 「3年で卒業」を前提にしないと、選べる道が広がります
- ただし、関わり方に唯一の正解はありません。判断に迷うときは専門の相談窓口も活用してください
