「このまま学校に行かなかったら、この子の将来はどうなるんだろう」
不登校の子の将来について検索すると、「将来は閉ざされません」「大丈夫です」という記事がたくさん出てきます。ただ、その多くは実際にその後を生きた人が書いたものではありません。
私は中学1年の途中から学校に行けなくなり、2年生で登校できたのは最初の1日だけでした。そこから通信制高校に進んで卒業し、就職して、独立しました。いまは自分が親の側にいます。あれから20年です。
そして、いまは人を雇う側でもあります。通信制の生徒だけで12人以上、定時制の子も含めればもっと多くの10代を採用してきました。彼らの「その後」も、何年も見てきました。
この記事は、励ましではなく記録です。私に何が起きたか、雇ってきた子たちに何が起きたか、そして公的な統計は何と言っているか。できるだけ正直に書きます。
不登校の子の将来はどうなるのか、先に結論を書きます
私の答えは「将来は決まりません。ただし、選択肢を確保しておくかどうかで、後の広がりは変わります」です。
前提を確認しておくと、不登校とは、病気や経済的な理由を除いて年間30日以上欠席した状態です。文部科学省の統計上の区分にすぎず、その子の能力や将来を測る指標ではありません。
そのうえで、私の20年を一行で言えば「中学はほとんど行けず、通信制高校を4年かけて卒業し、就職して辞めて、回り道の末にいまがある」です。学歴で困った場面は、ほとんどありませんでした。
ここだけ読むと成功譚に見えるかもしれませんが、そう読まれるのは私の本意ではありません。私はたまたま合う環境に当たっただけで、同じ道を通れば同じ結果になるとは考えていません。実際、私が雇ってきた子のなかにも、途中で辞めていった子はいます。だからこの記事では、うまくいった話と、いかなかった話の両方を書きます。
当時いちばん怖かったのは、成績でも進路でもなく「将来」でした
いま同じ状況にいる方に最初にお伝えしたいのは、その怖さは、当時の私もまったく同じように感じていたということです。
中学2年の私が怖かったのは、勉強の遅れそのものではありませんでした。もっと漠然としていて、名前のつけにくいものでした。いま振り返ると、あの恐怖は3つに分解できます。
ただし、当時の私にこれを言っても届かなかったと思います。「大丈夫だよ」という言葉ほど、あのころの自分に響かないものはありませんでした。だからこの記事も、あなたを説得するつもりはありません。こういう例が実際にあったという情報を、置いていくだけです。
不登校だった私の、その後20年
ここからは事実の列挙です。感動的な転機はありません。回り道だらけです。
中学で不登校
1年の途中から休みがちになり、2年で登校できたのは最初の1日だけ
通信制高校へ
親がすすめてくれた。3年ではなく4年かけて卒業する道を選んだ
最初の就職
学校推薦で販売の仕事へ。やりたいことではなく、数年で退職
家族の会社を手伝う
ここで人の管理を任されるようになる。20代の大半をここで過ごす
独立して現在
店舗とIT系の会社を経営。二児の親、FP2級
この5行を並べると、きれいに階段を上ったように見えます。でも実際には、どの段階も計画して選んだものではありませんでした。
社会に出るまでの経緯そのものは中学で不登校だった私が、通信制高校を選んで社会に出るまでに、就職の入口の話は通信制高校から就職はできる?に書きました。この記事は、その先の「20年分の答え合わせ」です。
20年で「学歴のせいで損した」と言える場面は、1つだけでした
結論から書くと、通信制高校を出て損をしたと感じた場面は、ほとんどありませんでした。強いて挙げるなら、1つだけあります。
入学前に心配していたことと、実際に起きたことを並べると、こうなります。
| 入学前に心配していたこと | 20年後の実際 |
|---|---|
| 就職の入口がないのではないか | 学校推薦の枠があり、そこから就職した |
| 面接で通信制を突っ込まれるのではないか | 推薦だったこともあり、深く聞かれなかった |
| 転職や独立のときに壁になるのではないか | 学歴を理由に断られた経験はない |
| 人に言うのが恥ずかしいのではないか | 社会に出た当初は少し気を使われたが、いまは何も感じない |
| 卒業年がずれるのが不利ではないか | 年齢を聞かれる場面はある(唯一の実害) |
「恥ずかしさ」については、消えた条件がはっきりしています。自分にできることが増えてから、突っ込まれること自体がなくなりました。この感情の変化は「N高等学校は恥ずかしい?」と検索したあなたへに書いています。
雇う側になって見えた、元不登校の子たちの「その後」
私は自分の「その後」だけでなく、他人の「その後」も見てきました。 これまで雇った10代はのべ何十人になり、通信制の生徒だけで12人以上、定時制も含めればもっと多くなります。全員が不登校を経験しているわけではありませんが、何かしら事情のある子は多い環境です。
雇う側の詳しい観察や、面接で受け答えができなかった子が管理職になるまでの経緯は、N高生4人と働いてわかったことにまとめました。ここでは「その後」に関わる部分だけを書きます。
続いた子と、続かなかった子
きれいな話だけにするつもりはないので、うまくいかなかったほうも書きます。
いちばん「その後」を実感する瞬間
私が言える「その後」は、統計ではありません。十数人分の顔と名前がある「その後」です。そのなかには、うまくいった子も、いかなかった子もいます。ただ、不登校や通信制であること自体が理由でつまずいた子は、記憶の中に一人もいません。
統計で見る「不登校のその後」
個人の話ばかりでは判断材料にならないので、公的なデータも確認しておきます。ここは、思っているより数字が少ない領域です。
中学3年で不登校だった人の、5年後
文部科学省は、平成18年度に中学3年生で不登校として計上された41,043人を追跡し、20歳時点で何をしているかを調べています(不登校に関する実態調査、2026年8月8日確認)。
| 20歳時点の状況 | 割合 |
|---|---|
| 就業のみ | 34.5% |
| 就学のみ | 27.8% |
| 就学と就業の両方 | 19.6% |
| 就学も就業もしていない | 18.1% |
高校への進学率は85.1%、そのうち高校を中退した人は14.0%でした。
私はこう読んでいます。大多数は高校に進んでおり、20歳時点でも8割以上が学んでいるか働いている。不登校がそのまま進学や就労の断絶になるわけではありません。一方で18.1%はそのどちらでもない。この数字を「大丈夫です」で塗りつぶすのは誠実ではないと思います。
「珍しいこと」ではなくなっている
いまの数字も確認しておきます。
文部科学省の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(令和6年度/2026年8月8日確認)によると、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人で過去最多でした。内訳は小学校137,704人、中学校216,266人です。高等学校でも67,782人が不登校として計上されています。
受け皿の側も大きく変わりました。学校基本調査の令和7年度確定値(2025年5月1日現在/2026年8月8日確認)では、高等学校通信制課程の生徒数は305,197人。高校生全体のおよそ9.6%、つまり10人に1人が通信制の生徒という時代になっています。
通信制高校の仕組みそのものは通信制高校とは?で解説しています。
将来のために、いま親御さんができること
将来を良くするための特効薬はありません。ただ、将来の選択肢が狭まらないようにすることなら、いまできます。
私の実感では、それは進路の選択肢を「並べておく」ことに尽きます。
選択肢を並べるとき、最低限この4つは知っておくと視野が変わります。
| 選択肢 | 特徴 | 向きやすい状況 |
|---|---|---|
| 全日制高校 | 毎日通学。行事や部活が充実しやすい | 環境が変われば通えそうな場合 |
| 定時制高校 | 夕方・夜間などの時間帯が中心 | 生活リズムが特定の時間帯に合う場合 |
| 通信制高校 | レポート・スクーリング・試験で単位を積む。登校日数が少ない | 毎日の通学が負担になる場合 |
| 高卒認定試験 | 高校卒業と同等の学力を認定する試験。学校に通わず受験可能 | 進学を目指しつつ在籍が難しい場合 |
そして、タイミングについて、いま親の立場になって思うことをひとつだけ書きます。
親御さんの具体的な関わり方については、不登校の子の進路、親にできることに、当時すすめられた側としての本音を書きました。
学校の資料は無料で取り寄せられます。本人を巻き込まずに親だけで完結するので、「まだ何も決めていない段階」でもできる一歩です。実際に取り寄せてみた記録はN高に資料請求してみたにまとめています。
逆に、私が「やらなくてよかった」と思うこと
20年経って振り返ると、自分がしていたことの中に、明らかに時間の無駄だったものがあります。
将来のために何かをするなら、周りの目を気にする時間を減らして、自分にできることを1つ増やすほうに使う。これが、20年やってみた私の結論です。
まとめ
不登校の子の将来はどうなるのか。20年後の当事者として、そして元不登校の若者を雇ってきた立場から、整理します。
- 私の場合、不登校で将来が閉ざされることはありませんでした。ただし合う環境に当たった運の要素が大きく、再現手順として書けるものではありません
- 20年で「学歴のせいで損した」と言えるのは、4年制で卒業年がずれ、年齢を聞かれる場面があったことだけでした
- 雇う側として12人以上の通信制の子を見てきましたが、働く能力に違いはありません。続く子と続かない子はいますが、それは環境とタイミングの問題だと考えています
- 文部科学省の追跡調査では、中学3年で不登校だった生徒の高校進学率は85.1%、20歳時点で就学も就業もしていない人が18.1%。「大丈夫」とも「危ない」とも言い切れない数字です
- 親御さんにできるのは、決めることでも待つことでもなく、選択肢を並べておくこと。それが将来の幅に直結します
将来は、いまの状態の延長では決まりません。少なくとも私の場合はそうでした。それだけは、実例としてお伝えできます。
