「通信制高校を卒業して、ちゃんと就職できるんだろうか」
お子さんの進路を考えるとき、多くの親御さんがいちばん気にされるのは、たぶんここだと思います。学費でも、評判でもなく、その先の人生です。
私は中学で不登校を経験し、通信制高校を卒業して就職しました。いまはIT系の会社と店舗を経営していて、人を採用する側にもなっています。
この記事では、通信制高校から就職した当事者として、そして通信制の生徒を実際に雇っている経営者として、両方の立場から正直に書きます。
そもそも通信制高校の卒業生は、どんな進路に進んでいるのか
先に全体像を確認しておきます。
通信制高校とは、自宅学習を中心に単位を修得する高校の課程です。 レポート提出・スクーリング(面接指導)・試験の3つで単位を積み上げ、卒業をめざします。 卒業して得られる資格は全日制と同じ「高等学校卒業」であり、履歴書上でも通信制であることを区別して書く必要はありません。
進路については、文部科学省の学校基本調査で毎年公表されています。通信制課程の卒業生は、大学・短大への進学、専門学校への進学、就職、そのいずれでもない進路と、進み方が全日制より分散しているのが特徴です。
つまり「通信制だから就職」でも「通信制だから進学できない」でもなく、選択肢は分かれているというのが実態です。
結論:私は学校推薦を使って就職しました
意外に思われるかもしれませんが、通信制高校にも、全日制と同じように学校推薦の枠があります。
企業から学校に求人が届き、校内で選考を経て推薦してもらう仕組みです。私はそれを使って就職しました。
もし一般応募で面接を受けていたら、当時は多少マイナスに働いた部分もあったかもしれません。ただ、それは十数年前の話です。いまは通信制高校がずいぶん一般的になり、偏見も当時より少なくなっていると感じます。
そのあとのキャリアは、回り道だらけでした
きれいな話ではないので、正直に書きます。
高校を出てまっすぐ一つの道を進んだわけではありません。回り道だらけです。
ただ、その回り道のなかで学歴が問題になった場面は、ほとんどありませんでした。転職のときも、独立してからも、「高校がどこか」で判断される場面には出会いませんでした。
いまは学歴も大事ですが、スキルも同じくらい見られる時代です。卒業後に専門学校に行ったり、資格を取ったりで埋められる部分は多いと思います。私自身、必要になってから学んだことのほうが、仕事では役に立っています。
面接で通信制について聞かれたら、どう答えるか
私は学校推薦だったので深く聞かれませんでしたが、一般応募では触れられることもあります。いま採用する側として面接をしている立場から、率直に書きます。
採用側が知りたいのは「経歴の穴」ではありません
面接で通信制について質問するとき、採用側が確認したいのは、たいてい次のようなことです。
「なぜ通信制なのか」を責めたいわけではありません。 説明できるかどうかを見ています。
私が面接をするときも、経歴そのものより、その人が自分の経験をどう捉えているかを見ています。うまく話せなくても構いません。取り繕っていないかどうかのほうが、はるかに伝わります。
私だったら、こう答えます
参考までに、私自身が一般応募で聞かれたとしたら、という前提で書きます。
「中学のときに学校に行けない時期があり、自分のペースで学べる通信制を選びました。最初は課題を溜めてしまうこともありましたが、4年かけて卒業する形にして、最後まで続けられました」
事実をそのまま言うだけです。きれいな理由をつくる必要はありません。むしろ、つじつまの合わない説明のほうが印象に残ります。
採用する側になって見えたこと
ここからは、雇う立場から書きます。私にとっては、この視点を持てたことが大きな転機でした。
いま、店ではN高生4人が働いています
飲食や小売の現場では、平日の日中に人が足りません。そこに入れる人材は、率直に言って貴重です。「通信制だから雇いたくない」ではなく、「通信制だから助かる」というのが、現場の実感です。
本人たちは「選んで」入っています
もうひとつ、採用してから知ったことがあります。
通信制を「学校に行けなくなった子の受け皿」とだけ捉えていると、この部分は見えません。やりたいことのために積極的に選ぶ進路でもあるということは、採用する側になって初めて実感しました。
平日に働くと、友達と疎遠になりませんか?
これはよく聞かれる不安ですが、実際は逆のようです。
「通信制だと友達と疎遠になるのでは」という心配をよく聞きますが、むしろ予定を合わせやすい面もあるということです。
私の強みは、挫折したことでした
ここは、自分でも意外だった部分です。
不登校の経験は、私にとって「マイナスを取り返した」ものではありませんでした。結果的に、替えのきかない強みになっています。
通信制で身についたのは「サボる力」でした
少し変な言い方に聞こえるかもしれません。
社会に出てから役に立った力は何かと考えると、私の場合は「サボる力」でした。
卒業後の選択肢を広げるためにできること
「就職できるか」だけで考えると視野が狭くなるので、卒業後の広げ方も書いておきます。私自身がやってきたこと、うちで働く子たちを見て思うことの両方です。
在学中にアルバイトをしておく
これは、雇う側になっていちばん強く思うことです。
通信制は平日の日中に時間を作りやすいので、この点では全日制よりむしろ有利だと思います。
資格やスキルで、あとから積み増せる
学歴に不安があるなら、そこを直接埋めようとするより、別の軸を足すほうが早い場合があります。
- 専門学校へ進学する
- 業務に関わる資格を取る
- 実務で使えるスキル(デザイン、プログラミング、簿記など)を身につける
私自身、いま仕事で使っている知識のほとんどは、高校卒業後に必要になってから学んだものです。ファイナンシャル・プランニング技能士2級を取ったのも、事業をやるうえで必要になったからでした。
高校を出た時点ですべてが決まるわけではない、というのは実感として言えます。
進路実績は、学校選びの段階で見ておく
これは親御さんの役割になる部分だと思います。
これらは資料や個別相談で確認できます。学費や通いやすさだけで選ぶと、卒業のタイミングで選択肢が限られることがあります。
それでも、正直に書いておきたいこと
いいことばかり書くつもりはないので、当時つらかったことも書きます。
- 私の時代は今ほど通信制が多くなかったので、人に「通信制です」と言うのが少し恥ずかしかった
- 平日の昼間に外を歩いていると、変な目で見られている気がして、それが少し辛かった
いまは通信制高校が広く知られるようになり、生徒数も大きく増えました。この点は当時よりずいぶん楽になっていると思いますが、ゼロではないかもしれません。
また、普通の高校に行って普通の青春を送ってみたかったという気持ちは、正直いまも少しだけ残っています。後悔しているかと聞かれたらしていませんが、心残りがないわけではありません。
親御さんが不安なとき、確認するとよいこと
最後に、親の立場から見た確認ポイントを整理します。私も二児の親なので、心配になる気持ちはよくわかります。
「就職できるかどうか」は、通信制かどうかよりも、その学校とその子の状況で決まる部分が大きいというのが、両方の立場を経験した私の結論です。だからこそ、漠然と不安がるより、確認できることを潰していくほうが現実的だと思います。
| 不安 | 確認する先 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 就職先があるか | 学校の資料・個別相談 | 学校推薦の求人数、進路実績 |
| 支援してもらえるか | 学校の資料・個別相談 | 進路指導の担当がいるか、面談の頻度 |
| 本人が続けられるか | 学校の資料・個別相談 | メンター制度、課題のサポート体制 |
| 卒業できるか | 募集要項 | 在籍可能年数、単位の仕組み |
ここまで確認できていれば、少なくとも「何もわからないまま不安」という状態からは抜け出せます。
私の親も、通信制がどういうものかわからないまま資料を取り寄せてくれました。わからないから調べる——親にできることは、案外そういう地味なことなのだと思います。
まとめ:就職できるか、の答え
通信制高校から就職はできるのか——私の答えは「できます」です。ただし、条件をつけずに言い切るつもりはありません。
- 私は学校推薦の枠を使って就職しました。通信制にも推薦の仕組みがあります
- 社会に出てから、学歴で困った場面はほとんどありませんでした
- いま採用する側になって、通信制の生徒はむしろ助かると実感しています。実際に正社員になった子もいます
- 一方で、一般応募では触れられる場面もあり、まったく影響がないとまでは言えません
- 就職の実績や支援体制は学校によって差が大きいので、学校選びの段階で確認しておくと安心です
進路の不安は、情報が足りないことから来る部分も大きいと思います。気になる学校があれば、資料を取り寄せて進路実績を確認してみるところから始めてみてください。
私自身の経緯は中学で不登校だった私が、通信制高校を選んで社会に出るまでに、学歴の扱いについては通信制高校から就職はできる?に、それぞれ詳しく書いています。
