「通信制からでも大学に行けますか」——進路を調べはじめた保護者の方が、早い段階で突き当たる質問だと思います。ネットで検索すると「行けます」と書いてあるサイトもあれば、「厳しい」と書いてあるサイトもあって、どちらを信じていいか分からなくなります。
先に正直なところを書きます。通信制高校からの大学進学は、制度としては全日制とまったく同じ条件で可能です。ただし、実際に進学している人の割合には差があります。 両方とも事実で、片方だけを言うと嘘になります。
この記事では、公的な統計と文部科学省の一次資料で数字と制度を確認したうえで、その差がどこから来ているのか、そして進学を目指すなら学校選びで何が変わるのかを整理します。
なお、はじめに書いておきます。私自身は通信制高校を卒業しましたが、大学には進学していません。 だからこの記事は「私はこうやって大学に行きました」という話ではなく、データと制度を確かめた記録です。その代わり、同じ通信制から大学へ進んだ同級生を見ていて思ったことは、最後に書きます。
結論:大学等進学は28.6%。全日制等との差は事実です
まず数字を出します。通信制課程の卒業生のうち、大学等に進学するのは28.6%です。
確認したのは、令和7年度の学校基本調査に含まれる「卒業後の状況調査」です。令和6年度間に通信制課程を卒業した人は91,809人でした(2026年8月22日確認)。
| 卒業後の状況 | 通信制課程 | 高等学校(全日制・定時制)等 |
|---|---|---|
| 卒業者数 | 91,809人 | 955,335人 |
| 大学等進学 | 26,301人(28.6%) | 586,639人(61.4%) |
| 専修学校(専門課程)進学 | 21,013人(22.9%) | 137,876人(14.4%) |
| 就職者 | 12,989人(14.1%) | 131,522人(13.8%) |
| 左記以外の者 | 23,995人(26.1%) | 58,595人(6.1%) |
(e-Stat「学校基本調査 令和7年度」統計表より作成。2026年8月22日確認)
28.6%と61.4%。2倍以上の開きがあります。 この数字を小さく見せる書き方はしません。
そのうえで、この「大学等進学」が何を数えた区分なのかを先に確認しておきます。調査を行う側の手引には、こう書かれています。
「A 大学等進学者」:大学(学部)、短期大学(本科)、大学・短期大学の通信教育部(正規の課程)及び放送大学(全科履修生)、大学・短期大学(別科)、高等学校(専攻科)及び特別支援学校高等部(専攻科)へ進学した者及び進学しかつ就職した者
(文部科学省「令和7年度学校基本調査の手引(高等学校)」より。2026年8月22日確認)
つまり「大学等進学」は、大学の学部だけを数えた数字ではありません。 短期大学や通信教育部、専攻科への進学も同じ区分に入ります。ここを押さえたうえで、前提が2つあります。
なお、通信制の進学率として「21.2%」という別の数字を見かけることがあります。どちらかが誤りなのではなく、数えている範囲(大学学部だけか、大学等か)と対象の年度が違う数字です。混同しやすいところなので、整理は記事の終わりに付記としてまとめました。
通信制高校からの大学進学とは、どういう進み方なのか
通信制高校からの大学進学とは、通信制課程で高等学校を卒業し、その卒業資格で大学入試を受けて進学することです。 特別な制度ではなく、全日制とまったく同じ入口を通ります。
前提として、通信制課程は学校教育法上の高等学校です。卒業に必要なのは74単位以上の修得・3年以上の在籍・特別活動の所定時間といった要件で、これを満たせば得られる資格は「高等学校卒業」。履歴書にも、大学の出願書類にも、全日制と区別して書く欄はありません。
高校を卒業する
74単位以上を修得し、卒業資格を得る
出願方式を選ぶ
一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜のいずれか
書類を揃える
在籍校が調査書を作成。方式により志望理由書や推薦書が加わる
受験する
大学入学共通テスト、個別試験、面接、小論文など
この流れのどこにも、通信制であることを理由にした制限はありません。 大学入学共通テストの受験資格も同じです。
では、なぜ結果に差が出るのか。次で構造の話をします。
なぜ差が出るのか。学力だけの問題ではありません
差の主因は、通信制の仕組みが「卒業できること」を軸に設計されていて、受験学力の積み上げは別に用意する必要があるからだと考えられます。 順に見ていきます。
卒業要件と、受験に必要な学力は別のものです
これは通信制に限った話ではありませんが、通信制ではより見えやすくなります。
単位の認定要件は、レポートの提出・スクーリングの出席・単位認定試験の合格といった項目で構成されます。たとえばN高グループの場合、単位認定に必要なのは「レポートを期日内に全提出」「スクーリングに必要時間出席」「テストで合格基準点以上」「評定2以上」などで、テストの合格基準点は30点とされています(学校案内2026年版・2026年8月22日確認)。
この基準は「高校の課程を修めた」と認めるためのラインであって、大学入試のラインではありません。 卒業要件を淡々と満たしていくだけでは、受験の土俵には届かない。ここが最初のギャップです。
評定と推薦の関係についてはN高に指定校推薦はある?対象校と枠の調べ方に詳しく書いたので、重複は避けます。
授業に触れる時間の総量が違います
全日制は週30コマ前後の授業を3年間受けます。通信制は、映像授業とレポート、年に数日から週数日のスクーリングが基本です。
「同じ内容を短時間で終えている」のではなく、自学の比重が大きい設計になっているというのが正確な言い方だと思います。自分で進められる人には有利に働き、そうでない人には積み上がりにくい。同じ制度が、人によって逆向きに作用します。
進路の話をする相手が、自然には現れません
これが個人的にはいちばん大きいと思っています。
全日制なら、毎日顔を合わせる担任がいて、周りの生徒が受験の話をしていて、放っておいても進路の情報が耳に入ります。通信制では、登校日が少ないぶん、その接点が自動では生まれません。
さきほどの表の最後の行——「左記以外の者」が26.1%(全日制・定時制等は6.1%)というのは、この構造が数字に出たものだと受け止めています。家事手伝いをしている人、認可を受けていない予備校などに進んだ人、状況が把握できていない人も入る区分なので一概には言えませんが、卒業の時点で次が決まっていない人の割合には差がある、というのは事実として見ておくべきだと思います。
通信制から使える大学入試のルートは3つあります
一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜。この3つはすべて通信制の生徒が使えます。 文部科学省の実施要項に定められた区分をそのまま確認します。
| 方式 | 主な資料・評価 | 高校長の推薦 | 出願受付(令和9年度入学) |
|---|---|---|---|
| 一般選抜 | 学力検査・小論文等を主な資料とし、調査書等を組み合わせる | 不要 | 試験期日は令和9年2月1日〜3月25日 |
| 総合型選抜 | 詳細な書類審査+時間をかけた面接等。志願者本人が記載する資料を必ず活用 | 不要(公募制) | 令和8年9月1日以降 |
| 学校推薦型選抜 | 調査書を主な資料としつつ評価・判定 | 必要 | 令和8年11月1日以降 |
(文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」の第3・第4をもとに整理しました。2026年8月22日確認)
総合型選抜は、学校の枠に左右されません
通信制の家庭にとっていちばん知っておく価値があるのは、ここだと思います。
実施要項は、総合型選抜について「入学志願者自らの意志で出願できる公募制という性格に鑑み、志願者本人の記載する資料を必ず評価に活用する」と定めています。志願者本人が記載する資料とは、活動報告書・大学入学希望理由書・学修計画書などです。
つまり総合型選抜は、高校が推薦してくれるかどうかに関係なく、本人の意志で出願できます。 指定校推薦のように「枠が来ているか」「校内選考を通れるか」という条件が挟まりません。
そして評価されるのは、志望する学問分野への意欲や適性、活動歴、目的意識です。やりたいことがはっきりしていて、そのために時間を使ってきた生徒にとっては、通信制の過ごし方がそのまま材料になりえます。
学校推薦型選抜と指定校推薦
学校推薦型選抜は、出身高等学校長の推薦に基づき、調査書を主な資料として評価する方式です。実施要項は「入学志願者自らの意志のみで出願できるものではなく」と明記しています。
このうち、大学が特定の高校を指名して枠を渡す運用を、慣習的に指定校推薦と呼びます。通信制高校にも指定校推薦の枠は存在します。 ただし枠は年度ごとに動くので、実績があることと自分の年に枠があることは別です。この論点は指定校推薦の枠の調べ方に整理してあります。
調査書は、通信制でもきちんと作成されます
「通信制だと調査書が出せないのでは」という心配は、制度上は生じません。 実施要項の様式に、通信制課程を想定した規定があります。
具体的には、調査書の記入上の注意に次の規定があります。
学年による教育課程の区分を設けない全日制、定時制及び通信制の課程においては、「学年」を「年度」と読み替えること
(文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」の別紙様式1「調査書記入上の注意事項等について」より。2026年8月22日確認)
4年以上かけて卒業する場合の扱い
もうひとつ、通信制ならではの規定があります。調査書には「学習成績概評」というA〜Eの5段階の欄があり、その算定期間について次のように書かれています。
高等学校における同一学年生徒全員(中略)の3か年間(ただし、定時制及び通信制の課程で修業年限が3年を超えるものにあっては当該期間)における全体の学習成績の状況
| 全体の学習成績の状況 | 学習成績概評 |
|---|---|
| 5.0 〜 4.3 | A |
| 4.2 〜 3.5 | B |
| 3.4 〜 2.7 | C |
| 2.6 〜 1.9 | D |
| 1.8 以下 | E |
つまり4年かけて卒業する場合も、その4年間で算定されます。 3年で卒業しないと調査書が不利になる、という仕組みにはなっていません。私自身も4年かけて卒業していますが、制度として想定されている形です。
見落とされがちな注意点:大学は出願要件に科目を指定できます
ここは競合サイトでほとんど触れられていない部分なので、丁寧に書きます。
実施要項には、大学が調査書を活用するにあたって次のことができると書かれています。
大学が重要と判断する教科・科目を指定し、単位修得や一定水準以上の具体的な評定の獲得を出願要件等として求めることができる
高卒認定試験は、大学進学とどう関係するのか
高等学校卒業程度認定試験とは、高等学校を卒業した方と同等以上の学力があるかを認定する国の試験です。 合格すると大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。
通信制と併せて検討されることが多いので、関係を整理します。
| 高校を卒業する | 高卒認定に合格する | |
|---|---|---|
| 大学の受験資格 | 得られる | 得られる |
| 最終学歴 | 高等学校卒業 | 高校卒業にはならない |
| 出願時の書類 | 調査書 | 合格成績証明書で調査書に代えられる |
| 学校推薦型選抜 | 使える | 出身高校長の推薦が前提のため、原則として使えない |
(文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」および「高等学校卒業程度認定試験とは」、実施要項をもとに作成。2026年8月22日確認)
公式サイトには、「高等学校を卒業しなければ最終学歴は高等学校卒業とはなりません」と明記されています。ここは誤解が多いところです。
在学しながら受験することもできます
受験資格は「受験する年度の終わりまでに満16歳以上になる方」で、高等学校等に在籍している方も受験できます(すでに大学入学資格を持っている方は受験できません)。
在学中に受験する使い方として、公式サイトは次の例を挙げています。病気などで欠席が続き、1年生で修得すべき数学Ⅰの単位が取れなかった場合に、高卒認定試験で数学に合格すれば、学校長の判断でその単位を修得したと認められる場合があるというものです。
大学進学を目指すなら、学校選びで変わる部分があります
ここがこの記事のいちばん実務的な結論です。通信制のなかでも、進学サポートの厚みは学校によって大きく違います。
興味深いことに、これは学校側も認めています。N高グループの公式コラムには次のように書かれています。
大学進学を前提としているなら、ただ高卒資格が取れたら良いというわけではないため、通信制高校選びの段階から慎重にならなければなりません。卒業に必要な単位を取得しながら、大学受験のための実践的な勉強ができるような通信制高校を選ぶことが大切です
(N高等学校・S高等学校・R高等学校 公式コラム 2026年8月22日確認)
学校自身が「高卒資格が取れればいいわけではない」と言っているわけです。私もそのとおりだと思います。
何が用意されているかは、資料に書いてあります
たとえばN高グループの場合、進路サポートとして次のような仕組みが公表されています(進路サポート・2026年8月22日確認)。
- 必修授業のなかでの進路学習(進路の基礎知識、模試の受け方、出願・応募書類の書き方、面接対策)
- 進路相談・三者面談(メンター・生徒・保護者)
- 志望理由書/履歴書の添削、面接練習(ネットコース等はビデオ会議で実施)
- 進路イベント(過去の実施例として、大学オンライン合同説明会、現役東大生による共通テスト直前対策講座、海外大学国別説明会など)
合格実績としては、国公立大学205名・主要私立大学4,057名(うちZEN大学1,788名)が2026年5月19日時点、海外大学379名が2026年6月3日時点の数字として公表されています(大学合格実績・2026年8月22日確認)。同ページには「当実績は生徒および卒業生からの申告に基づいて集計しています」との注記もあります。
資料と相談会で確認する項目
学校名を問わず、進学を目指すなら確認したい項目をまとめます。
1〜4と6は募集要項や学校案内に載っていることが多く、5と7は個別相談会で聞く項目です。紙で並べて比べるのがいちばん早いので、候補校の資料はまとめて取り寄せてしまうことをおすすめします。私が実際に取り寄せたときの中身と、届くまでにかかった日数は請求してから手元に届くまでの記録に書きました。
私の周りにも、大学に進んだ人はいました
先に書いておくと、私自身は通信制高校の卒業生ですが、大学には進学していません。 ただ、周りに大学へ進んだ人がいなかったわけではありません。
進路の話は通信制高校から就職はできる?のほうに詳しく書いています。
そのうえで、同じ学校にいた同級生のことを書いておきます。
通信制に通っている本人ですら、「ここからそこへ行けるのか」と驚いた、ということです。通信制だから大学は無理という思い込みは、少なくとも私が見た範囲では成り立ちませんでした。
いま身近にいる在校生も、進路はそれぞれです。
4人が何を目指して入学したのかはN高等学校の進学実績は?のほうに書きました。入り口の時点ですでにばらけているので、出口がそろわないのはむしろ自然なことです。
就職、専門学校、やりたいことの実現、そして大学。同じ通信制でも、進路は一つの方向にまとまりません。
統計を見直すと、これは不思議なことではありませんでした。大学等進学28.6%、専修学校専門課程22.9%、就職14.1%。4人に1人強が大学へ進み、5人に1人強が専門学校へ進む。どれか一つが「通信制の進路」なのではなく、ばらけるのが実際の姿です。
私が見ている範囲はせいぜい数人なので、これを「全国の分布と一致した」と言うつもりはありません。ただ、進路がばらけていたこと自体は、統計と矛盾しない——言えるのはそこまでだと思っています。
進まなかった側の「その後」も、一言だけ
もし進学がうまくいかなかったら——という不安を持つ方もいると思うので、短く書き添えます。これは自分の実感として書けることです。高校を出た時点で、その後が決まるわけではありませんでした。
念のため添えると、これは「大学に行かなくていい」という話ではありません。大学でしか得られない資格や進路はありますし、学びたいことがあるなら進学は強い選択肢です。私個人の経験に再現性の保証もありません。ただ、18歳の時点の進路で全部が決まるわけではなかったという一例として置いておきます。学歴の扱いそのものは通信制高校の学歴は不利になる?にまとめました。
付記:進学率「21.2%」という数字との関係
なお、通信制の進学率として21.2%という数字を見かけることがあります。当サイトでもN高等学校の進学実績は?公表されている数字の正しい読み方で使っている数字なので、ここではっきりさせておきます。
21.2%は、リクルート進学総研が学校基本調査をもとに集計したもので、「大学(学部)」への進学率だけを取り出した数値です(同レポートは内訳を「大学(学部)」「短期大学(本科)」「大学・短期大学の通信教育部」などに分けて集計しています)。対象は令和5年度間(2023年4月〜2024年3月)の卒業者です。
一方この記事の28.6%は、短期大学・通信教育部・別科・専攻科まで含む「大学等進学」で、対象は令和6年度間(2024年4月〜2025年3月)の卒業者。1年あとの学年です。
つまり数えている範囲も、対象の年度も違います。 どちらかが誤りなのではなく、別のものを測った数字です。通信制の進学率を比べるときは、①大学(学部)だけか、大学等か ②どの年度の卒業生か——この2点を揃えてから比べてください。
まとめ:数字を正確に見て、学校選びに落とす
通信制高校からの大学進学は制度上まったく可能で、実際に毎年2万人以上が進んでいます。ただし割合には差があり、その差は学校選びである程度動かせます。
- 通信制課程の卒業生の大学等進学は28.6%(令和6年度間・91,809人中26,301人)。通信教育部を除くと24.3%
- 高等学校(全日制・定時制)等は61.4%。差は事実ですが、母集団の性質が違うため因果としては読めません
- 制度上のハンデはありません。 卒業資格は同じで、一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜のすべてが使えます
- 総合型選抜は「志願者自らの意志で出願できる公募制」。 高校の推薦枠に依存しない出願ルートです。ただし面接は必須で、学力を問う評価方法の併用も求められます
- 調査書は通信制でも作成され、修業年限が3年を超える場合はその期間で算定されます
- 大学は出願要件として特定の科目の単位修得を求められます。 開設科目の一覧は入学前に確認する価値があります
- 高卒認定は在学中でも受験でき、合格科目を単位として認定できる場合があります(学校長の判断)。 ただし最大10科目で、最終学歴は高校卒業になりません
- 進学を目指すなら、受験対策が学費に含まれるか/進路の授業が必修か/総合型の個別サポートがあるかを、資料と相談会で確認してください
最後に。私自身は大学に進んでいないので、受験の中身を語ることはできません。ただ、同じ学校から進んだ同級生を見ているので、通信制だから無理だとも思っていません。そのうえで、データと制度を確かめて言えることがひとつあります。行けるかどうかは制度の問題ではなく、環境と設計の問題だということです。
進学を視野に入れているなら、候補校の資料を並べて、受験対策の中身を比べるところから始めるのがいちばん確実だと思います。学校案内には進路サポートの一覧も卒業生の進路内訳も載っていますし、そこに書いていないことは相談会で聞けます。動くのは、まだ早すぎるということはありません。