「通信制高校 やめとけ」で検索して、このページを開いてくださったのだと思います。

通信制高校はやめとけ——この言葉を、誰から言われたでしょうか。親御さん、祖父母、中学の先生、それともネットの書き込みでしょうか。あるいは、お子さんの進路を考えるなかで、親であるご自身の頭にこの言葉が浮かんでいるのかもしれません。

先にお伝えしておくと、私は通信制高校の卒業生です。中学で不登校になり、高校は通信制へ進み、卒業して社会に出て、いまは会社を経営しています。つまり「やめとけ」と言われる側の進路を、実際に選んで通り抜けた人間です。

だからといって「通信制は素晴らしい」と書くつもりはありません。当時つらかったことも、いま振り返って心残りに思っていることもあります。それも含めて、言われていることの中身を一つずつ確かめていきます。

なお、この記事は通信制高校という進路そのものについてです。N高等学校という特定の学校についての「やめとけ」は、N高等学校は「やめとけ」と言われるのはなぜ?で別に検証しています。学校固有の話(学費の内訳・キャンパス・ネット学習)はそちらにまとめました。

なぜ「通信制高校はやめとけ」と言われるのか

言っている人を3つの立場に分けると、それぞれ言い分の出どころが違います。多くは悪意ではなく、情報が古いか、届いていないかのどちらかです。

「やめとけ」という言葉は強いので、つい内容そのものが強い根拠に見えます。ですが分解してみると、次の3つに整理できました。

言う側の立場言葉の出どころ
親・祖父母などの家族自分が高校生だったころの通信制のイメージ
中学の先生・進路指導全日制を軸に組まれた進路情報の枠組み
ネットの書き込み強い言葉のほうが残り、拡散しやすいという性質

①家族の記憶が、20年ほど前で止まっている

いまの保護者世代が高校生だったころ、通信制は選択肢として一般的ではありませんでした。「働きながら高卒を取る人が行くところ」というイメージを持ったまま、その後の変化に触れる機会がなかった、という方は多いと思います。

つまり、20年前の記憶を根拠に語られる「やめとけ」は、当時としては正しかったかもしれないが、いまの通信制の話ではないということになります。

②進路指導は、全日制を軸に組まれている

中学の進路指導は、公立高校の入試日程を中心に動きます。内申点、学力検査、志望校の偏差値——この枠組みのなかに、通信制はうまく収まりません。

先生が通信制を否定しているというより、扱う情報の型が違うというほうが実態に近いと思います。通信制は入試の形も違えば、出願の時期も違います。詳しくは不登校から高校受験はできる?で整理しました。

③ネットでは、強い言葉ほど残る

「通信制高校 やめとけ」と検索すると、上位に出てくるのは知恵袋の質問と、個人が書いた体験談です。学校を批判する記事が並んでいるわけではありません。

満足している人はわざわざ書かないので、書き込みの母集団はもともと偏ります。そのなかで、「やめとけ」という4文字だけが独り歩きしている面はあると思います。

数字で確かめると、通信制はどのくらい「特別」な進路なのか

結論から言うと、いまの通信制はもう珍しい進路ではありません。 高校生のおよそ10人に1人が在籍しています。

通信制高校とは、登校日数が少なく、自分のペースで単位を積み上げていく高校の課程です。仕組みそのものは通信制高校とは?で解説しています。ここでは規模だけを見ます。

文部科学省「学校基本調査」の令和7年度確定値(2025年5月1日現在/2026年8月22日確認)によると、数字はこうなっています。

項目令和7年度
通信制課程の生徒数305,197人(公立62,008人・私立243,189人)
通信制課程を置く高校の数333校(前年度は303校)

同じ調査で、高等学校(全日制・定時制)の在学者数は2,873,619人です。通信制課程の305,197人と足すと3,178,816人になり、通信制の割合は約9.6%——およそ10人に1人という計算になります(当サイトで算出。中等教育学校後期課程などは含みません)。

そして、通信制課程を置く高校は1年で30校増えています。高校生の総数が減り続けているなかで、この課程だけが拠点を増やしている、というのが全体の構図です。

入学者の57.0%は、中学3年生のときに不登校でした

もうひとつ、検索してこられた方に届けたい数字があります。

文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(令和8年8月31日公表・調査時点は令和7年5月1日/2026年9月16日確認)によると、令和7年度に通信制高校へ入学した77,998人のうち、44,461人(57.0%)が中学3年生のときに不登校でした。

半分以上です。教室に入ってみたら、似た経験をしてきた人のほうが多い——これが数字が示していることです。

「ほとんど学校に行かない」も、一つの形にすぎません

「通信制は学校に行かないから社会性が身につかない」という言い方もよく聞きます。ここも、いまの実態とはずれています。

同じ実態調査によると、通学頻度別のコースの状況はこうなっていました(調査対象323校・生徒数は合計300,406人)。

コース開設している学校数在籍生徒数
週5通学コース90校37,505人
週4通学コース27校5,712人
週3通学コース63校20,013人
週2通学コース69校13,564人
週1通学コース128校36,929人
集中スクーリングを前提としたコース113校86,961人
その他(月1〜2回登校など)123校99,722人

週5日通うコースを置いている学校が90校あり、37,505人が在籍しています。 全体の12.5%です。週3日以上のコースまで広げると6万人を超えます。

つまり通信制のなかにも、毎日通う形から、年に数回の集中スクーリングだけの形まで幅があります。「通信制=ほとんど行かない」は、その幅の一端を全体だと思い込んだ言い方です。

「やめとけ」の中身を、3つに仕分けます

ここがこの記事の中心です。 言われていることを「誤解」「時代遅れ」「本当にあるリスク」に分けると、対処できるものと、できないものがはっきりします。

言われていること仕分け実際のところ
大学に行けない誤解令和6年度間の卒業者のうち大学等進学者は26,301人(28.6%)
就職で不利になる一部は誤解卒業者に占める就職者の割合14.1%は、全日制・定時制等の13.8%とほぼ同じ。ただし進路が決まらないまま卒業する人の割合には差があります
ほとんど学校に行かない時代遅れ週5通学コースに37,505人が在籍している
世間の目が冷たいかつては本当20年前は実際にありました。いまは薄れています
学費が高い学校による公立と私立で土台が違います
自分で進めないと何も進まない本当ここは仕組みの特性そのものです
続かなくなる人がいる本当令和6年度間の退学者は14,302人

「誤解」と「時代遅れ」は、事実を確認すれば解けます。問題は下の2つです。ここは仕組みに埋め込まれた性質なので、消えません。あとで正直に書きます。

学費については、公立と私立で土台がまったく違います。金額の比較は通信制高校の学費を比較にまとめました。

卒業後どうなるのか、公的データで確かめました

進学の割合には差があります。一方で、就職する人の割合はほとんど変わりません。 ここは数字をそのまま出します。

文部科学省「学校基本調査」の卒業後の状況調査(令和7年度/2026年8月22日確認)によると、令和6年度間に通信制課程を卒業したのは91,809人でした。内訳と、高等学校(全日制・定時制)等との比較は次のとおりです。

卒業後の状況通信制課程全日制・定時制等
卒業者数91,809人955,335人
大学等進学26,301人(28.6%586,639人(61.4%
専修学校(専門課程)進学21,013人(22.9%137,876人(14.4%
就職者(卒業者に占める割合)12,989人(14.1%131,522人(13.8%
左記以外の者23,995人(26.1%58,595人(6.1%

読み取れることを3つ書きます。

1. 大学等進学率には差があります。 28.6%と61.4%で、2倍以上の開きです。これは事実なので、隠しません。なお通信制の28.6%には大学・短期大学の通信教育部への進学者が含まれており、これを除くと24.3%になります。「通信制からは大学に行けない」は誤解ですが、「同じ割合で行っている」わけでもない、というのが正確なところです。

2. 専門学校への進学は、通信制のほうが高い割合です。 22.9%と14.4%。進学の行き先の内訳が違う、という言い方のほうが実態に近いと思います。

3. 就職する人の割合は、ほぼ同じです。 14.1%と13.8%。「通信制だと就職できない」という言葉と、この数字は噛み合っていません。 私自身も採用する側になりましたが、通信制出身であることをマイナスに扱ったことはありません(雇う側から見た話はN高生4人と働いてわかったことに書きました)。

そして、目をそらしてはいけない数字が最後の行です。「左記以外の者」が26.1%あります。 これは進学準備中・就職準備中・家事の手伝いなどを含む区分で、全日制・定時制の6.1%と比べると差が大きい。卒業後すぐに次が決まっていない人が、一定数いるということです。

私が「やめとけ」と言われる側の進路を選んだとき

ここからは、統計ではなく私自身の話です。なぜ通信制を選んだのかから書きます。

「行く」か「行かない」かの二択で苦しんでいたところに、第三の選択肢が現れた。私にとって通信制はそういうものでした。

卒業できたのは、余白がある設計だったからです

「やめとけ」の理由でいちばん多い「自己管理ができないと続かない」について、私は否定できません。私は、できなかった側だからです。

「3年で出られなければ失敗」という前提を、最初から外していた。これが結果的にいちばん効きました。この選択については通信制高校は4年で卒業してもいいに詳しく書いています。

なお、修業年限4年以上の課程を置く高校は全国に62校あり、35,860人が在籍しています(令和7年度学校基本調査)。選べる設計は、実際に用意されています。

それでも、通信制に向いていない人はいます

ここは正直に書きます。 「通信制なら大丈夫」とは言えません。

自由度の高さは、全員に優しいわけではありません。同じ性質が、人によって正反対に働きます。

通信制の性質合う人にとっては合わない人にとっては
自分のペースで進められる体調や状況に合わせられる進まないまま溜まっていく
登校日数が少ない通う負担が小さい生活リズムが崩れやすい
人間関係が濃くない気楽・仕切り直せる孤立しても気づかれにくい
時間の自由度が高いやりたいことに使える何もしない時間になる

そして、行かなくなる人は実際にいます。

文部科学省の令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果によると、令和6年度間に添削課題は提出しているが、面接指導に1日も来ていない生徒は8,097人でした。令和7年3月31日時点の在籍生徒306,711人に対して2.6%です。

また令和7年度学校基本調査によると、令和6年度間の退学者数は14,302人でした。同調査の令和7年5月1日時点の在籍生徒数305,197人と単純に比べると4.7%にあたります(在籍時点と退学の集計期間が完全には一致しない点はご留意ください)。

ちなみに、この8,097人がどのコースにいるかまで分けて計算すると、通学頻度によってかなり差が出ます。そちらは通信制高校に向いてない人はいる?自己管理ではなく「4つの余白」で考えますで表にしました。上の右列に自分が当てはまりそうだと感じた方は、何がその条件を埋められるのかまで書いてあるので、あわせて読んでみてください。

では何が続き方を分けていたのか。私は長いあいだ本人の気持ちの差だと思っていましたが、同じ子が条件次第で変わるのを見てから、そうは考えなくなりました。その話は通信制高校に向いてない人はいる?自己管理ではなく「4つの余白」で考えますに書いています。

20年後に振り返って、何が本当で、何が違ったか

「やめとけ」の一部は本当でした。ただし、当時の話です。

先に、本当だったほうから書きます。

このあたりの感覚については「N高等学校は恥ずかしい?」と検索したあなたへにも書きました。

では、20年経ってどうなったか。

身構えていた本人ほど、周りは何とも思っていない。 これが20年かけて分かったことです。

もう少し詳しい振り返りは通信制高校のメリットとデメリットに、不登校から社会に出るまでの経緯は中学で不登校だった私が、通信制高校を選んで社会に出るまでにまとめています。

「やめとけ」と言う人が、本当に心配していること

「やめとけ」は否定の言葉ですが、中身はたいてい不安です。 そして不安は、項目に分解すると確認できるようになります。

たとえば親御さんが「やめとけ」と言うとき、頭にあるのは次のようなことだと思います。

  • 卒業できなかったらどうするのか
  • 進学や就職で不利にならないか
  • 家にこもったままにならないか
  • 世間から変な目で見られないか

これはどれも、「反対」ではなく「確認したいこと」です。ここまでに見てきたとおり、4つとも数字か事実で確かめられます。言い合いになるのは、言葉の強さだけを受け取ったときです。

私自身、いまは二児の親です。子どもが「学校に行きたくない」と言ったらどうするかは、当事者だった側としても、親としても考えます。

「行った方がいいとは思う。でも無理強いはしない」——この両方を抱えたままなのが、私の正直なところです。きれいに割り切れてはいません。

親の側からできることは不登校の子の進路、親にできることにまとめました。

判断のためのチェックリスト

「やめとけ」という言葉で決めるより、確認できることを確認したほうが早いです。 以下は資料や個別相談で確かめられる項目です。

学校選びの考え方そのものは通信制高校の選び方で7つのポイントに整理しました。

この7項目は、口コミでは分かりません。募集要項や学校案内に書いてあることだからです。

なお、一度にたくさんの学校へ請求する必要はありません。気になる2〜3校に絞って取り寄せて、同じ項目を並べて見比べる——これで十分ですし、そのほうが家庭のなかでも話が進めやすいと思います。

実際に取り寄せると何が届くのかは、私が資料を取り寄せたときの記録に、届くまでの日数や中身まで書いています。

まとめ

「通信制高校はやめとけ」という言葉について、中身を一つずつ確かめてきました。

  • 「やめとけ」には、誤解・時代遅れの情報・本当のリスクが混ざっています。分ければ判断できます
  • 通信制課程の生徒は305,197人高校生のおよそ10人に1人です(文部科学省・令和7年度学校基本調査)
  • 令和7年度の入学者77,998人のうち57.0%が中学3年生のときに不登校でした
  • 卒業後、就職する人の割合は14.1%で全日制・定時制等の13.8%とほぼ同じ。一方で大学等進学率は28.6%と61.4%で差があります
  • ただし続かなくなる人はいます。「通信制に行けば解決する」とは書けません
  • 私はこの選択を後悔していません。ただし心残りはあります。両方とも本当です

最後に、20年前に「やめとけ」と言われる側だった人間として、ひとつだけ書かせてください。

あのとき私が救われたのは、通信制という制度そのものではなく、「行く」か「行かない」かの二択ではない、という事実でした。選択肢が一つ増えただけで、息ができるようになった。

いま不安な気持ちで検索されているなら、まずは気になる2〜3校の資料を並べて、確認できることを確認するところからで十分だと思います。判断は、そのあとで間に合います。