「通信制高校を出たら、学歴で不利になるのではないか」
進路を決める前にこれを気にしている方は多いと思います。そして、これに正面から答えている情報は意外と少ない。
私は中学で不登校を経験して通信制高校を卒業しました。その後、就職して、転職して、独立して、いまは複数の事業を経営しています。そして採用する側でもあります。学生を何十人と雇ってきて、通信制の子だけで12人以上になりました。
卒業した側と、雇う側。両方の立場から書きます。
いい話だけにするつもりはありません。マイナスに働いた場面もあったので、それも書きます。
まず、制度としての事実
感情の話に入る前に、動かない事実を確認します。
学歴とは、どの学校をいつ卒業したかという事実の記録です。 そして通信制課程を修了して得られるのは、全日制と同じ「高等学校卒業」の資格です。
| 全日制 | 通信制 | |
|---|---|---|
| 得られる資格 | 高等学校卒業 | 同じ |
| 大学の受験資格 | あり | 同じ |
| 専門学校の受験資格 | あり | 同じ |
| 卒業に必要な単位数 | 74単位以上 | 同じ |
「通信制卒」という別の資格があるわけではありません。課程が違うだけで、出口の資格は同一です。
ここは思い込みが生まれやすい部分なので、最初に押さえておいてください。制度の中身については通信制高校とは?にまとめています。
履歴書には、どう書けばいいのか
実務的な質問なので、独立させて答えます。
学校名を正式名称で書けば足ります。 課程名をわざわざ付け加える義務はありません。
在籍年数が違うと聞かれることはあります。それについては後述します。
正直に書きます。マイナスに働いた場面はありました
ここが、この記事でいちばん誠実に書きたい部分です。
「通信制でも全然不利になりません」とは、私は書けません。
つまり、入口の選び方によって、通信制であることの重みは変わるということです。学校推薦を使えばほぼ関係なかったし、一般選考なら影響した可能性がある。
だから「不利か有利か」という問いには、一律の答えがありません。 ここを「大丈夫です」で片付ける記事は、あまり信用しないほうがいいと思います。
ただし、時代が変わっています
そのうえで、いまの状況も書いておきます。
「20年前の通信制卒がどう見られたか」と「いまの通信制卒がどう見られるか」は、別の話です。古い体験談を読むときは、ここを差し引いてください。私の体験談も含めてです。
採用する側になって、見えたこと
ここからは、雇う側の話です。
これまで雇ってきた学生は何十人にもなります。そのうち通信制に通う子が12人以上、定時制の子も含めればさらに増えます。
私の採用基準に「通信制だからマイナス」という項目は存在しません。
むしろ、平日の日中に働いてもらえるので助かっています。この話は通信制高校から就職はできる?に詳しく書きました。
採用側が実際に見ているもの
では何を見ているのか。私の場合はこうです。
| 見ていない | 見ている |
|---|---|
| 高校の課程 | 続けられるかどうか |
| 卒業までの年数 | 学ぼうとする姿勢 |
| 学校の知名度 | 一緒に働けそうか |
では何が分けていたのか。以前は本人の気持ちの差だと思っていましたが、同じ子が条件次第で変わるのを見てから、そうは考えなくなりました。周辺の条件のほうを通信制高校に向いてない人はいる?自己管理ではなく「4つの余白」で考えますに書いています。
20年経って、実際に損したこと
長期的にどうだったか。ここがこの記事の核心です。
思い当たる実害は、ひとつだけです。
ただし、これは通信制だからではなく、4年制を選んだから起きたことです。3年で卒業していれば起きませんでした。在籍年数の話は通信制高校は4年で卒業してもいいにまとめています。
通信制であること自体が原因の実害は、20年かけて思い当たりません。 これが正直なところです。
学歴の不安を埋める、現実的な方法
「それでも不安だ」という方に、実務的な話をします。
高校は「最終学歴」で終わらせなくていい、というのが要点です。
3番目は見落とされがちです。 通信制は時間の自由度が高いので、在学中から働くことができます。同学年より早く社会経験を積めるというのは、それ自体が資産になります。
「学歴フィルター」は実際にあるのか
はっきり聞かれることがあるので、正面から書きます。
新卒採用における学歴フィルターは、主に大学名を対象にした話です。 高校の課程がフィルターの基準になっているという話を、私は聞いたことがありません。
そのうえで、高卒で就職する場合は事情が少し違います。
私の場合は推薦を使ったので、通信制であることが選考の壁になった感覚はありませんでした。
大学に進学する場合は、そもそも高校の課程が選考に出てくる場面はほとんどありません。入試の結果で決まるからです。
つまり、「通信制だから門前払いされる」という構造は、私が知る範囲では存在しません。 心配の中身を具体的にすると、意外と輪郭がはっきりします。
転職するときは、どうなるか
これも書いておきます。
転職では、高校の学歴が問われる場面はさらに減ります。
理由は単純で、直近の職務経験のほうが情報量が多いからです。何年働いて、何ができて、何を任されたか。採用する側が知りたいのはそこです。
つまり、学歴の影響が最も大きいのは最初の1回だけということです。そのあとは実績に置き換わっていきます。
これは、いま進路で悩んでいる方にとって大事な視点だと思います。最初の1回の不利は、その後の積み重ねで上書きできます。
進学を考えている場合
大学進学についても触れておきます。
受験資格は同じです。ここに差はありません。
ただし、受験対策の環境には学校差があります。 通信制は日々の学習を自分で進める分、進路サポートの手厚さが学校によってかなり違います。
「通信制だから大学に行けない」ということはありません。ただ、学校選びの段階で進路サポートを見ておくかどうかで、後の負担は変わります。
先に書いた「最終学歴で終わらせなくていい」という話は、ここに直結します。大学に進めば、履歴書の最終学歴は大学のほうになります。 高校がどこだったかを見られる場面は、それだけで減ります。
割合で見ると、通信制課程の卒業生のうち大学等に進学しているのは28.6%(令和6年度間・文部科学省「学校基本調査」令和7年度)。全日制等の61.4%とは差がありますが、その差がどこから来ていて、学校選びで動かせるのはどの部分なのかは、通信制高校からの大学進学は難しいのかで数字を突き合わせています。
それでも気になる方へ
最後に、少し気持ちの話も書きます。
身構えている本人ほど、周りは何とも思っていない。 これが20年後の実感です。
学歴を気にする気持ちそのものについては「N高等学校は恥ずかしい?」と検索したあなたへにも書きました。
保護者の方へ
最後に、親御さん向けにも書いておきます。
進路相談を受けていて感じるのは、本人より保護者のほうが学歴を心配しているケースが多いということです。
それは自然なことだと思います。自分が育った時代の感覚があるからです。20年前と今では、通信制の位置づけがまったく違います。 ここを更新しないまま判断すると、選択肢を必要以上に狭めてしまいます。
心配のほとんどは、情報が足りないことから来ています。 進路実績や就職支援の体制は、資料や個別相談で確認できる事実です。不安のまま判断するより、確認したほうが早いと思います。
まとめ
通信制であること自体が学歴のハンデになる場面は、私の20年間ではほとんどありませんでした。 ただし「まったくゼロだった」とも言いません。両方書いておきます。
- 卒業資格は全日制とまったく同じです。大学の受験資格も同じです
- 履歴書は学校名を正式名称で書けば足ります。ただし年月は事実どおりに
- 正直に書くと、一般の面接では当時マイナスに働いた部分はあったと思います
- ただしいまは偏見が減っています。「通信制ね」で通じる時代になりました
- 私は採用する側ですが、通信制を理由に評価を下げたことはありません
- 見ているのは課程ではなく、続けられるかどうかです
- 20年経って、思い当たる実害はほぼありません(唯一は4年制による年齢のズレ)
- 不安は資格・進学・実務経験で埋められます
学歴の心配で進路を狭めるのは、もったいないと思います。高校は最終学歴で終わりではありません。
卒業後の進路については通信制高校から就職はできる?に、通信制の良い面と悪い面の総括は通信制高校のメリットとデメリットにまとめました。学校ごとの進路サポートは資料で確認できます。実際に取り寄せると何が届くのかはN高に資料請求してみたに書いています。
