「休学」という言葉が、家の中で出始めているのだと思います。
学校を長く休んでいる高校生本人か、その親御さんが「高校休学」と検索しているのだと思います。休学すれば一度落ち着けるのか、それとも留年や退学への一歩になってしまうのか。わからないまま決めるのは怖いものです。
この記事では、高校の休学について、認められる理由、休める期間、留年との関係、休学中のお金を、法令と各地の学則で確かめました。とくにお金の話では、見落とされやすい手続きが1つあります。就学支援金の「支給停止」の申出です。これを出さずに休学すると、休学中の月も支援を受けられる期間を使ってしまいます。
書いているのは、中学で不登校になり、通信制高校を卒業して、いまは店で学生を雇っている人間です。
高校の休学とは?欠席や退学とどう違うのか
高校の休学とは、校長の許可を受けて、学校に籍を置いたまま一定の期間学校を休む制度です。 学校教育法施行規則 第94条は「生徒が、休学又は退学をしようとするときは、校長の許可を受けなければならない。」と定めています。
似た言葉と並べると、違いがはっきりします。
| 欠席 | 休学 | 退学 | 転学(転校) | |
|---|---|---|---|---|
| 籍 | ある | ある | なくなる | 別の学校に移る |
| 手続き | 欠席の連絡 | 校長の許可(願い出・書類) | 校長の許可 | 移り先の許可 |
| 授業日の扱い | 欠席として数える | 休学期間として扱う | — | — |
| 戻るとき | そのまま登校 | 復学の手続きが要る | 入り直し(編入学) | — |
大事なのは、学校を休み続けていても、それだけでは休学にならないということです。休学は、願い出て、許可を受けて、はじめて始まります。
私自身が、ちょうどその例でした。
中学は義務教育なので、高校とは仕組みが違います。ただ、「行っていない」と「休学している」は、制度の上では別のものだということは、高校でも同じです。高校で欠席が続いている状態なら、休学するかどうかは、これから決められることです。
では、休学の手続きをしないまま、登校しない状態が続くとどうなるのか。大阪府の規則は、この状態について正面から書いています。
休学の手続きをしない生徒が登校しない場合、正当な理由がある場合に限り、二年間は、不登校の一事をもって退学させないものとする。
(大阪府立学校の管理運営に関する規則 第28条第3項/2026年10月1日確認)
同じ条文の次の項は、その2年を過ぎてもなお復学できないときは「退学させるものとする」と続きます。2年間は不登校だけを理由に退学にはしない、という生徒を守る書き方であると同時に、手続きをしていなくても、登校していない期間には区切りがあるということでもあります。ほかの自治体にこの規定がそのまま当てはまるわけではありませんが、「行っていないまま」でいる間も時間が止まっているわけではない、と考えておくほうが安全です。
高校を休学できる理由は?
多くの学則が認めているのは、「病気その他やむを得ない事由」で、3か月以上続けて出席できない場合です。 国の法令は「校長の許可」を求めるだけで、どんな理由なら認めるかは、各自治体の規則や学校の学則が決めています。
いくつか実際の条文を見てみます。
生徒が病気その他やむを得ない事由により3カ月以上引き続いて出席し難いときは、期間を定め、医師の診断書又は詳細な事由書を添え、保護者が連署して校長に休学を願い出ることができる。
(福岡市立高等学校学則 第16条第1項/2026年10月1日確認)
神奈川県立座間高校の学則も「傷病その他やむを得ない理由」とし、保護者が「医師の診断書等その理由を証明する書類」を添えて願い出る形です。都立高校の規程集に収められている東京都教育委員会(教育長)の通知(昭和63年)では、休学の理由を「心身の故障のため,3月以上休養を要すると認められるとき」「外国等に旅行のため,3月以上出席が困難と認められるとき」などと挙げています。
ここから読める共通点は3つです。
- 3か月以上という長さが条件になっていることが多い
- 病気・けがだけでなく、「その他やむを得ない理由」が認められる余地がある
- 診断書や理由を書いた書類を求められることが多い
「やむを得ない理由」に何が入るかは、学校が判断します。心身の不調、家庭の事情、出産など、実際の理由はさまざまです。自分の事情が当てはまるかどうかは、担任か教務の先生に聞くのが確実です。学校のほうから休養を命じたり、休学を命じたりする規定を置いている学則もあります。
休学できる期間は、何年までですか?
休学できる期間は、自治体や学校によって違います。 1回に認められる長さも、延長できる上限も、そろっていません。
| 決めているところ | 1回の期間 | 上限 | 期間が切れたら |
|---|---|---|---|
| 大阪府(府立学校の規則 第28条) | — | 引き続き2年 | 「退学させるものとする」 |
| 福岡市(市立高校の学則 第16条) | 3か月以上1年以内 | 通算3年(1年ずつ延長可) | — |
| 神奈川県立座間高校(学則 第25条) | 学年の終わりまで | 通じて2年 | — |
| 東京都(教育長の通知・昭和63年) | 3か月以上2年以内 | 当初から引き続き2年を超えない範囲で更新 | — |
(各規則・学則は2026年10月1日確認。東京都の通知は都立高校の規程集に収録されたもので、現在も同じ内容で運用されているかは確認できていません)
大阪府の規則は、はっきりこう書いています。
生徒が前項に規定する休学の期間を経過してもなお復学できないときは、退学させるものとする。
(大阪府立学校の管理運営に関する規則 第28条/2026年10月1日確認)
休学は、期限のない猶予ではありません。 上限を過ぎても戻れない場合に、退学や除籍になる規定を置いている自治体があります。休学を考えるときは、「いつまで休めるか」と同時に、「その期限が来たときに、何を選ぶか」を見ておく必要があります。
復学するときも、多くの学校で届け出と許可が要ります。座間高校の学則は、休学期間の満了前に復学するときも「復学願に医師の診断書等その事実を証する書類を添えて」提出するよう定めています。
休学したら、留年になりますか?
学年制の高校では、休学した年度の科目を履修と認めるかどうかが学校の規程で決まり、認められなければ、結果として同じ学年をやり直すことになります。単位制の高校では、学年が戻るのではなく、卒業の時期が後ろにずれます。
学年制の場合、たとえばある都立の定時制高校の規程には、次のような決まりがあります。
年度内の休学中の授業日数が、学校が定める所属学年の年間授業日数の3分の1以上の場合は、原則として、(中略)教科・科目の履修・修得の認定は行わない。
(都立総合工科高等学校(定時制課程)「管理運営規程及び校内規定」 p.10/2026年10月1日確認)
つまりこの学校では、1年のうち3分の1以上を休学すると、その年度の単位は付かない、という運用です。線の引き方は学校ごとに違い、これが全国の標準というわけではありません。ただ、休学中は授業を受けていないので、休学が長くなるほど、その年度の科目を履修と認めてもらうのは難しくなります。何か月までなら認められるのかは、在籍校の規程で確かめてください。単位や欠課の上限の仕組みについては、保健室登校と単位の関係を通知と法令から整理した記事で詳しく書きました。
もう1つ見落とされやすいのが、卒業に必要な在籍期間です。高校の卒業には3年以上の在籍が必要ですが、休学期間をそこに数えない学校があります。N高等学校の2027年度生徒募集要項にも「なお、休学期間中は在籍期間に含まれません。」と書かれています。休学すると、そのぶん卒業が後ろにずれる、と考えておくほうが安全です。
留年した場合に、同じ学校に残るか、転校するかを卒業時期とお金で比べた話は、高校の留年を人数とお金の面から整理した記事にまとめています。
休学中の学費と就学支援金は、どうなりますか?
授業料の扱いは学校によって違います。一方、就学支援金は「支給停止」を申し出ないと、休学中の月も支給期間を使ってしまいます。 ここは、FP2級を持っている立場から、とくに丁寧に書いておきたいところです。
授業料
都立高校は、規則で休学中の授業料を免除しています。
休学又は留学の場合の授業料は、その期間中免除する。ただし、休学し、又は留学した日(月の初日を除く。)の属する月分の授業料及び復学した日の属する月分の授業料は、この限りでない。
(東京都立学校の授業料等徴収条例施行規則 第2条第1項/2026年10月1日確認)
私立高校の休学中の授業料は、学校ごとの決まりです。休学中に何がかかり、何がかからないのかは、在籍校の学費の規程で確かめてください。
就学支援金:支給停止の申出
高等学校等就学支援金は、支給される期間に上限があります。全日制は通算36か月、定時制・通信制は48か月です。この期間は在学している月で数えるので、休学していても、籍がある月は数えられてしまいます。
それを止めるのが、支給停止の申出です。法律(高等学校等就学支援金の支給に関する法律 第8条)は、休学した場合に申し出れば支給を停止し、停止された月は期間の計算に入れないと定めています。文部科学省のQ&A(2026年10月1日確認)は、申し出なかった場合をこう説明しています。
仮に、就学支援金の支給停止の手続きをしなかった場合、就学支援金は当該期間中の支給額は0円として計算された上で、復学後の残りの支給期間は、休学した期間を差し引いた期間となります。
つまり、申し出なければ、支援金は1円も出ていないのに、休学した月の分だけ支給期間が減るということです。
文部科学省が学校向けに出している「事務処理要領」(新制度 第1版・令和8年4月/2026年10月1日確認)にも、同じことが書かれています。
生徒の休学に際して、受給権者が支給停止の申出を行っていない場合は、休学期間分も、支給要件における在学期間(上限 36 月)に算入される。
同じ要領は、学校に対して「生徒が申出を失念し、不利益を被ることがないよう学校設置者においても休学手続きの際に併せて就学支援金の支給停止手続について案内すること」と求めています。国が「忘れる人がいる」前提で注意を促している手続きだということです。
もう1つ、関連する注意があります。支給期間を使い切った人のための「学び直し支援金」は、いったん中途退学して学び直す人のための制度です。東京都の説明ページ(2026年3月31日更新/2026年10月1日確認)には、「同一の学校で留学・休学・留年等により就学支援金の支給期間が満了した場合は対象となりません」とあります。休学で期間を使ってしまうと、後から埋める制度がない場合があるということです。
休学のほかに、どんな道がありますか?
休学・転校・退学の3つがあり、戻れる場所がそれぞれ違います。
| 道 | 籍 | 戻れる場所 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 休学 | 今の学校に残る | 今の学校に復学 | 体調が戻れば、今の学校に戻りたい |
| 転校(転学) | 別の学校へ移る | — | 通い方そのものを変えたい |
| 退学 | なくなる | 入り直し(編入学) | — |
転校については、学校教育法施行規則 第92条第2項が「全日制の課程、定時制の課程及び通信制の課程相互の間の転学又は転籍については、修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。休学中でも転入学を受け付けている学校があります。 たとえばN高等学校の募集要項は、転入学の対象を「現在、高等学校に在学中で、転入学を希望する者(休学中も含む)」としています。
なお、休学中でも高卒認定試験は受けられます。文部科学省のQ&Aが「休学中でも受験可能です」としています。試験の難しさと通信制高校との違いは、高卒認定試験の難易度を文部科学省の実施結果で確かめた記事にまとめました。
休学は「立ち止まる」選択で、転校は「通い方を変える」選択です。どちらが合うかは、今の学校に戻りたいかどうかで分かれると思います。戻りたい気持ちがあるなら休学は意味のある時間になりますし、戻る場所が今の学校ではないと感じているなら、休学期間を使って移り先を探す、という順番もあります。
移る場合の条件と手続きは引っ越し以外の理由で高校を移るときの条件を並べた記事に、通信制への転入の学年別の期限は通信制高校への転入はいつまでにできるかにまとめています。辞めるかどうかで迷っているなら、高校を辞めたいと思ったときの選択肢を整理した記事が先です。
休学は、めずらしいことではありませんでした
私が通っていたのは、N高ではなく20年ほど前の別の通信制高校ですが、そこでは休学はめずらしいことではありませんでした。
休学の理由も、休学している間の過ごし方も、人によって違います。休学中は学校に行かないというだけで、何もしない期間と決まっているわけではありません。体を休める人もいれば、働いてお金をためる人も、次の学校を探す人もいます。
履歴書に「休学」とあったら、不利になりますか?
進学の資格の面では、不利になりません。休学しても、卒業すれば高校卒業であることに変わりはありません。
気になるのは、履歴書の見え方だと思います。採用する側として、正直に書いておきます。
留年について書いた記事で、私は「あえて理由を聞くことはしない。気にはする。ただ、それが理由で採用・不採用を決めることはない」と書きました。休学も同じです。これは私の店のアルバイト採用の話で、どこでも同じとは言えません。ただ、少なくとも休学の2文字だけで道が閉じるわけではない、というのが雇う側から見えていることです。
高校生の不登校が何人いて、その後どうなっているのかという全体像は、高校生の不登校を国の調査で整理した記事にまとめました。
休学を決める前に、学校に確かめることは?
休学は、手続きの順番と期限で結果が変わります。決める前に数字と書類を集めるのがいちばん確実です。
親が持っておくと楽になるもの
休学は、止まるための手続きです。進路を閉じる手続きではありません。期限と書類さえ押さえれば、戻る道も、別の道も残ります。
親にしかしにくい役割があるとすれば、期限とお金の管理だと思います。休学の上限がいつか、支給停止の申出は出したか、復学や転校の判断をいつまでにするか。本人が体調を立て直すことに集中できるように、事務のほうを持っておく形です。
そのうえで、移り先の候補を手元に置いておくのは、早すぎることではありません。休学期間の後半になってから探し始めると、期限に追われて選ぶことになります。資料を取り寄せる段階なら、まだ何も決める必要はありません。私がN高等学校の資料を実際に請求して届くまでの日数と中身を記録した記事もあるので、何が届くのかを先に見ておくこともできます。
まとめ
休学は、期限つきで籍を残して休む制度です。期限・単位・お金の3つを先に確かめておけば、戻る道も移る道も残せます。
- 高校の休学は、校長の許可を得て在籍したまま休む制度で、欠席を続けることとは違います
- 認められる理由は学則しだいで、多くは「病気その他やむを得ない事由で3か月以上出席できない」ことです
- 期間の上限は自治体・学校で違い(大阪府は引き続き2年、福岡市は通算3年など)、切れると退学・除籍になる規定があります
- 学年制では、休学が長いとその年度の単位が認められず、学年をやり直すことになります(線引きは学校の規程しだい)。休学期間を在籍期間に数えない学校もあります
- 就学支援金は、支給停止を申し出ないと休学中の月も期間を使います。申出は学校を通じて、休学が決まったら早めに
- 休学中に転入学を受け付けている学校もあります。戻りたいなら休学、通い方を変えたいなら転校が目安です