「このままだと留年です」
担任からそう言われた高校生か、そう聞かされた親御さんが、「高校留年」と検索しているのだと思います。あるいは、欠席が続いていて、あと何日休んだら危ないのかを数えている方かもしれません。
この記事では、まず留年がどれくらい起きているのかを国のデータで確かめます。そのうえで、留年が決まりそうなときに同じ学校に残るのか、単位を持って転校するのかを、卒業の時期とお金の面から比べます。
書いているのは、通信制高校を卒業し、いまは店で学生を雇っている人間です。私自身、通信制で単位を何個も落としています。4年制にしていたので取り直せましたが、全日制で留年を告げられた経験はありません。その立場の違いは先に書いておきます。
高校で留年する人は、何人に1人ですか?
令和6年度に進級か卒業が認められなかった高校生は8,741人で、在籍者の0.3%でした。およそ300人に1人です。
出典は文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」の「課程・学科・学年別原級留置者数」(2026年9月24日確認)です。原級留置とは、この調査の定義では「令和7年3月末現在で進級又は卒業が認められなかった者」のことで、いわゆる留年を指します。前年度(令和5年度)は8,990人で、割合は同じ0.3%でした。
課程によって、割合はかなり違います。
| 課程・学科 | 人数 | 在籍者に占める割合 |
|---|---|---|
| 全日制 普通科 | 3,108人 | 0.1% |
| 全日制 専門学科 | 1,196人 | 0.2% |
| 全日制 総合学科 | 401人 | 0.3% |
| 定時制 | 1,096人 | 1.5% |
| 通信制 | 2,940人 | 1.0% |
| 合計 | 8,741人 | 0.3% |
学年で区分している課程では、1年生が2,643人でもっとも多く、2年生1,776人、3年生452人と、学年が上がるほど減ります。全日制の普通科に限ると、1年生1,598人(0.2%)、2年生1,091人(0.2%)、3年生246人です。学年による区分のない単位制の在籍者は、学年別ではなく別枠で3,835人と集計されていて、実はこの枠がいちばん大きな数です。
この数字から読めることは3つあります。
1つめは、全日制で留年する人は少数派だということです。普通科なら1,000人に1人程度です。だから留年を告げられると「自分だけ」と感じやすいのだと思います。
2つめは、表に出てこない人が多いということです。同じ調査では、不登校の高校生67,782人のうち、原級留置になった人が2,963人(4.4%)だったのに対し、中途退学に至った人は10,566人(15.6%)でした。学校に行きづらくなった高校生では、留年よりも中途退学のほうが3倍以上多いということです。留年の数字だけを見て「めったに起きないこと」と考えると、この部分が見えなくなります。
3つめは、定時制1.5%・通信制1.0%と、全日制より割合が高いことです。通信制の2,940人のうち2,626人は、学年による区分のない単位制の在籍者でした。この記事は転校を選択肢として並べますが、通信制に移れば留年と無縁になる、という話ではありません。 単位を落とせば、その分だけ卒業は後ろにずれます。単位制でそれがどう起きるかは、通信制高校に留年はあるかを書いた記事にまとめています。
何をすると留年になるのですか?
留年の基準は、国の法令ではなく、それぞれの学校の規則で決まります。 法令が定めているのは、学年の修了や卒業を「平素の成績を評価して」認める、という枠組みまでです(学校教育法施行規則 第57条・第104条)。
多くの学校で基準になっているのは、次の3つです。
| よくある基準 | 中身 | 決めているところ |
|---|---|---|
| 修得単位の不足 | その学年で取るべき単位が、決められた数に届かない | 学校の教務規程など |
| 欠課時数の超過 | 科目ごとの欠席した授業時間が上限を超え、その科目が履修と認められない | 学校の教務規程など(「3分の1」は慣例) |
| 成績の不振 | 評定1(いわゆる赤点)で、その科目の単位が認められない | 学校の評価の規程など |
「何日休んだら留年か」「遅刻何回で欠課1回か」という質問には、国として決まった答えがありません。 在籍校の教務規程を見るか、担任か教務の先生に聞くのが唯一の確かめ方です。欠課時数の上限が法律ではなく慣例だという話は、保健室登校と単位の関係を通知と法令から整理した記事で、文部科学省の通知を引いて詳しく書きました。
「1科目でも落としたら留年」は、国の考え方ではありません
高等学校学習指導要領の総則は、学年の修了の認定を「弾力的に行うよう配慮するものとする」としています。その解説には、こう書かれています。
学年制を厳格に運用すると,当該学年で修得すべきとされる科目が未修得の場合には,たとえそれが1科目でも上級学年への進級が認められず,原級留置とされてしまう。しかし,中途退学の要因の一つが原級留置に関わるものであるとの指摘もあり,あまりに厳格すぎる学年制の運用は,(中略)必ずしも適当とはいえない。
(文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総則編」p.141/2026年9月24日確認)
同じ解説は、具体的なやり方として「未修得単位が一定範囲内であれば,後日,補充指導や追試験によって未修得の各教科・科目を修得することを条件として,次の学年に進級させる」ことを挙げています。
つまり、赤点が1つついたことと、留年が決まったことは、同じではありません。 追試や補習で取り戻せる仕組みを持っている学校は多いはずです。ただしこれは国が「配慮」を求めているもので、どこまで認めるかは学校が決めます。
留年が決まりそうなとき、選べる道はいくつありますか?
大きく分けて4つです。
| 道 | 卒業の時期 | いまの学校との関係 |
|---|---|---|
| ① 留年して同じ学校に残る | 1年遅れる | 続く(学年が1つ下の人たちと同じ教室になる) |
| ② 通信制へ転校する | 単位の照合しだい。同じ時期を目指せる場合がある | 籍を移す |
| ③ 定時制へ転校する | 単位の照合しだい | 籍を移す |
| ④ 退学して高卒認定を目指す | 高校卒業にはならない(合格すれば大学などの受験資格は得られる) | 籍が切れる |
②と③は、転学(転入学)という形なら、籍が一日も切れません。 全日制・定時制・通信制の間で移る場合について、学校教育法施行規則 第92条2項は「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。単位制の学校に移る場合は、前の学校で取った単位を、卒業に必要な単位数に加えることができます(単位制高等学校教育規程 第7条)。
④の高卒認定は、この記事では深く扱いません。高校卒業の資格とは別のものなので、中身は不登校から高校受験はできるかをまとめた記事の選択肢④を見てください。
退学については、高校を辞めたいと思ったときの選択肢を整理した記事に詳しく書きました。ここで1つだけ書いておくと、どの道を選ぶにしても、退学届は最後です。 先に退学すると、②③は転入学ではなく編入学になり、受け入れの時期が限られることがあります。
「残る」と「転校」を、卒業時期とお金で比べると?
①と②は、いちばん迷われる組み合わせだと思います。高2の終わりに留年が決まった、という場面で並べます。
| 比べるところ | ① 留年して同じ学校に残る | ② 通信制へ転校する |
|---|---|---|
| 卒業の時期 | 1年遅れる | 単位の照合しだい。同じ時期を目指せる場合がある |
| 取った単位 | 学校の規則による(その学年をやり直す) | 認められた分は持っていける |
| 就学支援金の残り | 全日制の36か月のうち、3年目までで使い切る | 通信制の上限48か月から換算して残りが出る |
| 教室・人間関係 | 1学年下の人たちと同じ教室 | 新しい学校で、年齢はもともとばらばら |
| 大学受験 | 在籍校の進路指導をそのまま受けられる(推薦の条件は学校に確認) | 学校によって進路指導の厚みが違う |
| 通い方 | いままでと同じ | 登校の日数が大きく変わる |
就学支援金は、全日制なら36か月で切れます
お金の面で、いちばん見落とされやすいのがここです。FP2級の知識で、支給の期間を数えてみます。
高等学校等就学支援金は、授業料への国の支援です。2026年4月の制度改正で、所得による制限は撤廃されています。ただし支給される期間には上限があります。文部科学省のQ&A(2026年9月24日確認)によると、支給されるのは原則として全日制で36か月まで、定時制・通信制で48か月までです。36か月は「高等学校の標準的な修業年限」に合わせた長さだと説明されています。
全日制で留年して4年在学すると、4年目は就学支援金の対象外になります。 在学期間が通算36か月を超えるからです。支援がないぶん、公立全日制なら、就学支援金があればまかなわれていた授業料の年118,800円、私立なら学校の授業料がそのまま家計の負担になります。
さらに、東京都の「高等学校等学び直し支援金とは」(2026年3月31日更新/2026年9月24日確認)には、次の一文があります。
同一の学校で留学・休学・留年等により就学支援金の支給期間が満了した場合は対象となりません。
36か月を超えた人を支える「学び直し支援金」は、いったん中途退学してから学び直す人のための制度で、同じ学校で留年した人は対象になりません。自治体が独自に補助をしている場合は別なので、お住まいの都道府県の制度も確かめてください。
休学する場合も、同じ36か月の枠が関わります。休学中は「支給停止」を申し出ないと、支援金が出ていない月まで期間として数えられてしまいます。この手続きは高校の休学を学則と法令で整理した記事に詳しく書きました。
通信制へ移ると、残りの月数はこう数えます
全日制から通信制に移る場合の残りの月数は、同じQ&Aに計算例があります。
全日制で20月在学し、その後通信制に転学した場合は、48月-20月×4/3(端数切捨て)という計算式になり、通信制では22月分が支給されることとなります。
同じ式で、高2の終わり(全日制に24か月在学)に移った場合を計算すると、48−24×4/3=48−32=16か月です。通信制で残りを1年で取り終えれば、支援の範囲に収まります。2年かかると、最後の8か月ぶんは対象外になります。
移り先で何単位が認められ、あと何年かかりそうか。それが、お金の面でも卒業の時期の面でも、いちばん効く数字です。転校の手続きとお金の全体像は引っ越し以外の理由で高校を移るときの条件を並べた記事に、通信制へ移るときの学年別の期限は通信制高校への転入はいつまでにできるかにまとめてあります。
留年すると、就職や進学で不利になりますか?
進学の資格の面では、不利になりません。1年遅れて卒業しても、高校卒業であることは変わらず、大学や専門学校の受験資格も同じです。
気にされるのは、履歴書の卒業年が1年ずれることだと思います。
留年とは形が違いますが、私も卒業が1年後ろにずれた側です。通信制で、3年でも卒業できたところを、2年生のときに4年かけることに決めました。そのときのことを書いておきます。
全日制での留年は、自分で選んだ4年ではありません。同じ話として読んでほしいわけではないのです。ただ、1年ずれることへの不安のうち、「履歴書で聞かれるかも」「周りより遅れるのが恥ずかしい」の2つは、私も持っていました。 そして実際、年が違うことを「どうして」と聞かれることはよくありました。そのことは4年かけて卒業した話を書いた記事に書いています。一方で履歴書のほうについては、いまは雇う側から答えられます。
「まったく気にしません」と書けば、読んでいる方は楽になるかもしれません。でも、それは本当ではありません。気にはなる。でも、それで決めることはない。 これが、採用する側としての私の正直な答えです。
ただし、これは私の店のアルバイト採用の話です。新卒の一括採用のように、書類で大量の応募を絞る場面では、また違う見方をされることもありえます。どこでも同じとは言えません。 通信制を出た場合の履歴書の扱いについては、通信制高校の学歴は不利になるかを書いた記事にまとめています。
決める前に、学校に何を確かめればいいですか?
留年が「決まりそう」の段階なら、まだ動ける余地があります。数字を集めてから決めるのがいちばん確実です。
いつ動けばいいのか
進級の判定は、多くの学校で学年末に行われます。ただ、判定の日を待ってから動く必要はありません。 欠課時数も成績も、2学期が終わるころにはかなり見えています。その時点で「残った3学期で取り戻せるか」を担任や教務の先生と数字で確かめておくと、判定が出たときに慌てずに済みます。
転校を候補に入れるなら、なおさらです。移り先の受付の時期は学校ごとに違い、年度の途中で受け入れる学校もあれば、区切りの時期に限る学校もあります。判定のあとで探し始めると、選べる学校が少なくなることがあります。
最後の「移り先に確かめること」は、転校を決めていなくても聞けます。留年して残るか、移るかを比べるための材料として、候補の学校の資料を取り寄せておくのは早すぎません。
留年を告げられた親御さんへ
子どもに「どうして」を聞くより先に、学校から数字をもらってください。 何の科目が何単位足りないのか、追試はあるのか、判定はいつか。親が数字を持っていると、子どもを問い詰めずに済みます。
子どものほうが先に気づいていて、言い出せずにいた、ということもあると思います。そこに「なぜ言わなかったのか」を重ねると、次に何かあったときにも言いにくくなります。
そのうえで、「残る」と「移る」を並べて見られる状態を作っておくと、家族で話すときに選択肢が1つだけになりません。通信制高校のパンフレットを請求することは、転校を決めることではありません。私が実際にN高等学校の資料を請求して届くまでの日数と中身を記録した記事があるので、どんなものが届くのかを先に見てから決めても構いません。
まとめ
残るか移るかに正解はありません。ただ、どちらを選ぶにしても、数字を見てから決めたほうが後悔が少ないと思います。
- 高校で留年した人は令和6年度で8,741人(0.3%)。全日制の普通科なら0.1%、学年では1年生がいちばん多い
- 留年の基準は学校ごとの規則。国は「1科目でも落としたら一律に留年」を適当ではないとし、追試や補充指導での進級を例に挙げています
- 同じ学校に残ると、卒業は1年遅れ、全日制では4年目の授業料が就学支援金の対象外になります。同じ学校での留年は学び直し支援金の対象にもなりません(東京都の例)
- 通信制・定時制へ転校すると、修得した単位に応じて転入できます。同じ時期の卒業を目指せるかは、移り先の照合しだいです
- 退学届は最後。決める前に、進級判定の時期・不足単位・追試の有無・いまの修得単位数を確かめてください