留年するくらいなら、その前に辞めておきたい。でも、通信制に移ったら損をするんじゃないか。

「高校辞めたい」で調べている人の相談を読むと、多くがこの2つで止まっています。気持ちが決まらないからではなく、この2つに答えが出ていないから動けない、という形です。

この記事は、その2つに正面から答えるために書きました。辞めたほうがいいとも、続けたほうがいいとも言いません。決めるのはあなたです。ただ、「辞めたい」と「辞める」のあいだには、何段階か選択肢があるということだけは、知ったうえで決めてもらえたらと思っています。

  • 高校を辞める人が1年で何人いて、どんな理由が多いのか(国の統計)
  • 単位を落としたとき、単位制の通信制では何が起きるのか
  • 通信制を出た私がその後どうなったか(=「損をするのか」への答え)

書いているのは、通信制高校を4年かけて卒業した人間です。N高グループではなく、20年ほど前の別の学校でした。ですので制度や現在の数字の部分は、公的な統計と公式の要項で埋めていきます。

「甘え」かどうかは、この記事では決めません

先にこれを書いておきます。あなたが甘えているかどうかを、私は判定しません。 その材料を持っていないからです。

この検索をする人の相談を読んでいると、自分から「甘えだけど」と書き添えている人が多くいます。裁かれる前に、自分で裁いておこうとしている書き方です。ただ、そこまで考えてから検索している人に、私が上から答えを出す理由はありません。

かわりに、ひとつだけ区別しておきたいことがあります。

「辞めたい」は気持ちで、「辞める」は手続きです。

気持ちのほうは、日によって強くなったり弱くなったりします。朝と夜でも違います。それは変なことではありません。いっぽう手続きのほうは、書類が受理されると籍が切れます。そして切れた籍は、あとから元には戻せません。

この2つが同じ速さで進む必要はありません。 気持ちが限界に近くても、手続きは今日やらなくていい。そして手続きを止めているあいだに確かめられることが、実はけっこうあります。この記事は、その確かめられることを並べたものだと思って読んでください。

学校に行けない日が続いていること自体をどう受け止めるかは、私が答えられる範囲を超えています。原因を分析するのも、医療や心理の専門の領域です。ここでは、進路の選択肢と手続きの話に絞ります。

高校を辞める人は、1年でどれくらいいますか?

令和6年度に高校を中途退学した人は44,571人で、在籍者に占める割合は1.4%でした。 そして辞めた理由でもっとも多いのは「進路変更」の18,505人(41.5%)です。

出典は文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和7年10月29日公表/令和8年1月16日一部修正・2026年9月18日確認)です。前年度は46,238人・1.5%だったので、人数も割合も少し減りました。

理由の内訳は、こうなっています。中途退学者1人につき、主たる理由をひとつだけ選んで集計されたものです。

事由人数割合
進路変更(合計)18,505人41.5%
うち 別の高校への入学を希望10,621人23.8%
うち 就職を希望3,623人8.1%
うち 高卒程度認定試験の受験を希望1,256人2.8%
うち 専修・各種学校への入学を希望519人1.2%
うち その他2,486人5.6%
学校生活・学業不適応15,618人35.0%
学業不振2,814人6.3%
病気・けが・死亡1,799人4.0%
問題行動等1,506人3.4%
家庭の事情1,306人2.9%
経済的理由549人1.2%
その他の理由2,474人5.6%

この表でいちばん見てほしいのは、最多の理由である「進路変更」の中身の一番が「別の高校への入学を希望」(10,621人)だということです。

辞めた人のおよそ4人に1人は、別の高校に移ることを希望して辞めています。 「辞める」と「行き先がなくなる」は、統計の上ではイコールではありません。

学年で見ると、1年生がいちばん多くなります

学年で区分している課程では、1年生が14,231人でもっとも多く、2年生が9,794人、3年生が3,298人と、学年が上がるにつれて減っていきます。1〜3年生の在籍者数はそれぞれ80万人台で大きくは違わないので、これは単純に「1年目に決断する人が多い」という形です。

なお、学年で区分しない単位制の課程は学年別には数えられておらず、別枠で17,171人が計上されています。上の学年別の数字は、その分を含んでいません。

入学して数か月で「辞めたい」と思った人は、自分だけが早すぎると感じているかもしれません。数字の上では、1年生がいちばん多いというのが実際のところです。

いま学校に行けていない人へ、もうひとつの数字

同じ調査には、高等学校で不登校として計上された生徒が67,782人という数字があります。そのうち中途退学に至った人は10,566人(15.6%)、原級留置になった人は2,963人(4.4%)でした(調査結果の概要・2026年9月18日確認)。

行けていない期間があること自体は、退学や留年に直結していません。 中途退学にも原級留置にも至らなかった人が、8割にあたります。

「楽しくない」「馴染めない」で辞めたい場合

この理由は、軽いものではありません。 さきほどの表で2番目に大きかった「学校生活・学業不適応」は15,618人(35.0%)で、辞めた人の3人に1人にあたります。学校になじめない、学校生活が合わない、という事情はこの区分に含まれます。

それでも本人が言い出しにくいのは、「授業がつらい」や「体調が悪い」と違って、外から見ると理由らしく見えないからだと思います。提出物がだるい、気が合う人がいない、なんとなく毎日きつい——言葉にすると軽く聞こえてしまう。けれど、集計の上ではこれが最大級の塊です。

ここで、原因の話はしません。なぜ馴染めなかったのかを分析して、あなたの性格や適性の診断にするようなことはしないということです。私にその資格はありませんし、そこを掘っても進路は決まりません。

かわりに、判断の軸について私の考えを書きます。

「楽しいかどうか」を判断の軸にすると、決められなくなります。 移った先が楽しくなる保証はありませんし、残ったら楽しくなるという保証もないからです。どちらに転んでも、根拠のない予想で決めることになります。

私が現実的だと思う軸は、「卒業まで持ちそうか」のほうです。

  • いまのペースで、あと何か月持ちそうか
  • 何が変われば持ちそうか(登校の回数・時間帯・人と会う量・課題の締切)
  • その変更は、いまの学校の中でできるのか、できないのか

3つめがこの記事の分かれ目です。 いまの学校の中で変えられるなら、辞める必要はありません。変えられない部分こそが、学校を移ることで変わる部分です。

通信制高校は、人と会う回数そのものが少なく設計されています。そこが合う人と、物足りなく感じる人の両方がいます。 「移れば友達ができる」とは書きませんし、「どこへ行っても同じ」とも書きません。条件が変わるだけで、結果は人によります。

「留年するくらいなら辞める」の前に——単位制では、学年が戻るのではなく卒業が後ろにずれます

学年ごとに進級を判定する学校で単位を落とすと、同じ学年をもう一度やり直すことになります。単位制をとる通信制高校では、そうはなりません。 落とした分は積み残しとして残り、卒業する時期が後ろにずれるという形になります。

全日制で留年した場合に、同じ学校に残ると4年目の授業料がどうなるのか、転校すると就学支援金があと何か月残るのかは、高校の留年を人数とお金の面から整理した記事で計算しています。

単位制とは、学年ごとに進級を判定するのではなく、修得した単位を積み上げて卒業する仕組みです。(文部科学省「単位制高等学校について」・2026年9月19日確認)進み具合を測るものさしが学年ではなく単位数なので、「その学年をやり直す」という概念がそもそも置かれていません。

学年ごとに進級を判定する学校単位制をとる通信制高校
単位を落とすと学年の修了が認められず、同じ学年をやり直す落とした分が積み残しとして残る
学年は戻る戻る仕組みがそもそもない
卒業は1年遅れる修得が終わった時点。結果として後ろにずれる
取れている単位は学年をやり直すぶん、扱いが変わる場合がある積み上がったまま残る

ここが、「留年するくらいなら、その前に辞めておきたい」と考えている人にとって、いちばん実際的な分かれ目だと思います。留年を避けるための選択肢が、退学だけではないということです。

私が通っていた学校も単位制でした。当時の仕組みを、私は次のように理解していました。

「4年生に切り替える」という言い方のとおりです。学年が戻るのではなく、ゴールの位置が1年ぶん後ろに動く。

ただ、ここは安請け合いしたくないところなので、前半も一緒に読んでほしいと思っています。私のところでは、3年で出たいなら1年目の取り方でほぼ決まりました。 落としても後ろにずらせるという話は、「落としても平気」という意味ではありません。ずらせる幅にも、学校ごとに上限があります。

私は結局、4年かけて卒業しました。その判断でよかったと思っていますが、良かったことだけではありませんでした。詳しくは通信制高校は4年で卒業してもいいに、実際に受けた不都合も含めて書いています。単位を落としたあと実務的に何が起きるかは通信制高校に留年はある?のほうが詳しいです。

辞めなくても移れます。戻せないのは「退学届の順番」だけです

いまの高校に籍を置いたまま、別の高校へ移ることができます。 これを転入学と呼びます。辞めてから入り直すのが編入学です。

そして、この2つは自分で選べるものではありません。いま籍があるかどうかで、自動的に決まります。 つまり——

  1. いま在籍している

    この段階なら、転入学という選択肢がある

  2. 退学届を出す

    受理された時点で、籍が切れる

  3. 辞めたあと

    選べるのは編入学だけになる

戻せないのは、この順番です。 辞めるかどうかを決めるより先に、「いまの学校に籍を置いたまま移れるか」だけ確認しておけば、選択肢は消えません。確認するだけなら、辞める決断をしたことにはなりません。

転入の受付がいつまでなのか、前の高校で取った単位がどこまで引き継げるのかは、学年によっても学校によっても変わります。そこは通信制高校への転入はいつまでにできる?に、公式の募集要項と法令の条文をもとに整理しました。この記事では「選択肢がある」というところまでにしておきます。

すでに辞めたあとの人、あるいは辞める以外の道がもう無い状況の人もいると思います。その場合に何が残っているかは高校中退は人生終わり?のほうに書きました。この記事は、まだ籍がある人に向けて書いています。

「通信制に行くと損をしますか?」——20年前に通信制を出た私の答え

私の実感としては、損をしたと感じたことはありません。 ただしこれは20年ほど前の、N高グループではない別の学校の話です。同じことが起きると約束はできないので、そこは先に書いておきます。

まず、当時の私が学校から受け取っていたものを書きます。

推薦をもらえる基準が何だったのかは、私にははっきり分かりません。推測では、学校の成績と態度あたりだったのだろうと思っています。断定できる話ではないので、推測として書いておきます。

ここで誤解されたくないので、はっきり書きます。これは「通信制に行けば大企業に入れる」という話ではありません。

私が言えるのは、入口が閉じてはいなかったということだけです。しかも私自身、当時それを恵まれた環境だとは思っていませんでした。つまり学校側が用意してくれていたものであって、私が選び取ったものではないということです。

裏を返すと、学校が用意していなければ、同じことは起きません。

学校に届く求人の数も、進路の相談を受けられる体制も、学校ごとに差があります。制度として通信制が排除されているわけではないのですが、そこは制度ではなく学校選びの問題です。高卒就職の日程や、学校を通した応募がどう進むのかは通信制高校から就職はできる?にまとめました。

「損」を気にしていたのは、むしろ在学中でした

進路より先に、私が気にしていたのは周りの目のほうでした。

唯一はっきり実害として残ったのは、4年かけたことで同学年の人と卒業の年がずれて、その理由を聞かれる場面があったことです。これは4年で卒業した記事のほうに書きました。

気にしていたことと、実際に困ったことは、けっこう違いました。 これは私ひとりの例なので一般化はできませんが、判断材料のひとつとして書いておきます。

通信制を出た子たちは、その後どうしているか

私だけの話では一例にしかならないので、雇う側として見てきた範囲も書きます。

店で働いてくれた通信制の生徒は、これまでに12人を超えました。仕事の力そのものに、通信制かどうかで差があると感じたことはありません。

卒業していった子たちの、その後です。

個人が特定されない形にするため、これ以上は書きません。人数の話に広げることもしません。2人の例であって、「通信制を出るとこうなる」という話ではないということです。

ただ、この2人に共通しているのは、高校のあとに行き先があったということです。営業職も専門学校も、通信制の卒業という履歴が理由でふさがれてはいませんでした。

それでも、通信制が合わないことはあります

移れば解決する、とは書きません。 通信制には通信制のしんどさがあって、そこで止まる人もいます。

それから、もうひとつ。いま通っている高校が悪い学校だ、という前提でこの記事を書いてはいません。

合う・合わないは、学校の良し悪しとは別のものです。同じ学校で問題なく過ごしている人もいるはずですし、あなたが合わなかったことはその人たちを否定しません。逆も同じです。どちらかを悪者にしないと動けない、ということはありません。

学校ごとの違いは、資料を何校分か並べると見えやすくなります。私が実際に取り寄せたときに何が届いたのか、どれくらいで届いたのかはN高に資料請求してみた記録に書きました。

決める前に、確かめられること

辞めるかどうかを決める前に、確認しておけることがいくつかあります。 どれも、辞める決断をしたことにはなりません。

4番の休学は、期間の上限や、就学支援金の「支給停止」の申出など、決める前に知っておきたいことが多い制度です。高校の休学を学則と法令で整理した記事に分けて書きました。

8番は、さきほど書いた「学校が用意していなければ同じことは起きない」に対応する質問です。パンフレットの雰囲気ではなく、去年その学校を出た人がどこへ行ったかを聞いてください。

いま「教室には入れないけれど、保健室なら行ける」という状態で、2番の単位が心配になっている場合は、確かめる項目がもう少し増えます。科目ごとの欠課時数の上限と、保健室や別室から受けられる遠隔授業があるかどうかです。こちらは保健室登校と単位の関係を、通知と法令から整理した記事に分けて書きました。

そして、これは私からのお願いです。このリストを全部埋めてから決めなければならない、とは思わないでください。 1番だけでも確認しておけば、選択肢は消えません。あとは順番に埋めていけば足ります。

1番は、担任に言わずに確かめられます

担任に切り出すこと自体が、決断の宣言のように感じられる人がいます。 親にもまだ言えていないなら、なおさらです。誰にも打ち明けずにできるほうから書いておきます。

  • 募集要項を自分で読む。 転入をいつまで受け付けるかは、各校が公開している募集要項の「転入学」の項にあります。読むのに誰の許可も要りません(学校ごとの記載は転入はいつまでにできる?に引きました)
  • 資料を取り寄せる。 N高グループの請求フォームは「入学をご検討の方との関係」で本人を選べます。無料で、送信直後のメールから電子版が読めるので、紙が家に届く前に中身だけ見ることもできます(2026年8月8日確認・届いたものの記録)
  • 候補の学校に直接聞く。 受付の時期は、いまの学校を通さずに聞けます。ただし単位の引き継ぎだけは、在籍校が作る書類が届いたあとでないと判断されません
  • 校内で聞くとしても、相手は担任でなくてかまいません。 進路指導の先生や、スクールカウンセラー・保健室の窓口がある学校ならそちらでも確認できます

どれも、辞めると決めたことにはなりません。確かめるところまでは、ひとりで進められます。

親に言えない・反対されそうなとき

「辞めたい」から切り出すと、多くの場合、話は辞めるか辞めないかの一本になります。 先に選択肢のほうを見せると、別の話になります。

順番としては、こうなると思います。

  1. いま困っていることを、ひとつだけ伝える

    全部を説明しようとしなくて大丈夫です

  2. 辞める話ではないと伝える

    「続け方を変えられないか調べている」という言い方になります

  3. 具体物を1つ置く

    資料や募集要項など、目で見られるもの

親が反対するとき、その中身が「反対」ではなく「知らない」であることは、わりとあります。通信制という言葉から思い浮かべているものが、親の世代と今とでかなり違うからです。私が通っていたころと今とでは、実際に別物と言っていいくらい変わりました。

親にどう切り出すか、反対の中身をどう分けるかは通信制高校と親の気持ちに、子ども側と親側の両方から書いています。「申し訳ない」と感じてしまう人は、そちらを先に読んでもらったほうがいいかもしれません。

「辞めたい」と言われた親御さんへ

この章だけ、親の側に向けて書きます。 お伝えしたいのは2つだけです。

1つめは、退学届の順番です。 在籍したまま移る転入学は、退学届が受理された時点で選べなくなります。辞めるかどうかの結論より先に、移れるかどうかだけ確認しておいてください。確認は、辞めることへの同意にはなりません。

2つめは、選択肢を見えるところに置くことです。 説得ではなく、情報を置くほうです。

私自身、進路を決める時期に、親から学校の資料を渡された側でした。決めたのは自分です。 そのうえで、その物が目の前にあったことには意味があったと、いまの私は思っています。

ただ、この出来事を美談にはしたくありません。渡されたものが実際には何だったのか、そして美談にしたくない理由のほうは、通信制高校と親の気持ちに書いてあります。

親の側の気持ちそのものについては、高校中退した子の親の気持ちへに、当時子どもだった側からの答え合わせとして書きました。

まとめ

「辞めたい」と「辞める」のあいだには、何段階か選択肢があります。 この記事で書いたのは、そこだけです。

  • 令和6年度に高校を辞めた人は44,571人(在籍者の1.4%)。理由の最多は進路変更で、その内訳の一番は「別の高校への入学を希望」(10,621人・23.8%)でした
  • 学年別では1年生がもっとも多い(14,231人)。入学して数か月で考えはじめるのは、例外ではありません
  • 単位制の通信制では、単位を落としても学年が戻るのではなく卒業が後ろにずれます。ただし通信制のすべてが単位制ではなく、在籍年数にも上限があります
  • 私のところでは、3年で出たいなら1年目の取り方でほぼ決まりました。「落としても平気」という話ではありません
  • 戻せないのは退学届の順番だけです。籍があるうちなら、転入という選択肢が残っています
  • 「通信制に行くと損をするのか」——私は損をしたと感じたことがありません。ただし20年前の、別の学校の話で、学校差は大きいです
  • 通信制にも合わない部分はあります。移れば解決する、とは書きません

辞めるか続けるかを、今日決める必要はありません。決めるのはあなたで、期限を決めるのもあなたです。 ただ、順番を間違えると消えてしまう選択肢が1つだけあるので、そこだけ先に確認しておいてください。