「保健室なら行ける。でも、教室には入れない」
お子さんからそう打ち明けられた親御さんか、いままさにそういう毎日を送っている高校生の方が、この検索をしているのだと思います。
小学校や中学校には、科目ごとの「単位」がありません。高校で同じことをすると、話が変わります。 高校は、単位を積み上げて卒業する仕組みだからです。保健室にいる時間が長くなると、1日の出席は付いても、科目ごとの授業の出席が足りなくなっていきます。
この記事では、高校の保健室登校で単位と出席がどう扱われるのかを、国の通知と法令で確かめました。そのうえで、学校に何を確かめればいいか、教室に戻る以外にどんな道があるかを書きます。
書いているのは、中学で不登校になり、通信制高校を卒業した人間です。いまは働きながら二児の親をしています。先に書いておくと、私は保健室登校をしていません。 保健室が合わなかった側です。その話は途中で書きます。
保健室登校とは?高校ではどういう状態を指すのか
保健室登校とは、学校には来ているけれど、学校にいる間は主に保健室で過ごしている状態のことです。 特定の授業だけは教室に出られる、という人も含まれます。
これは公益財団法人日本学校保健会が「保健室利用状況に関する調査報告書 令和4年度調査結果」(令和6年3月発行/2026年9月23日確認)で使っている定義に沿った書き方です。同じ報告書では、保健室でなくても、養護教諭(保健室の先生)が主に対応している場合も保健室登校に含めています。
似た言葉がいくつかあるので、先に並べておきます。
| 呼び方 | 過ごす場所 | 主に関わる人 |
|---|---|---|
| 保健室登校 | 保健室 | 養護教諭 |
| 別室登校 | 空き教室・相談室など | 担任・学年の先生など(学校による) |
| 校内教育支援センター | 学校内に設けられた専用の部屋 | 専任の支援員や教員(学校による) |
| 放課後登校 | 授業が終わった後の教室や職員室 | 担任など |
校内教育支援センターは、文部科学省が2023年3月の「COCOLOプラン」で設置を進めている部屋で、「学校には行けるけれど自分のクラスには入れない時」に使える、学校内の空き教室などを活用した部屋と説明されています。呼び名や部屋の数は学校によって違うので、在籍校に何があるかは、学校に聞くのがいちばん早いと思います。
高校で保健室登校をしている人は、どれくらいいますか?
保健室登校の生徒がいる高校は、34.5%でした。 同じ報告書によると、小学校は44.8%、中学校は35.1%で、高校も中学校とほぼ同じ割合です。
| 項目 | 高等学校 |
|---|---|
| 保健室登校の生徒がいた学校の割合 | 34.5% |
| 上記の学校での、年間の平均人数 | 3.4人 |
| 開始した学年でいちばん多いのは | 第1学年 |
| 開始した時期でいちばん多いのは | 9月 |
| 調査期間の1年間に教室に戻った生徒の割合 | 45.2% |
| 戻った生徒が、戻るまでにかかった平均日数 | 22.6日 |
(日本学校保健会・同報告書より。調査期間は令和3年10月〜令和4年9月末。高校は回答1,262校)
高校では、始まった学年は1年生が、始まった時期は9月がいちばん多いという結果でした(学年と時期は別々に集計されています)。9月は、夏休みが明けた直後にあたります。
もうひとつ、この表で見てほしいのは最後の2行です。保健室登校をしていた生徒のうち、調査期間の1年間に教室に戻った人は45.2%で、半分に届きません。 戻った人が戻るまでにかかった日数の平均は22.6日でした。残りの半分あまりは、その1年のうちには戻らなかった人たちです。保健室登校を続けているのか、別の道を選んだのかは、報告書では分けられていません。同じ報告書では、学年別に見ると高校は3年生の復帰率がいちばん高かったと書かれています。どちらかが普通で、どちらかが例外、という数字ではありません。
高校で保健室登校をすると、単位はどうなりますか?
保健室にいる時間が長くなると、単位が取れなくなるおそれがあります。 高校では、1日学校に来たかどうかではなく、科目ごとの授業に何時間出たかで単位が決まる学校が多いからです。
ここが、小中学校との大きな違いです。
1日の出席と、授業の出席は別に数えられます
高校の単位は、学校が認定するものです。高等学校学習指導要領(平成30年告示)の総則には、次のように書かれています。
学校においては,生徒が学校の定める指導計画に従って各教科・科目を履修し,その成果が教科及び科目の目標からみて満足できると認められる場合には,その各教科・科目について履修した単位を修得したことを認定しなければならない。
(文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」第1章総則 第4款/2026年9月23日確認)
履修とは、その科目の授業を受けることです。 保健室にいる時間は、その間に行われている科目の授業を受けていないことになります。1日の出席が付いていても、国語の時間に保健室にいれば、国語は「欠課」として数えられるのが一般的です。
この区別は、国の通知にもはっきり書かれています。高校の不登校生徒が学校の外の施設で相談・指導を受けた日を、出席扱いにできるとした通知の中の一文です。
なお、この指導要録上の出席扱いは、科目の履修の認定に当たって考慮される授業への出席とは異なるものであり、科目の履修の認定に当たっては、在籍校における履修要件に照らして適切に行うよう留意すること。
(文部科学省「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」平成21年3月12日/2026年9月23日確認)
「出席扱い」になっても、授業に出たことにはならない。 高校の保健室登校について、いちばん大事なのはこの点だと思います。
なお、保健室登校そのものを出席扱いにすると定めた国の規定は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。学校に来ている以上、1日の出席として記録している学校が多いはずですが、扱いを決めるのは在籍している学校です。
「3分の1を超えたら単位が出ない」は、法律ではありません
欠課の上限は、国の法律ではなく、学校ごとの決まりです。 よく聞く「欠課時数が授業時数の3分の1を超えたら単位が認められない」は、各校の教務規程や内規に書かれているものです。
文部科学省自身が、2024年の通知でこう書いています。
現状、多くの高等学校の教務規程等において、慣例として、授業への出席の回数を履修や単位認定の要件として課しているところ、(中略)生徒一人一人の実情に応じて柔軟に履修・単位修得を認めることが望まれること。
(文部科学省「5文科初第2030号」令和6年2月13日/2026年9月23日確認)
中央教育審議会のワーキンググループの「中間まとめ」(令和5年8月31日)でも、「授業時数の3分の2以上の出席など、多くの学校において慣例として定められている単位認定の際の出席要件」という書き方がされています。
ここから言えることは2つです。
- 基準は学校によって違います。 「3分の1」の学校もあれば、「1単位につき10時間」のように時間数で決めている学校もあります。在籍校の基準を知らないまま不安になっているなら、まず数字を確かめる価値があります
- 国は、出席回数だけで機械的に切ることを望んでいません。 補講や課題、後で書く遠隔授業などで、柔軟に認めることを学校に求めています。ただし「求めている」のであって、学校に義務づけているわけではありません
単位が足りないと、どうなりますか?
学年制の高校では、原級留置(いわゆる留年)になることがあります。 単位制の高校では、学年が戻るのではなく、卒業に必要な単位がそろう時期が後ろにずれます。
高校を卒業するには、74単位以上を修得する必要があります(学校教育法施行規則 第96条)。どの科目を何単位取れば進級できるかは、学校ごとに決まっています。
文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(2026年9月23日確認)によると、高校の不登校生徒は67,782人。そのうち原級留置になった人は2,963人(4.4%)、中途退学に至った人は10,566人(15.6%)でした。
この数字は保健室登校の人だけを数えたものではありません。それでも、学校に行きづらくなった高校生が、留年よりも退学のほうに多く流れていることは読み取れます。退学の前に確かめられることは多いので、それを後で書きます。
留年が実際に決まりそうになったときに、同じ学校に残るのか転校するのかを、卒業の時期と就学支援金の上限で比べた話は、高校の留年を人数とお金の面から整理した記事にまとめています。
保健室にいながら単位を取る方法はありますか?
あります。2024年4月から、不登校の生徒が保健室や校内の別室で遠隔授業を受けて、単位を修得できる仕組みが整いました。 ただし、対象になるかどうかも、実施するかどうかも、学校の判断です。
仕組みを順に書きます。
- 学校教育法施行規則が改正され、2024年(令和6年)4月1日から施行されています
- 対象は、通知の言葉では「学校生活への適応が困難であるため、相当の期間高等学校を欠席し引き続き欠席すると認められる生徒」です。年間30日以上の欠席という不登校の定義を一つの参考にしつつ、断続的な不登校や不登校の傾向がある生徒も対象になり得るとされていて、誰が当てはまるかは学校が判断します
- この生徒が、自宅やその他の特別な場所で、遠隔授業(オンライン授業)を受けて単位を修得できるようになりました
- 「特別な場所」の例として、通知には「教育支援センター、校内教育支援センター、保健室、その他当該高等学校等内の別室等」と、保健室がはっきり書かれています
- この方法で修得できるのは、卒業に必要な74単位のうち36単位までです(第96条第2項)
- 授業に代えて通信教育を行う方法(第88条の4)もあり、こちらは遠隔授業などと合わせて36単位までです
つまり、保健室にいながら、教室で行われている授業に画面越しで参加して、その科目の単位を取ることが、制度の上では可能になっています。ただし、いま保健室登校をしている生徒がこの「不登校生徒」に当てはまるかどうかは、在籍校が判断します。
保健室が合わない人もいます——私もそうでした
保健室登校は、全員にとっての「逃げ場」になるわけではありません。 保健室そのものに入りづらい人もいます。私がそうでした。
いま書いておきたいのは、「保健室なら行けるはず」「別室があるから大丈夫」は、場所の中身しだいだということです。
同じ保健室でも、静かに過ごせる学校もあれば、そうでない学校もあります。部屋の設備より、そのときの部屋の雰囲気で居やすさが変わることもあります。「教室でなければどこでもいい」とは限りません。
ですから、もしお子さんが「保健室にも行けない」と言っているなら、それは保健室登校に失敗したということではないと思います。その部屋が合わなかった、というだけです。校内に別の部屋があるかもしれませんし、ない場合は、学校の外に道があります。
逆に、保健室でなら過ごせているなら、それは学校とのつながりが切れていないということです。単位の心配はあっても、そこにいられる場所があること自体は、軽く見なくていいと思います。
単位が心配になったら、学校に何を確かめればいいですか?
在籍校の「数字」と「使える手段」を確かめます。 不安の多くは、基準を知らないことから来ています。
特に親御さんが確かめる場合、担任だけでなく、教務の担当の先生(単位や時間割を管理している先生)に聞くと、数字が早く出てくることがあります。
最後の項目は、転校を決めていなくても聞いておいて損はありません。いま何単位持っているかは、次の道を選ぶときの基準になります。
「数字を聞くと、かえって追い詰められるのでは」と思う方もいるかもしれません。ただ、上限まで何時間あるかがわかれば、あと何日保健室で過ごしても大丈夫なのかが見えます。わからないまま毎日過ごすより、期限が見えているほうが、本人も親も落ち着いて考えられることがあります。
教室に戻る以外に、どんな道がありますか?
教室に戻る、学校の中で別の形を探す、別の学校へ移る、の3つがあります。 どれが正解ということはありません。
| 道 | どんな人に合いやすいか | 確かめること |
|---|---|---|
| 教室に少しずつ戻る | 好きな授業・特定の授業なら出られる | 出られる授業から単位を確保できるか |
| 学校の中で形を変える | 保健室・別室なら毎日来られる | 遠隔授業・補講・課題で単位を埋められるか |
| 定時制へ移る | 毎日通うこと自体はできる。朝がつらい | 受け入れ時期・転入試験・単位の引き継ぎ |
| 通信制へ移る | 毎日通うことがつらい | 受け入れ時期・スクーリングの日数・単位の引き継ぎ |
学校を移るときは、単位を持っていけることが多い
高校を移る方法には「転学(転入学)」と「編入学」があります。 転入学は、いまの高校に籍を置いたまま別の高校へ移ること、編入学は、いったん高校を辞めてから入り直すことです。
大事なのは、転入学なら籍が一日も切れないという点です。それまでに修得した単位も、移り先の学校の判断で引き継がれることが多く、学年の途中で受け入れている学校もあります。
退学してしまうと、選べる道が減ることがあります。退学届は、移り先が決まってから最後に出す。この順番だけは覚えておいてください。
具体的な期限と単位の引き継ぎは通信制高校への転入はいつまでにできるかに、学年別に整理しています。公立・私立・定時制も含めて移れる先を比べたいなら、引っ越し以外の理由で高校を移るときの条件を並べた記事が役に立つと思います。そもそも辞めるかどうかで迷っている段階なら、高校を辞めたいと思ったときの選択肢を整理した記事のほうが先です。
登校日の多さが不安なら
私が中学を出るときの話を、少しだけ書きます。
保健室登校をしている人の中には、「学校には来られる」人もいれば、「毎日来ること自体が限界に近い」人もいると思います。毎日来られているなら、定時制や、いまの学校での別の形も十分に候補になります。 逆に、毎日来ることそのものが重いなら、登校日の少ない通信制のほうが噛み合うかもしれません。
定時制を候補に入れて外したときの話は、定時制高校を候補に入れて選ばなかった理由を書いた記事に詳しく書きました。
通信制の仕組みそのものは通信制高校とは?に、単位を落としたときにどうなるかは、実際に単位を落とした私の話として通信制高校に留年はあるかにまとめてあります。
中学で保健室登校をしていても、高校に進学できますか?
進学できます。 中学校を卒業見込みであれば、保健室登校で出席日数が少なくても、高校に出願することはできます。
違いが出るのは、どの課程を受けるかです。
- 全日制:入試で調査書(内申書)が使われ、出席日数を見る自治体や学校があります。不登校の生徒向けに、調査書の扱いを配慮する選抜を設けている自治体もあります
- 定時制:全日制に比べて、学力検査や面接の比重、出席の見方が違う学校があります
- 通信制:書類と面接・作文が中心の学校が多く、中学校の出席日数が合否を大きく左右することは少なくなります
そして、ここまで読んでいただいた方には、もうひとつ考えておいてほしいことがあります。中学で保健室登校だった人が全日制に進むと、高校では単位という別のルールが加わるという点です。中学では保健室で過ごしても卒業できますが、高校ではそうはいかない場合があります。
これは全日制をやめたほうがいいという意味ではありません。入学前に、その高校の欠課の基準や、遠隔授業・別室の有無を確かめておくと、入ってから慌てずに済みます。学校説明会や個別相談で聞ける質問です。
受験の段取りや、課程ごとの出席の見られ方は、不登校から高校受験はできる?に整理してあります。まだ中学1・2年生で、学校に行くこと自体がつらい段階なら、中学生が学校に行きたくないと思ったときのことを書いた記事のほうが近いと思います。
保健室登校のお子さんを見守っている親御さんへ
「保健室なら行ける」は、行けていないのではなく、行けている状態です。 まず、そこから始めていいと思います。
そのうえで、親御さんにしかしにくいことが2つあります。
1つめは、学校の数字を確かめる役です。上のチェックリストのような事務的な確認は、本人よりも親のほうが聞きやすいことが多いと思います。本人に「あと何時間休めるか」を毎日問いただす形にならないように、学校と親の間で持っておく情報にしておくのがいいと思います。
2つめは、次の道の資料を手元に置いておく役です。いま転校を決める必要はありません。ただ、欠課の上限が近づいてから探し始めると、時間に追われて選ぶことになります。
パンフレットを請求することと、転校を決めることは別の段階です。中身を見てから、本人に渡すかどうかを決めるという順番でも構いません。私が実際にN高等学校の資料を請求したときの届くまでの日数と中身の記録を残してあるので、どんなものが届くのか先に知りたい方は参考にしてください。
まとめ
高校の保健室登校で本当に確かめるべきなのは、1日の出席ではなく、科目ごとの欠課時数と、それを埋める手段があるかどうかです。
- 保健室登校とは、学校に来ているけれど主に保健室で過ごしている状態のことです。保健室登校の生徒がいる高校は34.5%あります
- 高校では、1日の出席と、科目ごとの授業の出席は別です。出席扱いになっても、授業に出たことにはなりません
- 欠課の上限(「3分の1」など)は法律ではなく学校ごとの決まりです。文部科学省は柔軟に認めることを学校に求めています
- 2024年4月から、不登校の生徒が保健室や別室で遠隔授業を受けて単位を取れる仕組みがあります(36単位まで)。対象になるかも、実施するかも学校の判断です
- まず学校に数字を確かめる。上限まで何時間あるか、どんな手段で埋められるか
- 教室に戻る以外に、定時制・通信制へ転入して単位を引き継ぐ道があります。退学届は最後です
- 保健室が合わない人もいます。合わなかったことは、失敗ではありません
保健室にいる時間は、何もしていない時間ではないと思っています。そこにいられる場所があるうちに、次の選択肢を知っておく。この記事が、そのための材料になれば嬉しいです。