「N高って、ちゃんと卒業できるの?」
入学を考えている親御さんがいちばん最初に気にするのは、たぶんここだと思います。調べてみると、「卒業率99%」「98%」という高い数字と、「86%」「87%」という数字の両方が出てきて、どちらを信じればいいのか迷うはずです。
先に答えを言うと、どちらも公式の数字で、分母が違うだけです。卒業率とは、ある集団(たとえば同じ年に入学した生徒)のうち、卒業した人の割合のことです。何人を分母にするかで、同じ学校でも数字が大きく変わります。この記事では、学校法人角川ドワンゴ学園が公表している卒業率を、定義ごとに読み解きます。過去6回分の推移と、公式の「情報公開」に載っている退学者数から見た中退率も、あわせて整理しました。
私は中学で不登校を経験し、N高ではない別の通信制高校を4年かけて卒業しました。いま店ではN高生が4人働いています。「やめとけ」と言われる理由の全体像はN高が「やめとけ」と言われる6つの不安と、逆に「いい」と言われる理由にまとめていて、この記事はそのうち「本当に卒業できる?」を数字で深掘りしたものです。
N高の卒業率は何%ですか?
公式の最新の数字は、99.02%・93.15%・86.99%の3つです。 2026年4月2日に公開されたプレスリリースに、N高グループ(N高・S高・R高)の2026年の卒業率が、次の3つの定義で載っています。
| 定義(プレスリリースの文言) | 卒業率 |
|---|---|
| 1・2年次に必要単位を取得し、3年次を迎えた生徒の卒業率 | 99.02% |
| 上記から転学・退学した生徒を除いた場合の卒業率 | 93.15% |
| 2023年度に入学し、2026年3月に卒業した割合 | 86.99% |
(出典:学校法人角川ドワンゴ学園のプレスリリース 2026年4月2日公開・2026年3月31日時点。この春の卒業生は11,449名。2026年10月9日確認)
※プレスリリースでの並び順は「99.02%→86.99%→93.15%」です。この表では数字の大きい順に並べ替え、次の表では分母の大きい順に並べています。
なお、資料請求でもらえる学校案内(2026年版)のFAQにある「卒業率98%」は、このうち「3年次を迎えた生徒」の定義で、前年(2025年3月末)の数字です。
数字が3つあると、「どれが本当の卒業率なのか」と思いますよね。答えは、3つとも本当で、何人のうちの何人かが違うということです。
3つの数字は、何が違うのですか?
いちばん大事なところなので、1つずつ見ていきます。違うのは、分母に「誰を入れるか」です。
| 数字 | 分母(何人のうち) | 分母から外れている人 |
|---|---|---|
| 86.99% | 2023年度に入学した全員 | なし(いちばん厳しい数字) |
| 93.15% | 入学者から、転学・退学した人を除いた人 | 他の学校へ移った人、やめた人 |
| 99.02% | 1・2年次の単位をそろえて3年次に進んだ人 | 3年次に進む前に転学・退学した人と、単位が足りず3年次に進めなかった人 |
86.99%は「入学した全員」を分母にした数字です。途中で他の学校に移った人も、やめた人も、単位が足りずに卒業が延びた人も、全員が分母に入っています。親の立場で「うちの子が入学したら、3年で卒業できる見込みはどのくらいか」を考えるなら、この数字がいちばん実感に近いと思います。
99.02%は「3年次まで順調に進んだ人」を分母にした数字です。1・2年次の単位をそろえて3年次を迎えた人は、ほぼ全員が卒業している、という意味になります。裏を返すと、3年で卒業できるかどうかは、3年次ではなく1・2年次の段階でほぼ決まっている、ということでもあります。
入学した100人に置き換えると
86.99%と93.15%の2つの数字を組み合わせると、入学した人がその後どうなったかを、おおまかに分けられます。
| 入学した100人のゆくえ(2023年度入学) | 人数の目安 |
|---|---|
| 3年で卒業した | 約87人 |
| 他の学校へ移った・やめた | 約7人 |
| 在籍を続けている(卒業が4年目以降になる人など) | 約6人 |
※当サイトの計算です。86.99%÷93.15%≒93.4%が「転学・退学しなかった人」の割合になるので、転学・退学は約6.6人、在籍を続けている人は93.4−87.0=約6.4人になります。公式が人数の内訳を発表しているわけではないので、目安として読んでください。
ここで大事なのは、3年で卒業しなかった約13人のうち、半分近くは「まだ在籍している人」だということです。N高は単位制の課程なので、単位が足りなければ4年目、5年目と在籍を続けて卒業を目指せます。3年で卒業しなかった=やめた、ではありません。
「卒業率86%=留年リスク14%」は正しい?
正確ではありません。 検索すると、86%台の数字を「実質の卒業率」とし、残りを「留年リスク約14%」と説明している記事が見つかります。ですが、上の表のとおり、残りの約13〜14%には転学・退学した人(約7人)と在籍を続けている人(約6人)の両方が入っています。
「留年」にあたるのは後者だけで、前者は別の学校へ移ったか、学校をやめた人です。学校をやめるリスクと、卒業が延びるリスクは、親としての備え方がまったく違います。数字は分けて読むことをおすすめします。
決めるときに迷ったことや、決めたあとの実感は通信制高校は4年で卒業してもいいに書いています。
N高の卒業率は、年によって変わっていますか?
公式サイトのニュースで卒業率が確認できる2021年以降、「入学して3年で卒業した割合」は79%台から87%前後まで上がっています。 ただし、年によって対象の学校が違うので、そのまま並べて比べるには注意が要ります。
公式サイトのニュース一覧で、本文に「卒業率」が載っているのは次の6回です。
| 公表日 | 対象 | 入学して3年で卒業 | 転学・退学を除く | 3年次を迎えた生徒 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年3月24日 | N高のみ(三期生) | 79.39% | 85.94% | 99.88% |
| 2022年3月31日 | N高のみ(四期生) | 84.0% | 91.4% | 99.1% |
| 2023年4月4日 | N高のみ(5期生) | 82.9% | 91.7% | 98.1% |
| 2024年4月3日 | N高・S高 | 86.67% | 92.33% | 98.76% |
| 2025年4月2日 | N高・S高 | 86.14% | 91.68% | 98.95% |
| 2026年4月2日 | N高・S高・R高 | 86.99% | 93.15% | 99.02% |
(出典:学校法人角川ドワンゴ学園の各年のプレスリリース・ニュース。2022年と2023年の卒業率は「3月29日時点の速報値」と明記。いずれも2026年10月9日確認)
2023年まではN高の「○期生」だけの数字で、2024年からはS高、2026年からはR高も合算されています。対象が変わっているので、「何ポイント上がった」と細かく比べるより、「入学者の8割台後半が3年で卒業し、3年次まで進んだ人はほぼ全員が卒業する」という形がここ数年続いている、と読むのが正確だと思います。
もうひとつ目を引くのは、「3年次を迎えた生徒の卒業率」が、6回とも98%〜99.9%の間に収まっていることです。対象の学校が変わっても、この数字はほとんど動いていません。3年次まで進んだ人がほぼ卒業するという点は、年によらず安定していると言えます。逆に動いているのは「入学して3年で卒業した割合」のほうで、1・2年次のつまずき方が年ごとに少しずつ違う、ということだと読めます。
なお、ネット上で見かける「卒業率96.7%(2019年)」という数字は、2019年3月の実績発表会で示されたものと思われます。公式サイトのニュースや学校評価の資料には載っていなかったので、この記事では使っていません。
N高の中退率は?退学者数から見る
学校は「中退率」という数字を公表していませんが、公式サイトの「情報公開」に退学者数が載っています。 2026年5月1日時点の各校の基本情報から、在籍者数と前年度の退学者数を並べます。
| 学校 | 在籍者数 | 退学者数(前年度) | 退学者÷在籍者 |
|---|---|---|---|
| N高 | 19,073人 | 388人 | 約2.0% |
| S高 | 13,213人 | 333人 | 約2.5% |
| R高 | 2,704人 | 31人 | 約1.1% |
| 3校の合計 | 34,990人 | 752人 | 約2.1% |
(出典:N高等学校「基本情報(2026年5月現在)」、S高・R高の同資料。右端の割合と合計は当サイトの計算。2026年10月9日確認)
※退学者数は「前年度」、在籍者数は「2026年5月1日時点」なので、時点がずれた単純な割り算です。目安として読んでください。
前年の2025年版の資料では、N高の退学者数は322人(在籍17,671人・約1.8%)、S高は341人(在籍13,690人・約2.5%)でした(2025年版は現在公式サイトから削除されていて、インターネットアーカイブの保存版で確認しました)。
退学者は増えている?
N高の退学者数は、前年の322人から388人に増えています。ただ、同じ期間に在籍者数も17,671人から19,073人に増えているので、割合で見ると約1.8%から約2.0%への変化です。S高は341人から333人とほぼ横ばいで、割合も約2.5%のままでした。
確認できた範囲では、2023年版までの資料に退学者数の欄はなく、2025年版から載っています(2024年版は確認できませんでした)。比べられるのはまだ2年分だけです。2年分の動きで「増えた・減った」と判断するのは早い、というのが正直なところです。来年以降の資料が出たら、この記事に追記します。
通信制高校全体と比べると
文部科学省の「令和7年度 学校基本調査」によると、全国の通信制課程の在籍者は305,197人、前年度間の退学者は14,302人です。同じように割ると約4.7%になります(当サイトの計算・同じく時点がずれた単純比)。
なお、文科省の退学者数は令和6年度間(2024年度)、上のN高の388人は2025年度の数字なので、年度が1年ずれます。同じ2024年度の退学で比べると、N高の2025年版は約1.8%でした。また、退学の数え方(転学を含むかなど)が調査と学校で同じかは確認できていないので、「おおむね半分以下の水準」という目安として読んでください。
N高グループの約2%は、通信制高校全体の約4.7%より低い水準にあります(目安の比較です)。通信制高校全体の数字の読み方は「通信制高校はやめとけ」は本当?でも扱っています。
3年で卒業できなかったら、どうなる?
在籍を続けて、足りない単位を取れば卒業できます。 上の「100人のゆくえ」でいう「在籍を続けている約6人」がこれにあたります。N高は単位制の課程なので、全日制のように学年をもう一度やり直すのではなく、卒業の時期が後ろにずれるという形になります。
ただし、お金の面で知っておきたい決まりがあります。授業料を国が支援する就学支援金には、通信制の場合で通算48か月という支給期間の上限があります。N高の公式サイトでも、在学期間が通算48か月を超える場合は、学費から支援金の見込額をあらかじめ差し引く「先引き」の対象外になると案内されています。
| 卒業までの年数 | 在学期間 | 就学支援金の支給期間(48か月)との関係 |
|---|---|---|
| 3年 | 36か月 | 上限の内側 |
| 4年 | 48か月 | ちょうど上限まで |
| 5年以上 | 60か月〜 | 上限を超える期間は対象外になる |
あわせて、就学支援金の支給対象になる単位数にも、通算74単位・年間30単位までという上限があります。公式サイトではこの上限を「履修登録単位数」で数えると説明しているので、落とした単位を取り直す場合に通算がどう数えられるかは、個別相談で確認しておくと安心です。
※前の高校に在籍していた期間がある転入・編入の場合は、その期間も通算されます。詳しい扱いはN高等学校の学費はいくら?で整理しています。
FP2級として見ると、4年で卒業するぶんには支援金の期間内に収まりますが、5年目以上になると授業料の自己負担が増えます。「卒業が延びるかもしれない」という前提で考えるなら、何年目からいくら増えるかを、入学前に個別相談で確かめておくと安心です。
他の通信制高校と卒業率を比べるときの注意
卒業率は、学校によって定義がばらばらです。 N高グループのように3つの定義を並べて公表している学校は、私が見た範囲では少数です。比べるときは、次の点を確かめてから並べてください。
学校案内やホームページに大きく載っている数字ほど、分母の説明は小さく書かれがちです。たとえば「卒業率98%」と書いている学校があっても、それが「3年次を迎えた生徒」の数字なら、N高グループの99.02%と比べるべきで、86.99%と比べるのは不公平です。同じ定義どうしで比べること、そして定義が書かれていない数字は、学校に分母を聞いてみることをおすすめします。
卒業できない人は、どこでつまずいている?
3年次を迎えた人の卒業率が99%前後なので、そこまで進めればほぼ卒業できる、ということは数字から言えます。つまり、3年で卒業できなかった人の分かれ目は1・2年次にある、とまでは言えます。ただ、その中身が単位の積み残しなのか、転学・退学なのかまでは公表されていません。この章では、単位のほうを見ていきます。
1・2年次の単位で何が大変かというと、通信制はレポート(課題)・スクーリング(面接指導)・単位認定試験の3つを、自分のペースで積み上げる仕組みだという点です。全日制のように「学校に行けば授業が進む」わけではないので、レポートを自分で進めなければ単位がそろいません。
私自身は、レポートを一人で進めるのが苦手で、ギリギリに書いていた側でした(店のN高生の言葉は、あとの章で書きます)。
通信制は毎日決まった時間に通う仕組みではないので、来なくなっても周りが気づきにくい面があります。入学前に、学校側がどう声をかけてくれるのかを確かめておく理由はここにあります。
N高のレポートの量や難しさはN高のレポートは大変?に、ためてしまったときの挽回手順はN高のレポートが間に合わなかったらに、単位を落としたらどうなるかは通信制高校に留年はある?にまとめています。
いま「退学するかどうか」を考えている段階なら、やめる前に続け方を変える選択肢(コース変更・休学・4年に延ばす)を「やめとけ」本体記事の「合わなかったらどうなる?」にまとめています。
数字の外側:店で働くN高生の様子
ここまでは公式の数字の話でした。最後に、数字には出てこない部分として、店で働いているN高生の様子を書いておきます。4人が在籍中の生徒なので、卒業できるかどうかの「結果」ではなく、続けている子の「途中経過」です。
4人に共通しているのは、やりたいことがあって選んだことです。それが卒業のしやすさにつながるかどうかは、4人を見ただけでは分かりません。言えるのは、公式の数字が示す「最初の1・2年で流れに乗れるかどうか」を、4人は(少なくともいまのところ)乗り切っているらしい、ということまでです。
卒業できるか不安なとき、入学前に確認できること
数字が示しているのは「1・2年次の単位を積めるか」が分かれ目だということなので、入学前に確認しておきたいのも、そこを支える仕組みです。
これらは、学校の資料や個別相談で確かめられる事実です。卒業率の数字は「全体の傾向」でしかないので、最後はお子さんがその仕組みの中で単位を積めそうかを、資料を見ながら考えるのがいちばん確実だと思います。
通信制に向いているかどうかを「自己管理ができるか」の一言で片づけない考え方は通信制高校に向いてない人はいる?に書きました。進学先の数字の読み方はN高等学校の進学実績は?にあります。
まとめ
- N高グループの卒業率は99.02%・93.15%・86.99%の3通り。分母が違うだけで、どれも公式の数字です
- 親の実感に近いのは86.99%(入学して3年で卒業した割合)
- 入学100人に置き換えると、3年で卒業 約87人/転学・退学 約7人/在籍を続けている 約6人(当サイトの計算)
- 「86%=留年リスク14%」ではありません。やめた人と、卒業が延びた人は分けて読む
- 退学者数から見た中退率の目安はN高で約2%。通信制高校全体の約4.7%より低い水準です
- 3年次を迎えればほぼ全員が卒業。分かれ目は1・2年次の単位
卒業率は、学校が「卒業させる力」の目安にはなりますが、お子さんが卒業できるかどうかを約束する数字ではありません。サポートの仕組みや費用は、資料を取り寄せたときの中身の記録に何が届くかを書いているので、確かめる材料にしてください。