「うちの子、ゲームばかりしていて……」
「N高にはeスポーツ部があると聞いたけど、本当にゲームが部活になるの?」
こう思って検索した親御さんもいれば、ゲームが好きで、N高のeスポーツ部が気になっている本人もいると思います。
N高のeスポーツ部とは、N高・S高・R高の生徒がオンライン中心で活動するネット部活です。 毎週の交流会と、大会を目指す部員向けの「強化選手制度」があるのが特徴です。 公式サイトでは、N高グループの中でも「最大級の部活」と紹介されています。
書いている私は、中学で学校に行けなくなり、N高とは別の通信制高校を出た人間です。いまは店も経営していて、N高生が4人アルバイトに来てくれています。不登校だったころ、私の毎日の中心にあったのはゲームでした。この記事では、N高のeスポーツ部の中身を公式資料で整理したうえで、「ゲームばかり」の子を持つ親御さんが知っておきたいことも書きます。
N高のeスポーツ部とは?
N高のeスポーツ部は、2018年10月に発足したネット部活です。 N高・S高・R高の生徒が一緒に活動していて、公式サイトでは「最大級の部活」とされています。部のコンセプトは「自分にあった楽しみ方で成長する」です。
活動の中心はオンラインです。部員は、学校で使うチャットツール「Slack」で雑談をしたり、ボイスチャットアプリ「Discord」で交流したりしています。公式サイトに書かれている活動は、次のとおりです。
| 活動 | 内容 |
|---|---|
| オンラインの交流会 | 毎週木曜日に、ゲームのタイトルごとに開催 |
| 超リアルゲーム交流会 | 3〜4か月ごとに、キャンパスなどで開催。無料 |
| 強化選手の練習 | 大会に向けて、プロのコーチから毎週指導(無料) |
| 主なタイトル | Valorant、Apex Legends、フォートナイト、スプラトゥーン3、原神、プロセカ など |
(出典:N高グループ公式サイト「eスポーツ部」 2026年10月11日確認)
交流会の頻度は、資料によって書き方が違います。公式サイトは「毎週木曜日」、学校案内2026年版は第3版(2026年3月)で「毎週2回」、第4版(2026年9月)では「毎週の交流会」と回数を書いていません。入学を考えるときは、いまの曜日と時間帯を個別相談で確かめておくと確実です。
部員の数は、公式には2020年3月時点で304人と発表されています。その後の最新の人数は、公式サイトには載っていません。
入部の仕方
公式サイトには、入部の方法が書かれていません。生徒が運営する学内メディア「N/S高新聞」の2023年の記事では、Slackのeスポーツ部のチャンネルに入ると入部扱いになる、と部員が説明していました。Discordでは、18歳未満への販売が禁止されているゲームのロール(参加者の区分)は削除している、という説明もあります。
ただしこれは2023年時点の生徒の説明で、ほかのネット部活には申し込みフォームを使う部もあり、部によって手続きは違うようです。手続きは入学後に学内で案内されるので、検討中のいまは「入るハードルは高くなさそうだ」くらいに受け止めておけば十分です。
N高のネット部活全体(美術部・プログラミング部・投資部など)の種類や入り方は、N高の部活はネットで活動?種類一覧と参加のリアルにまとめています。
強化選手制度:プロのコーチから無料で毎週指導
eスポーツ部のいちばんの特徴は、強化選手制度です。 公式サイトでは、次のように説明されています。
強化選手制度とは、STAGE:0や全日本高校eスポーツ選手権などの大型大会に向けて、プロのコーチから"無料"で"毎週"直接指導を受けることができる制度です。
強化選手の選び方(選考の基準や時期)は、公式サイトに書かれていません。 学校案内の以前の版には「選抜制」とあり、部員みんなが強化選手になるわけではありません。京都eスポーツ振興協議会のサイトにあるN高グループの紹介ページでは、部員数は2025年12月時点で3,436名とされていて(公式サイトの発表ではありません)、これと比べると約200人は一部です。希望者全員がなれる枠ではないようです。
遠征費の負担については、学校案内に載っている卒業生の声で「大会の交通費から宿泊費、日本代表選手による事前合宿まで手厚いバックアップを受け」と語られています。少なくとも強化選手については、大会に出るたびに家庭が宿泊費などを出す、という形ではないようです。
大会実績:全国大会で毎年のように優勝
N高グループのeスポーツ部は、高校生向けの全国大会で毎年のように結果を出しています。2025年度の主なものは次のとおりです。
| 大会 | 主な結果 |
|---|---|
| STAGE:0 2025(2025年8月) | オーバーウォッチ2部門 優勝(3連覇)、フォートナイト バトルロイヤル部門 優勝、ヴァロラント部門 3位(2チーム) |
| U18 全日本中高ロケットリーグ選手権(2025年11月) | 優勝(4連覇) |
| 第3回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権(2025年11〜12月) | リーグ・オブ・レジェンド部門・ストリートファイター6部門 優勝、3部門でMVP |
(出典:N高グループ公式サイトのニュース 2025年8月20日・2025年11月27日・2026年1月28日。2026年10月11日確認)
STAGE:0は、全国の高校生チームが参加するeスポーツ大会で、2025年は大会全体で延べ8,293名の高校生が挑んだと主催者が発表しています。そのフォートナイト バトルロイヤル部門では、804チームの頂点にN高のチームが立ちました。
公式サイトの実績一覧を見ると、STAGE:0では2019年から2025年まで、毎年いずれかの部門で優勝しています。全国大会の決勝の舞台には、2024年は22チーム、2025年は17チームがN高グループから出場しました。オーバーウォッチ2部門は2023年から3年続けて優勝しています。
大会に出ない部員向けの活動もあります。同じ京都eスポーツ振興協議会の紹介ページ(2025年12月時点)では、プロ選手によるトークセッションや、ゲーム制作会社とのワークショップ、キャンパスやゲーミングカフェを貸し切ったリアル交流会などが挙げられています。勝つことだけが目的の部ではない、ということです。
N高のeスポーツ部から、プロゲーマーになれる?
プロになった人数は、公表されていません。 公式サイトには「プロ選手も多く輩出!」と書かれていますが、何人がプロになったかの数字はありません。
公式資料に載っている個別の例は、次のようなものです。
- 在校生:プロeスポーツチーム「VARREL YOUTH」に所属する生徒が、リーグ・オブ・レジェンドの国内リーグで準優勝し、最優秀新人賞を受賞(学校案内2026年版・2025年度の活動実績)
- 卒業生:ゲームの道を目指してN高に転入し、eスポーツ部で2年連続優勝。卒業後はZEN大学に通いながら、プロチームの運営をしている(学校案内2026年版・卒業生の声)
- 奨学生制度:N高グループの特別奨学生には「eスポーツ」の分野があり、認定されると学費の一部または全部の免除などの支援を受けられます(学校案内2026年版。審査を希望する場合は出願前に連絡が必要)
一方で、気をつけておきたいこともあります。学内メディアの記事で紹介されていた、プロチームに所属する在校生は、チームの練習と個人練習を合わせて1日10時間ほどと話していました。これはプロとして活動している生徒の例で、eスポーツ部の部員の一般的な過ごし方ではありません。プロを目指すことは、それだけの時間と覚悟が要る道でもあります。
プロを目指す道として、N高グループには関連校の形で専門教育を受けられる選択肢もあります。学校案内には、S高に所属しながらプロゲーマー・ストリーマーなどを目指す「ZETA DIVISION ゲーミングアカデミー 高等部」や、ゲーム・eスポーツを学ぶ「バンタンゲームアカデミー 高等部」が載っています(東京・大阪・名古屋など。学費は学校案内には記載がなく、同封資料を確認するよう案内されています)。eスポーツ部は課外の部活、こちらは専門の学びが中心、という違いがあります。
N高に入ればプロになれる、という場所ではありません。 ただ、本気で目指す子にとっては、プロのコーチの指導や大会の費用負担といった「目指せる環境」が用意されている学校だ、とは言えると思います。
ゲームを「作る側」の学びもある
ゲームが好きな子の進路は、プロ選手だけではありません。N高の課外授業には、ゲームクリエイターが講師を務める映像授業があり、世界観やシナリオの作り方、ゲーム会社への就職の話などを学べます(ZEN Studyの映像授業は原則無料)。
ゲームのプログラミングを本格的に学ぶなら、+ONE授業の「プログラミングマスターズパック」にゲームプログラマーのコースがあります。こちらは別料金で、オンライン型は入学前の購入で93,500円からです(2027年度の生徒募集要項)。講座の中身と料金はN高の課外授業の記事に詳しく書いています。
「ゲームばかりで心配」な親が知っておきたいこと
ここからは、ゲームが好きな子を持つ親御さんに向けて書きます。私自身、不登校だったころは、まさに「ゲームばかり」の子どもでした。
これは私の場合の話で、ゲームをしていれば大丈夫だと言うつもりはありません。ただ、親から見て「ゲーム三昧」に見える時間が、本人にとっては人とのつながりの場になっていることもある、ということは書いておきたいと思います。eスポーツ部の交流会は、そのつながりを「学校の中」に作れる場所でもあります。友達づくり全般については通信制高校で友達はできる?に書いています。
ゲームの時間と、学業の関係
まず、ゲームをする高校生は少数派ではありません。こども家庭庁の令和7年度の調査(速報)では、高校生のインターネットの利用時間は平日1日あたり約6時間44分で、ネットでゲームをすると答えた高校生は8割を超えていました。
それでも、ゲームの時間が長いことが気になるのは当然です。公的な調査の数字も見ておきます。
国立病院機構 久里浜医療センターが2019年に10〜29歳を対象に行った調査では、ゲームの時間が長いほど、「学業成績の低下や仕事のパフォーマンスの低下」があったと答えた人の割合が高くなっていました。
| 平日のゲーム時間 | 学業や仕事のパフォーマンスが低下した人 |
|---|---|
| 60分未満 | 5.0% |
| 1時間以上2時間未満 | 11.9% |
| 2時間以上3時間未満 | 20.4% |
| 6時間以上 | 29.8% |
(出典:久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート調査」結果概要。10〜29歳・回答者5,096名。一部の区分を抜粋。2026年10月11日確認)
時間が長いほど影響が出やすい傾向はある、ということです。同時に、6時間以上の人でも約7割は低下を答えていません。これは時間と結果が一緒に動いている「相関」を示した数字で、ゲームが原因だと決めつけられるものではありません。
心配すべきなのは「時間」より「付き合い方」
WHOの国際疾病分類(ICD-11)では、「ゲーム行動症(ゲーム障害)」の特徴として、次の点が挙げられています。
(出典:WHO「Gaming disorder」、岡山市こころの健康センター「ゲーム依存症」。2026年10月11日確認)
基準になっているのは、時間の長さそのものではなく、コントロールできているか、生活に支障が出ているかです。WHOも、ゲームをする人のうちゲーム障害にあたるのは「ごく一部」としています。
ただ、久里浜医療センターの令和6年度の調査では、10〜29歳で「ゲーム行動症の疑いあり」とされた人が10.3%いて、2018年度の5.1%から増えています(GAMES-Testによる判定)。別の判定基準(IGDT-10)では2.4%で、2018年度からの増加に統計的な差は確認されていません。測り方で数字が大きく変わる、ということも添えておきます。睡眠や食事、学校の課題に支障が続いているなら、eスポーツ部をすすめるより先に、地域の精神保健福祉センターなどの相談先を頼ることも考えてください。ここは、学校選びとは別に向き合うべきところです。
不登校の子に親ができることは、子ども側だった立場から不登校の子の進路、親にできることにまとめています。
店で働くN高生にも、ゲームのプロを目指す子がいる
私の店で働いているN高生の中にも、ゲームが好きでN高を選んだ子がいます。
その子がeスポーツ部に入っているのか、どんなゲームをしているのかまでは、私は聞いていません。ただ、「ゲームのプロになりたい」という気持ちを持ったまま、通信制という形で高校に通い、アルバイトもしている子がいる、ということは、ゲームが好きな子の親御さんに知っておいてもらいたいと思います。店のN高生たちの様子はN高生4人と働いてわかったことにも書いています。
eスポーツ部に入らなくても、ゲーム好きの居場所はある
部活は任意なので、eスポーツ部に入らない選択もできます。大会や交流会の時間に合わせるのは気が重い、という子もいると思います。
学校案内(2026年版・第4版)には、部活以外でゲーム好きの子がつながれる場所も載っています。普通科のVR空間の「ルーム」の例として「ゲーム好きのためのルーム。フレンド募集OK。ゲーム大会開催。」という紹介があり、キャンパスのフリースペースでは「放課後にゲームをしたり」と、生徒の過ごし方が書かれています(設備はキャンパスによって異なります)。
いきなり部に入らなくても、まずは同じゲームが好きな人がいる場所をのぞいてみる、という入り方もある、ということです。
入学前に確かめておきたいこと
eスポーツ部を目当てにN高を考えるなら、入学前に確かめておきたいことがあります。
eスポーツ部は入学後に参加を考えられる部活ですが、部活のために高校を選ぶなら、卒業までの3年間を通して見ることが大事です。卒業に必要なレポートやスクーリング、進路の話もあわせて確かめておくと、入学後のギャップが小さくなります。ネットコースの1日の流れはN高等学校のネットコースとは?に書いています。
N高そのものに不安がある場合は、N高等学校は「やめとけ」と言われるのはなぜ?で、よく挙がる不安と、逆に「いい」と言われる理由を整理しています。
学校案内にはeスポーツ部のページや、在校生・卒業生の声も載っています。私が取り寄せたときの中身はN高に資料請求してみたにまとめました。
まとめ
- N高のeスポーツ部は、N高・S高・R高の生徒がオンライン中心で活動する、最大級のネット部活。毎週の交流会と、3〜4か月ごとのリアル交流会(無料)がある
- 強化選手(2025年度は約200人)は、プロのコーチから無料で毎週指導を受けられ、大会の遠征費・直前合宿の費用は学校が負担する。選考の方法は公表されていない
- STAGE:0・NASEF選手権・U18ロケットリーグ選手権などで、毎年のように全国優勝している
- 部費・入部費、自宅のゲーム機・PCの費用は公式に記載なし
- プロになった人数は公表されておらず、入れば誰でもプロになれるわけではない。目指す環境は用意されている
- 「ゲームばかり」が心配なときは、時間の長さより、コントロールできているか・生活に支障が出ていないかを見る。支障が続くなら相談先へ