「N高を卒業して、ちゃんと就職できるんだろうか」

大学に行くつもりがない、あるいはまだ決めていない子の親御さんにとって、いちばん気になるのはここだと思います。ネット上には「通信制は就職に不利」という声もあれば、「関係ない」という声もあって、どちらを信じればいいのか分からなくなります。

この記事では、N高グループが公表している進路のデータと、国の調査・通知をもとに、N高から就職する人はどれくらいいて、どんな会社に入っているのかを整理しました。私は中学で不登校を経験し、N高ではない別の通信制高校から学校推薦で就職しました。いまは会社と店を経営していて、店ではN高生が4人働いています。雇う側として見えていることも書きます。

N高が「やめとけ」と言われる不安の全体像はN高が「やめとけ」と言われる6つの不安と、逆に「いい」と言われる理由にまとめていて、この記事はそのうち「進学や就職に不利?」の就職の部分を深掘りしたものです。

N高から就職する人は、どれくらいいる?

2026年3月に卒業したN高グループの生徒のうち、就職したのは11.22%でした。 公式サイトの「進路実績」ページに、卒業生全体の進路の内訳が円グラフで載っています。

進路(2026年3月卒業)割合
大学等進学43.24%
専門学校他23.14%
就職11.22%
アルバイト等8.66%
浪人7.09%
留学0.88%
進路未定5.52%
その他0.24%

(出典:N高グループ公式サイト「進路実績」の円グラフ。2026年5月19日時点、分母は2026年3月31日付で卒業した4月生11,476人。2026年10月9日確認)

分母の11,476人から計算すると、就職したのは約1,290人です(当サイトの計算。公式は人数を発表していません)。

就職する人の割合は、年によって変わる?

ここ6年は、8.98〜11.22%の間でほぼ横ばいです。 公式発表の数字を並べます。

卒業年就職アルバイト等大学等進学
2021年3月10.57%12.37%25.02%
2022年3月9.14%9.58%32.20%
2023年3月9.04%9.18%33.24%
2024年3月8.98%11.31%34.85%
2025年3月10.28%8.41%45.54%
2026年3月11.22%8.66%43.24%

(出典:学校法人角川ドワンゴ学園の各年の進路実績の発表。2021年は2021年4月2日の修正版。いずれも2026年10月9日確認)

大学等への進学は年々増えていますが、就職する人の割合はあまり変わっていません。ちなみに、2021年3月の最初の発表では就職が20.98%とされていましたが、アルバイト等を含んだ数字でした。報道機関からの指摘を受けて学園が同年4月に修正し、それ以降は文部科学省の区分に沿って、無期雇用や1年以上のフルタイム相当の雇用などを「就職」、それ以外を「アルバイト等」として分けて数えています。

通信制高校全体の数字と、「就職率」との違い

文部科学省の学校基本調査では、全国の通信制課程を令和6年度間に卒業した91,809人のうち、就職した人は12,989人・14.1%でした。ただし、こちらは2025年3月までの卒業生で、学校の報告をもとに全卒業生を数えた数字です。N高の11.22%は卒業生の申告をもとに4月生だけを数えたもので、分母も年も違うため、並べて高い・低いとは言えません(学園自身も、2021年の修正の際に「集計方法が異なるため他校データとの比較は行わない」としています)。

もうひとつ大事なのは、14.1%も11.22%も「卒業生全体に占める就職した人の割合」であって、「就職を希望した人のうち何%が就職できたか」という意味の就職率ではないことです。N高グループは、その意味での就職率や就職者数を公表していません。この数字の読み方は通信制高校から就職はできる?に詳しく書きました。

通信制卒の人は、どんな仕事に就いている?

文部科学省の学校基本調査には、通信制高校を卒業して就職した人の職業の内訳も載っています(令和6年度に卒業した人)。

職業人数
サービス職業3,902人
生産工程2,851人
販売1,350人
専門的・技術的職業931人
建設・採掘927人
事務797人
保安(自衛官・警察官など)642人

(出典:文部科学省「学校基本調査」令和7年度 職業別就職者数(通信制課程)。主な職業のみ。2026年10月9日確認)

いちばん多いのはサービスの仕事で、次が工場などの生産工程、販売と続きます。N高の就職実績に外食・小売・物流・自衛隊などの名前が並んでいるのも、この全体の傾向と重なっています。事務職は797人と少なめで、通信制を卒業して就職した人は、現場で働く仕事に就いている人が中心です。

どんな会社に就職している?

公式サイトの「就職実績」ページに、年ごとの主な就職先の社名が載っています。 2026年の一覧から、業種ごとに分けて一部を挙げます。

業種2026年の主な就職先(公式サイトより一部)
公務員国家公務員(一般職・事務)、東京地方検察庁、大阪市役所、新潟市役所、陸上自衛隊、海上自衛隊
外食・小売くら寿司、株式会社ロピア、コカ・コーラ ボトラーズジャパン
物流佐川急便、西濃運輸、サカイ引越センター
ホテル・レジャー阪急阪神ホテルズ、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル、ユー・エス・ジェイ
エンタメ・出版集英社、ソニー・ミュージックアーティスツ、ビクターエンタテインメント、スターダストプロモーション

(出典:N高グループ公式サイト「就職実績」 2026年10月9日確認。社名は公式サイトの表記に合わせています)

同じページには「その他」として、イラストレーター、棋士、アイドル、タレント、アーティスト、ダンサー、起業なども挙がっています。

目を引くのは、公務員が毎年入っていることです。2024年から2026年の一覧には、自衛隊のほか、市役所・都職員・警察・国の機関といった名前が毎年含まれています。通信制からでも、高卒で公務員を目指す道が閉じていないことは、この一覧からも分かります。公務員を目指す場合は、試験の時期や受験資格が役所ごとに違うので、志望する役所の採用案内を早めに確認しておいてください。

ただし、このページは社名の一覧で、業種ごとの人数や割合は載っていません。進路の実績は生徒・卒業生の申告に基づいて集計されている、とも公式に書かれています。有名な社名が並んでいても、「多くの人がこういう会社に入っている」という意味ではない点は、読むときに気をつけてください。

「N高だと就職に不利」は本当?

制度の上では、不利になる理由はありません。 通信制は、学校教育法では学校の種類ではなく、高等学校の中の「課程」のひとつです。全日制・定時制・通信制のどれを出ても、卒業すれば同じ「高等学校卒業」になります(学校教育法第4条・第54条)。

国も、企業の採用で通信制の卒業者を区別しないよう求めています。2026年2月25日付で、文部科学省と厚生労働省が各都道府県の教育委員会・知事に出した通知には、企業の採用活動について次のように書かれています。

新規中学校・高等学校等卒業者の採用に当たっては、本人の適性と能力に基づいた基準による公正な採用選考の確立を図るとともに、定時制課程及び通信制課程の卒業者と全日制課程の卒業者との間の差別的取扱いや同和問題等に係る差別的取扱いが行われないよう、(中略)採用活動が行われるようお願いします。

(文部科学省・厚生労働省「令和9年3月新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等並びに文書募集開始時期等について(通知)」 令和8年2月25日)

それでも「不利」と言われるのは、通信制という仕組みそのものより、就職の準備を自分で進めないといけない場面が多いからだと思います。毎日学校に通う全日制なら、先生が求人の案内をしてくれたり、周りが就職活動を始めたりして、自然と準備が進みます。通信制では、そのきっかけを自分から取りにいく必要があります。通信制高校全般の就職の流れは通信制高校から就職はできる?に、履歴書での扱いは通信制高校の学歴は不利になる?に詳しく書きました。

高卒で就職するときの仕組み

高校生の就職は、学校かハローワークを通じて求人に応募するのが基本です。 厚生労働省の求人・求職状況の調査も、「学校やハローワークからの職業紹介を希望した生徒」を対象にしています。応募できる社数のルール(一人一社制)や、学校斡旋・ハローワーク・それ以外の3つのルートは通信制高校から就職はできる?に書きました。

文部科学省の学校基本調査では、全国の通信制高校の卒業生で就職した12,989人のうち、約半数の6,285人が、ハローワークか学校を通じて就職していました(当サイトの計算で約48%)。

N高の公式サイトには、学校推薦の枠や、学校に届く求人票の件数についての記載は見当たりませんでした(2026年10月9日確認)。国の通知で求人を受理する「高等学校等」から通信制課程が除かれているわけではないので、「無い」という意味ではなく、公式資料では分からない部分です。「N高に求人票は来るのか」「学校推薦で就職できるのか」は、公式資料だけでは答えられない問いです。

学校によって、推薦の枠や求人の届き方は違います。高卒での就職を考えているなら、入学前の個別相談で「学校に求人は届くのか」「学校推薦はあるのか」を具体的に聞いておくのが確実です。

高卒就職のスケジュール(2027年3月卒の場合)

高校生の就職は、国が決めた日程に沿って進みます。2026年2月25日付の通知に書かれている、2027年3月に卒業する人の日程は次のとおりです。

時期何が起きるか
2026年6月1日〜企業がハローワークに求人を申し込み、求人票の確認を受け始める
2026年7月1日〜学校で求人の受け付け・提示が始まる(生徒が求人票を見られるようになる)
2026年9月5日〜学校から企業への推薦(応募書類の提出)が始まる(沖縄県は8月30日〜)
2026年9月16日〜企業の選考(面接など)と内定が始まる

(出典:文部科学省・厚生労働省「令和9年3月新規中学校・高等学校等卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等並びに文書募集開始時期等について(通知)」 令和8年2月25日。2026年10月9日確認)

つまり、3年生の夏休み前後に求人を見て、9月には応募、という流れです。通信制は自分のペースで学ぶぶん、この日程を知らないまま3年生の秋を迎えてしまう、ということが起こりやすい。高卒で就職したい場合は、2年生のうちに、この日程と学校の求人の扱いを確認しておくのがいちばん大事だと思います。

高卒就職のいまの状況

高卒の求人は多く、就職を希望した人のほとんどが就職できている状況です。 公的な最新の数字を並べます。

項目数字出典
高卒の求人倍率(2027年3月卒向け・2026年7月末)3.60倍厚生労働省
高卒の就職率(2026年3月卒・3月末)97.9%文部科学省(全日制・定時制。通信制は調査対象外)
高卒就職者の3年以内の離職率(2022年3月卒)37.9%厚生労働省

求人倍率3.60倍は、就職を希望する生徒1人に対して3.6人分の求人がある、という意味です。働き口そのものは、いまは不足していない、と読める数字です。

FP2級の目線で見ると、気をつけたいのは3つ目の数字です。高卒で就職した人の約4割が、3年以内に最初の会社を辞めています。就職できるかどうかより、自分に合う会社を選べるかどうかのほうが、その後に響きます。在学中にアルバイトやインターンで「働く」を経験しておくことは、会社選びの目を育てるうえで、大きな意味があると思います。

N高の就職サポート

N高の公式サイトには、1年次からの進路授業や面接練習など、就職に向けたサポートが載っています。

(出典:N高グループ公式サイト「進路サポート」、「就職実績」「よくある質問」。2026年10月9日確認)

公式サイトの就職実績のページには、ネットコースから就職した卒業生の声として、「特に就活の時は、面接の模擬練習、履歴書の確認をしていただいたことで自信を持って面接を受けることができました」という言葉も載っています。ネットコースでも、面接練習や書類の添削はオンラインで受けられる、ということです。

2026年7月の発表によると、2025年度は職業体験やワークショップ、トークセッションなどのキャリア関連の課外活動に、のべ17,239人の生徒が参加したそうです。課外授業で学べる内容や資格講座(ITパスポートなど)はN高の課外授業は何が学べる?にまとめています。

雇う側から見たN高生

ここからは、N高生を実際に雇っている立場からの話です。

もちろん、これは店のアルバイトという限られた場面の話で、すべての会社が同じように見るとは限りません。ただ、在学中に「働く」経験を積んでおくことは、就職のときに具体的に話せる材料になるのは確かです。店で働くN高生の様子はN高生4人と働いてわかったことに書いています。

就職か進学か、迷ったら

N高の卒業生の進路を見ると、就職だけでなく、専門学校(23.14%)やアルバイト等(8.66%)を選ぶ人も一定数います。 高校を出てすぐに正社員になる道だけが「就職」の正解ではありません。

在学中のアルバイトについても、私の場合はほぼフルタイムで働いていて、家に少しお金を入れていました。登校が少なくて社会から少し離れていても、アルバイトで社会勉強やコミュニケーションの練習ができたのは大きな経験でした。

迷っている場合は、「いまの時点で就職したい仕事があるか」で考えるのがおすすめです。やりたい仕事がはっきりしているなら、高卒就職の日程に合わせて準備する。まだ決まっていないなら、アルバイトやインターンで働く経験を積みながら、専門学校や進学も含めて選択肢を広げておく。どちらでも、在学中に「働く」に触れておくことは無駄になりません。

在学中にやっておくと、就職で効くこと

大学進学を考えている場合は、N高等学校の進学実績は?に数字の読み方をまとめました。卒業までの見通しはN高の卒業率の読み方も参考にしてください。

保護者がいまからできること

高卒就職は、学校と本人だけに任せず、保護者が日程とお金の段取りを一緒に持っておくと、ぐっと進めやすくなります。 FP2級として、また店で高校生を雇う立場として、家庭で押さえておきたいことを挙げます。

最後の1つは、私自身が最初の会社を数年で辞めた側だからこそ書いておきたいことです。最初の就職先がゴールではありません。働きながら自分に合うものを探していく、その途中で家族が味方でいてくれることのほうが、どの会社に入るかより大事だと思います。

まとめ

  • N高グループの2026年3月卒業生のうち、就職は11.22%(約1,290人・当サイトの計算)。ここ6年は約9〜11%
  • 就職先は公務員・外食・小売・物流・ホテル・エンタメなど幅広い。ただし公式は社名の一覧で、人数の内訳はない
  • 通信制は「高等学校」の課程のひとつで、卒業資格は全日制と同じ。国も採用で区別しないよう企業に求めている
  • 高卒の求人倍率は3.60倍。ただし3年以内の離職率は37.9%で、合う会社を選ぶことのほうが大事
  • N高の公式資料には、学校推薦・求人票の仕組みの記載が見当たらない(無いという意味ではない)。高卒就職を考えるなら、入学前の個別相談で確認を
  • 雇う側から見ても、学校名で印象は変わらない。N高生は仕事中心で主力になる子が多い

高卒での就職を考えている場合は、学校の資料と個別相談で、求人の届き方やサポートの中身を確かめておくのがいちばん確実です。資料請求で実際に何が届いたかの記録も参考にしてください。